1968年ベルギーグランプリ

1968年ベルギーグランプリ：マクラーレンの初勝利と空力デバイスの進化

1968年6月9日、ベルギーのスパ・フランコルシャンサーキット。F1世界選手権第4戦、1968年ベルギーグランプリが開催されました。このレースは、マクラーレンチームにとって歴史的な瞬間、そしてF1における空力デバイス開発の重要な転換点となりました。

空力デバイスの導入と開発競争

前戦モナコグランプリでは、ロータスが初めてフロントノーズにウイングを装着するという画期的な試みを行いました。このアイデアは、たちまち他のチームにも広がりを見せ始めました。フェラーリはエースドライバーのクリス・エイモンのマシンにリアウイングを装着。一方、チームメイトのジャッキー・イクスはウイングなしで参戦しました。ブラバムもリアウイングを採用し、フロントノーズにはダイブプレーンを取り付けることで、空力バランスの最適化を図りました。このベルギーグランプリで各チームが試行錯誤した空力デバイスの開発競争は、後のF1マシンの発展に大きな影響を与えました。次戦オランダグランプリでは、イクスのマシンにもウイングが装着されるようになり、空力デバイスはF1の標準装備へと進化していきました。

ドライバーたちの状況と予選

前戦モナコグランプリを欠場したフェラーリのエイモンとイクスが復帰。右腕を骨折したジャッキー・スチュワートもマトラから復帰しましたが、副え木を当ててのレースとなりました。クーパーチームには、新たにルシアン・ビアンキが加わりました。

予選では、ウイングを装着したエイモンがポールポジションを獲得。2番手にスチュワート、3番手にイクスと、フェラーリ勢が好位置を占めました。しかし、金曜日のマシントラブルと土曜日の悪天候により、ロータスのグラハム・ヒルとジャッキー・オリバーは後方からのスタートとなりました。予選日には、悲報も届きました。ルドビコ・スカルフィオッティがヒルクライムの事故で亡くなったという知らせです。この年は、すでにジム・クラークとマイク・スペンスを失っており、3人目のF1ドライバーの死は、関係者たちに大きな衝撃を与えました。

激動のレース展開とマクラーレンの初勝利

決勝レースは曇天の下、スタート。エイモンがトップに立ちますが、2周目にサーティースがトップに躍り出ます。しかし、レースはアクシデントとマシントラブルの連続でした。ヒル、アトウッド、ブラバム、リントといった強豪たちが次々と脱落。レッドマンはサスペンション破損によるアクシデントでリタイアを余儀なくされ、炎上するマシンから脱出しました。その後、エイモンもオイル漏れによりリタイア。サーティースもマシントラブルで脱落しました。

ハルムが一時トップに立ちますが、スチュワートと激しい首位争いを展開。しかし、スチュワートは燃料切れによりピットインを余儀なくされ、その隙を突いたマクラーレンのブルース・マクラーレンがトップに浮上。そのままチェッカーを受け、マクラーレンチームにとって初のF1グランプリ優勝を飾りました。マクラーレン自身にとっても、1962年モナコグランプリ以来の勝利で、通算4勝目となりました。2位はロドリゲス、3位はイクスという結果でした。

記録とその後

このレースでは、サーティースがファステストラップを記録。マクラーレンの勝利は、最高平均速度での勝利でもありました。ブラバムはF1参戦100回目を迎えました。また、このレースは、サーティースの10回目のファステストラップ、そしてマクラーレンチームにとって初の優勝という節目となる記録が達成されました。ブルース・マクラーレンは、このベルギーグランプリが最後の優勝となりました。

このレースは、空力デバイスの導入によるマシンの性能向上と、それに伴う激しいレース展開、そして悲劇と歓喜が入り混じったドラマチックなレースとしてF1の歴史に刻まれました。

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