1970年のテレビ (日本)

1970年（昭和45年）は、日本のテレビ放送が新たな段階へと進んだ画期的な年となりました。この年の最大の変化は、カラー放送の急速な普及です。特に民放キー局では、夜の主要時間帯であるゴールデンタイムの番組が相次いで全面カラー化されました。日本テレビが4月に先陣を切り、10月にはTBS、フジテレビ、NET（現テレビ朝日）も追随し、多くの全国ネット番組が色彩豊かな映像で届けられるようになりました。

カラー化はゴールデンタイムに留まらず、朝や昼の生ワイドショー番組でも毎週カラー放送が始まり、視聴者は毎日の情報やエンターテインメントをより鮮明な色彩で楽しめるようになりました。『奈良和モーニングショー』、『小川宏ショー』、『3時のあなた』などが毎週カラー放送を開始したほか、『八木治郎ショー』のような新番組も当初からカラーでした。さらに、夕方や正午帯の番組、既存の人気シリーズドラマやバラエティ番組も続々とカラー化され、年末の『ベルトクイズQ&Q』のカラー放送開始は正午帯番組のカラー化を一層促進しました。

都市部だけでなく、地方の放送局でもカラー化が進みました。NHKや民放のローカルニュースや番組がカラー放送を開始し、カラーカメラやカラー中継車が導入され始めたことで、全国ニュースにおける地方からのリポートもモノクロフィルムからカラーへと変わる割合が増えました。技術面では、NHKが感度が大幅に向上した超高感度カラーカメラを導入。また、一部地域では実験的な音声多重放送も行われました。

この年は、テレビ局の数自体も大きく増えました。特に4月1日にはUHF帯を利用した民放テレビ局が一度に8局開局し、これらはそれまで民放1局地域だった場所に開局したため、多くの地域で民放が2局視聴できるようになり、視聴者の選択肢が広がりました。10月には宮城テレビ、12月には広島ホームテレビも開局し、地方におけるテレビ環境の多様化が進みました。

ネットワーク化の動きも顕著でした。1月1日には、NETを中心とするニュースネットワーク「ANN（オールニッポン・ニュースネットワーク）」が結成され、NETの『NETニュース』は『ANNニュース』に名称が統一され、ネットワーク体制による報道が強化されました。加盟局は当初12局でしたが、UHF新局の開局に伴って増加しました。

番組編成においても様々な変化や新しい試みが見られました。フジテレビの『木曜スペシャル』のような単発特別番組枠が開始され、『新春スターかくし芸大会』などがカラー化・枠拡大されました。長寿番組となる『NNNドキュメント』や『遠くへ行きたい』、『NHKのど自慢』（改題）が放送を開始したのもこの年です。バラエティでは『ひるのプレゼント』、子供向けでは『できるかな』、『あしたのジョー』などがスタート。ドラマでは、NHK大河ドラマ『樅ノ木は残った』、連続テレビ小説『虹』のほか、TBSの『ありがとう』や『大岡越前』、NETの『遠山の金さん捕物帳』など、後にシリーズ化される人気作が誕生しました。東京12チャンネル（現テレビ東京）では、『ハレンチ学園』や長寿時代劇『大江戸捜査網』が始まりました。

社会的な出来事もテレビで大きく報じられました。3月の大阪万博開会式は民放全社による同時放送で熱気を伝え、4月のよど号ハイジャック事件や11月の三島由紀夫事件では、緊迫した状況が生中継で繰り返し伝えられ、テレビが果たす報道の役割が改めて示されました。

視聴率を見ると、NHK紅白歌合戦が77.0%という高い数字を記録し、国民的番組としての地位を確立しました。また、『8時だョ!全員集合』も高視聴率を維持し、エンターテインメントの中心となりました。ドラマでは『サインはV』や『時間ですよ』、報道ではNHKニュースが高視聴率を獲得しています。

1970年は、カラー化、UHF局の増加による多チャンネル化、そしてネットワーク化の進展という、日本のテレビ放送の基盤が大きく強化された一年でした。技術の進歩と多様な番組の登場が、テレビをより身近で魅力的なメディアへと変化させていったのです。

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