1980年の政治

1980年（昭和55年）は、国内外の政治において数多くの重要な出来事が起きた年でした。

年明けの1月には、国内で野党第一党である社会党と公明党が連立政権樹立に向けた構想で合意しましたが、これに対し日本共産党が社会党との関係解消を宣言するなど、野党間の連携には変化が見られました。国際情勢では、西ドイツで環境政党である緑の党が新たに創設され、ソ連では反体制派の物理学者アンドレイ・サハロフ博士がゴーリキーへ追放される出来事がありました。中東ではエジプトとイスラエルが国交を回復し、イランではイスラム革命後の初の大統領選挙が行われ、アボルハサン・バニーサドル氏が当選しました。また、日本からは高橋展子氏が初の女性大使としてデンマークに赴任するなど、新たな動きも見られました。

春にかけて、日本の政局は騒がしくなります。自民党内では反主流派が連携を強める動きを見せ、また浜田幸一衆議院議員によるカジノでのトラブルが表面化し、議員辞職へと追い込まれました。4月には、広島市が政令指定都市に移行したほか、衆議院に安全保障特別委員会が設置されるなど、国内の制度や機構にも変化がありました。この時期、国際的にはリベリアで軍事クーデターが発生し、ウィリアム・トルバート大統領が暗殺されるという衝撃的な事件が起こりました。また、中国が国際通貨基金（IMF）に加盟し、アフリカ南部のジンバブエがイギリスからの独立を果たしました。

5月に入ると、日本の政局は一気に緊迫します。5月16日の衆議院本会議で、社会党が提出した内閣不信任案が可決されました。これは、自民党内の反主流派議員が本会議を欠席したことによって成立した異例の事態でした。これを受け、大平正芳内閣総理大臣は衆議院を解散することを決定します。これが「ハプニング解散」と呼ばれるものです。この直後、韓国では非常戒厳令が全国に拡大され、多くの政治家や民主化運動家が拘束される事態となり、これに反発する形で光州事件が発生しました。この事件は5月末に韓国軍によって鎮圧されました。

6月は、日本の政治史に残る月となりました。衆議院解散後、参議院選挙の開始が迫る中、大平首相が体調を崩し入院。そして6月12日、選挙期間中に現職首相が急逝するという前代未聞の事態が発生しました。この後、予定通り衆参同時選挙が実施されました。現職首相の死という状況も影響し、この選挙では自由民主党が圧勝し、安定した多数派を確保しました。

選挙後の7月、自民党は後継総裁に鈴木善幸氏を選出しました。7月17日には鈴木善幸内閣が発足し、伊東正義氏が外相、渡辺美智雄氏が蔵相、中曽根康弘氏が行管庁長官などに就任しました。国際的には、南太平洋のバヌアツが独立を果たしています。

下半期には、国際情勢で特に重要な出来事が続きました。9月には、韓国で民主化運動指導者の金大中氏に死刑判決が下され、ポーランドでは自主管理労働組合「連帯」が結成され、東欧の社会主義体制に対する大きな波が生まれました。そして9月22日には、中東の主要国であるイランとイラクの間で戦争が勃発し、この地域に長期にわたる不安定をもたらしました。10月には西ドイツで連邦議会選挙が行われ、既存の連立与党が政権を維持しました。ソ連ではコスイギン首相が辞任しています。

年末に向けては、11月にアメリカ合衆国大統領選挙が実施され、共和党のロナルド・レーガン氏が圧勝し、その後のアメリカの政治路線に大きな影響を与えることになります。中華民国（台湾）でも立法委員の増額選挙が行われました。

このように1980年は、日本では首相の急死と衆参同時選挙という前例のない出来事を通じて政権交代があり、国際的には中東での大規模な戦争の開始や東欧での民主化運動の胎動、アメリカの政権交代など、世界各地で新たな時代の幕開けを予感させる激動の一年でした。

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