1970年のル・マン24時間レース

1970年のル・マン24時間レースは、フランスのサルト・サーキットを舞台に、6月13日から14日にかけて開催された、38回目の大会でした。このレースは、幾つかの重要な出来事によって記憶に残るものとなりました。

まず、前年まで圧倒的な強さを誇っていたフォードが、レース活動からの撤退を宣言しました。これにより、レースの勢力図は大きく変化することになります。

その隙を突くように、ポルシェが優勝を狙って参戦してきました。ポルシェワークスは前年惜しくも勝利を逃したポルシェ917を投入。そして、チーム運営には、元フォードの監督であるジョン・ワイヤーを招聘。レース運営の豊富な経験を持つワイヤーの参加は、ポルシェにとって大きな戦力となりました。さらに、ガルフオイルからの強力なスポンサーシップによって資金面も安定しており、優勝への準備は万端整っていたと言えるでしょう。

一方、日本のマツダは、10A型ロータリーエンジンを搭載した車両を参戦させました。これは、日本製エンジンがル・マン24時間レースに初参戦した歴史的な出来事でした。リーバイス・レーシングのシェブロンB16マツダ48号車がその栄誉を担いました。

イギリス勢では、ドナルド・ヒーリー・モーターカンパニーの34号車がV型8気筒エンジンを搭載して参戦しました。ロジャー・エネヴァー/アンドリュー・ヘッジズ組がステアリングを握りました。

決勝レースでは、1971年大会から導入されるローリングスタートに先立ち、このレースがル・マン式スタートの最後となりました。51台のマシンが激しく競い合いました。しかし、日本のマツダ勢シェブロンB16マツダ48号車は19周でリタイヤ、ドナルド・ヒーリー34号車も24時間目にエンジントラブルでレースを終えることとなりました。

レースの結果、完走したのはわずか7台でした。その中で栄冠を掴んだのは、ハンス・ヘルマン/リチャード・アトウッド組のポルシェ917、23号車でした。彼らは4,607.810kmを平均速度191.992km/hで走り抜き、ポルシェに初の総合優勝をもたらしました。2位と3位もポルシェ917とポルシェ908/2Lが占め、ポルシェの表彰台独占という圧勝劇となりました。

この1970年ル・マン24時間レースは、フォードの撤退、ポルシェの初優勝、そして日本車初参戦という、様々な要素が絡み合った、歴史的なレースとして記録されています。その結果やドラマは、現在でも多くのレースファンを魅了し続けています。

参考文献

『ルマン 伝統と日本チームの戦い』グランプリ出版 ISBN 4-87687-161-2
ドミニク・パスカル著、日沖宗弘訳『ル・マンの英国車』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-068-8
黒井尚志『ル・マン 偉大なる草レースの挑戦者たち』集英社 ISBN 4-08-780158-6
『われらがポルシェ ポルシェなんでも事典』講談社

もう一度検索