1963年の音楽

1963年の音楽

1963年は、音楽史において重要な転換期であり、多様なジャンルで記憶に残る出来事が数多く起こりました。公民権運動の高まり、世界的ヒット曲の誕生、そして新たな才能の登場など、音楽が社会や文化に深く関わった一年でした。

出来事

公民権運動と音楽

1963年8月28日、ワシントンD.C.で行われたワシントン公民権大行進では、マヘリア・ジャクソン、ジョーン・バエズ、ボブ・ディランといったアーティストたちがパフォーマンスを披露し、音楽を通して人種差別の撤廃を訴えました。音楽が社会変革の力となることを示した象徴的な出来事です。

ビルボード年間チャート

1963年のビルボード年間チャートは、発表時期や集計方法の違いにより、複数のランキングが存在します。12月28日発表のリストでは、ザ・ビーチ・ボーイズの「サーフィン・U.S.A.」、スキーター・デイヴィスの「この世の果てまで」、カスケーズの「悲しき雨音」が上位を占めました。一方、後年修正されたリストでは、ジミー・ギルマー&ザ・ファイアボールの「シュガー・シャック」が1位となっています。いずれのリストも、当時の音楽シーンの多様性を示しています。

坂本九「上を向いて歩こう」の世界的ヒット

坂本九が1961年に発表した「上を向いて歩こう」は、1963年5月3日に「Sukiyaki」のタイトルでアメリカで発売され、同年6月15日から6月29日にかけて3週連続でビルボード・Hot 100の1位を獲得しました。これは、日本人として唯一の快挙であり、日本の音楽が世界に認められるきっかけとなりました。

第14回NHK紅白歌合戦

1963年12月31日に放送された第14回NHK紅白歌合戦では、弘田三枝子と田辺靖雄がトップ歌手を務め、美空ひばりと三波春夫がトリを飾りました。当時の人気歌手たちが集結し、一年を締めくくる華やかな舞台となりました。

洋楽アルバムの隆盛

1963年は、洋楽アルバム史においても重要な年でした。ビートルズは『プリーズ・プリーズ・ミー』『ウィズ・ザ・ビートルズ』を発表し、世界的な人気を獲得する足掛かりとしました。ボブ・ディランは『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』でフォークソングの新たな可能性を切り開き、ジェームス・ブラウンはライブ盤『プリズナー・オブ・ラブ』『ピュア・ダイナマイト』でファンクの基礎を築きました。その他、ジョン・コルトレーン、ハービー・マン、フィル・スペクター、トリニ・ロペスなど、多様なジャンルのアルバムが発表され、音楽シーンを彩りました。

新たな才能の登場

1963年には、数多くのアーティストがデビューを果たしました。舟木一夫、ローリング・ストーンズ、浅丘ルリ子、井沢八郎、三田明など、後の音楽シーンを担う才能が次々と登場しました。海外では、フランス・ギャルがデビューし、フレンチポップの代表的な歌手となりました。

物故者

1963年には、多くの音楽家が亡くなりました。ジャズピアニストのソニー・クラーク、作曲家のフランシス・プーランク、指揮者のフェレンツ・フリッチャイ、シャンソン歌手のエディット・ピアフ、作曲家のパウル・ヒンデミットなど、各ジャンルで多大な功績を残した音楽家たちがこの世を去りました。

1963年は、音楽が社会と深く結びつき、多様な才能が開花した一年でした。公民権運動における音楽の役割、坂本九の世界的ヒット、ビートルズの台頭など、音楽史に残る出来事が数多く起こり、後の音楽シーンに大きな影響を与えました。

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