1975年のル・マン24時間レース

1975年のル・マン24時間レースは、フランスのサルト・サーキットで、6月14日から15日にかけて開催されました。このレースは、シリーズに参戦するトップチームが敬遠するほど厳しい燃費規制が導入されたことで知られています。

この規制により、多くの有力チームが欠場。特に、マトラの不参加は、レース全体の様相を大きく変えました。主役不在のレース展開となりました。

それでも、レースに参加したチームは、独自の戦略と技術で勝負を挑みました。有力チームとして注目を集めたのは、ガルフ・オイルのスポンサーシップを受けたジョン・ワイヤー率いるイギリスのミラージュチームです。彼らは、スポーツカーレース用に開発されたT280を持ち込みました。このマシンには、F1で活躍していたフォード・コスワース・DFVエンジンを搭載。F1マシンよりも低回転で使用するなど、燃費対策が施されていました。

他にローラやリジェといったチームも、F1用エンジンを低回転で使用するなど、燃費規制に対応したマシンで参戦しました。

日本のシグマ・オートモーティブ（現サード）も、このレースに3度目の挑戦を果たしました。彼らは新設計のシグマ・MC75を持ち込み、日本電装（現デンソー）とトヨタ・レーシング・ディベロップメント（TRD）の協力を得て、2T-G型エンジンにKKK製のターボチャージャーを搭載。360PSという、当時としては非常に高い出力を実現しました。このマシンは、空力性能を重視した設計が特徴で、高速走行に特化していました。

レースには55台のマシンが出走。予選では、シグマ・MC75は走行安定性の低さに苦戦し、基準タイムをクリアすることができませんでした。しかし、他のチームの棄権により、繰り上がりで決勝進出を果たしました。

決勝レースでは、高橋晴邦/鮒子田寛組がドライブするシグマ・MC75（18号車）は、序盤は10位前後を走行するなど健闘しました。しかし、レース開始からわずか2時間半後、バルブスプリングの破損によりエンジンに損傷が発生。加藤眞が2時間かけて修理を試みましたが、コース復帰後すぐに再発し、リタイアを余儀なくされました。

このレースでは、30台のマシンが完走を果たしました。優勝を手にしたのは、デレック・ベル/ジャッキー・イクス組のガルフ・ミラージュGR8でした。24時間で4,595.577kmを走行、平均速度191.482km/hという圧倒的な速さで、見事勝利を掴みました。一方、シグマは、このレースで当初予定していた資金を使い果たし、今後のレースへの参加を断念しました。

1975年のル・マン24時間レースは、燃費規制という新たな挑戦、そして各チームの技術力と戦略がぶつかり合った、記憶に残るレースとなりました。シグマの挑戦とガルフ・ミラージュの圧勝は、モータースポーツ史に刻まれた出来事です。

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