1971年のル・マン24時間レース

1971年ル・マン24時間レース：激闘と新時代の幕開け

1971年6月12日から13日にかけて、フランスのサルト・サーキットで開催されたル・マン24時間レースは、第39回大会という歴史的節目を迎えていました。このレースは、伝統と革新が交錯する、記憶に残る一戦となりました。

新たなスタート方式と激しい競争

これまでのル・マン24時間レースでは、ドライバーがコース脇から一斉にマシンに飛び乗り、スタートする「ル・マン式スタート」が採用されてきました。しかし、この方式は危険が伴うため、1971年大会では、より安全な「ローリングスタート」が初めて導入されました。ドライバーがシートベルトを装着せずにスタートしたり、後続車が早く発進して混乱を招いたりするなど、危険な状況が頻発していたことが、この変更の背景にあります。

49台のマシンがエントリーしたレースは、まさに壮絶な戦いの連続でした。ドライバーたちは、マシンと自身の限界に挑戦し続け、サルト・サーキットの過酷なコースを駆け抜けました。激しいデッドヒートが繰り広げられる中、多くのマシンがリタイヤを余儀なくされ、完走を果たしたのはわずか13台のみという結果に終わりました。

ポルシェ917Kの圧勝と新たな記録

この激戦を制したのは、ヘルムート・マルコとジィズ・ヴァン・レネップ組がドライブする22号車、ポルシェ917Kでした。彼らは24時間という長丁場を走り切り、驚異的な5,335.313kmという走行距離を記録。平均速度は222.304km/hに達し、総合優勝を飾りました。この走行距離は、2010年にアウディR15 TDIが更新するまで、長らく破られない記録として、ル・マンの歴史に刻まれました。

一方、GTクラスではレイモンド・トワルーとアンドレ・アンセルメ組が優勝を手にしました。彼らもまた、過酷なレースを戦い抜き、クラス優勝という栄誉を掴みました。

まとめ：伝統と革新の狭間

1971年のル・マン24時間レースは、伝統的なル・マン式スタートからローリングスタートへの移行という、大きな転換期となりました。安全性の向上を目的としたこの変更は、レースの歴史における重要な一歩と言えるでしょう。同時に、このレースは、ポルシェ917Kの圧倒的な強さ、そしてドライバーたちの驚異的な走りによって、伝説的なレースとして記憶されています。完走台数が少なかったことからも、その過酷さが伺えます。ヘルムート・マルコとジィズ・ヴァン・レネップ組の記録は、長年にわたり多くの挑戦者たちを魅了し続けました。このレースは、まさに伝統と革新が交錯した、忘れがたい一戦だったと言えるでしょう。

参考文献

『ルマン 伝統と日本チームの戦い』グランプリ出版 ISBN 4-87687-161-2
黒井尚志『ル・マン 偉大なる草レースの挑戦者たち』集英社 ISBN 4-08-780158-6
* ポール・フレール著、平井啓輔訳『ポルシェ911ストーリー』二玄社 ISBN 978-4544040234

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