1973年の日本公開映画

1973年の日本公開映画

1973年（昭和48年）は、日本の映画館において国内外から実に多種多様な作品が上映された一年でした。この年に商業公開された作品群は、当時の社会状況や観客の嗜好を反映しつつ、幅広いジャンルを網羅していました。

多様性に富んだ作品ラインナップ

年間を通して、邦画と洋画が多数公開されました。特に洋画はアメリカ合衆国製作のものが圧倒的に多かったものの、イタリア、フランス、イギリスといったヨーロッパ各国の作品や、さらには中国、韓国、イラン、タイなどアジア諸国との共同製作作品も見られるなど、その製作国は国際色豊かでした。

邦画の活況

この年の邦画界で特筆すべきは、深作欣二監督による大ヒットシリーズ「仁義なき戦い」が、第1作に続き「広島死闘篇」「代理戦争」と立て続けに3作品も公開されたことです。社会現象ともなったこのシリーズは、任侠映画に新たな潮流をもたらしました。また、山田洋次監督の国民的シリーズ「男はつらいよ」も、「寅次郎忘れな草」「私の寅さん」の2作品が公開され、変わらぬ人気ぶりを示しました。パニック映画の金字塔として話題を呼んだ森谷司郎監督の「日本沈没」もこの年の封切りです。

子供向け映画としては、春休みと夏休みに開催された東映と東宝の「まんがまつり」「チャンピオンまつり」が盛況でした。東映では「仮面ライダーV3」「マジンガーZ」「ロボット刑事」といった特撮・アニメ作品が、東宝では「ゴジラ対メガロ」「ウルトラマンタロウ」「科学忍者隊ガッチャマン」「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」などがラインナップされ、多くの家族連れが劇場を訪れました。その他にも、社会派ドラマ「戒厳令」、文芸作品「恍惚の人」、アクション「ボディガード牙」、時代劇「子連れ狼 冥府魔道」や「修羅雪姫」、青春ドラマ「飛び出せ!青春」、そして性のテーマに深く切り込んだ作品など、幅広い層に向けた多様な邦画が製作・公開されました。

話題を呼んだ洋画

洋画では、サメ映画の元祖ともいえるスティーヴン・スピルバーグ監督作「激突!」が年初に公開され話題となりました。続いて、大ヒットアクション「ゲッタウェイ」、パニック映画の先駆け「ポセイドン・アドベンチャー」、SFの傑作「ソイレント・グリーン」、ジェームズ・ボンドシリーズ最新作「007/死ぬのは奴らだ」、そして人気シリーズ完結編「最後の猿の惑星」などが次々と公開されました。ブルース・リー主演の伝説的カンフー映画「燃えよドラゴン」もこの年の公開で、一大ブームを巻き起こしました。また、アカデミー作品賞を受賞した「ジャッカルの日」のようなサスペンスや、フランク・キャプラの名作「街の灯」のリバイバル上映なども行われました。

ヨーロッパ映画では、イタリアのパゾリーニ監督作「カンタベリー物語」やベルトルッチ監督作「ラスト・タンゴ・イン・パリ」が注目を集めました。フランスのゴダール作品「水の中の小さな太陽」なども公開されています。これらの作品は、芸術性や社会性を追求したものが多く、洋画の多様性をさらに豊かなものにしていました。

活発な年間公開スケジュール

1973年は、年明けから年末まで途切れることなく新作映画が劇場に届けられました。毎月、時には毎週のように複数の作品が公開され、観客は常に新しい映画体験を得ることができました。特に正月やゴールデンウィーク、夏休みといった長期休暇のシーズンには、多くの期待作やイベント上映が集中し、映画館は賑わいを見せました。

このように、1973年は邦画、洋画ともに質の高い作品、話題作、そして多様なジャンルの作品が数多く公開され、日本の映画市場が活発であったことを示す一年でした。この年に公開された映画の数々は、その後の映画史にも大きな影響を与えています。

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