1965年の日本公開映画

1965年（昭和40年）は、日本の映画館において多種多様な作品が公開された活気あふれる一年でした。この年に日本で商業公開されたのは、年間を通じて様々なジャンルや製作国の映画に及びます。

日本映画からは、黒澤明監督の重厚な人間ドラマ「赤ひげ」、内田吐夢監督による社会派の傑作「飢餓海峡」といった芸術性と話題性を兼ね備えた作品が登場しました。また、東宝の「太平洋奇跡の作戦 キスカ」、怪獣映画の金字塔となる「怪獣大戦争」、大映からは「大怪獣ガメラ」が公開され、特撮映画の盛り上がりを見せました。シリーズものも盛んで、「社長忍法帖」とその続編、「眠狂四郎」シリーズの「炎情剣」「魔性剣」、「兵隊やくざ」とその続編、「若親分」とその続編、「駅前」シリーズの「医院」「金融」「大学」、「座頭市」シリーズの「二段斬り」「逆手斬り」「地獄旅」、「男の紋章」シリーズ、「悪名」シリーズなど、人気シリーズの新作が立て続けに公開され、観客を惹きつけました。これらの邦画は、時代劇、任侠、青春、コメディ、アクションと幅広いジャンルを網羅していました。

一方、洋画では世界的なヒット作が多数上陸しました。アカデミー賞を席巻し、日本でもロングランとなったミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」は、多くの人々に感動を与えました。スパイアクションの代名詞となった「007」シリーズからは、「ゴールドフィンガー」と「サンダーボール作戦」の2本が公開され、その人気を不動のものとしました。コメディ大作「グレートレース」や、ファンタジーミュージカル「メリー・ポピンズ」もファミリー層を中心に支持を集めました。また、「ダンディー少佐」「シェナンドー河」「シンシナティ・キッド」といったアメリカ映画に加え、イタリアのフェデリコ・フェリーニ監督による実験的な傑作「8 1/2|8 1_2」、フランス・イタリア合作のサスペンス「頭上の脅威」、イギリスのロード・ジムなど、ヨーロッパ各国の個性的な作品も多数紹介されました。さらに、ソビエト連邦の戦争映画「鬼戦車T-34」やブラジルの「サンタ・バルバラの誓い」など、普段あまり馴染みのない国の作品も公開され、日本の観客は世界の多様な映画文化に触れる機会を得ました。製作国としては、日本、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、イタリアが多くを占めましたが、西ドイツ、ユーゴスラビア、スペイン、台湾、イギリス領香港、ソビエト連邦、ブラジルなど、国際色豊かな作品が公開されたことも特徴です。

公開時期を見ると、正月明けの1月、春休みの4月、夏休み期間の7月・8月、そして年末の12月に新作が集中する傾向が見られました。特に「まんが大行進」と題された短編アニメーションの詰め合わせ上映は、夏休みと年末年始に子供向けプログラムとして定番化していました。このように、1965年は邦画・洋画ともにバラエティ豊かな作品群が公開され、多くの人々にエンターテイメントを提供した、映画史において重要な一年と言えるでしょう。

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