1982年の日本競馬

1982年（昭和57年）は、日本の競馬界において、国際的な交流促進と国内の体制強化が図られた重要な一年となりました。この年の出来事や競走結果、新たに生まれた名馬たち、そして競馬界を支える人々についてまとめます。（馬齢表記は当時の旧表記に基づきます。）

主な出来事

年の初めから、国際会議への積極的な参加が見られました。1月にはタイ・バンコクで開催された第16回アジア競馬会議に日本中央競馬会（JRA）の関係者が出席。3月にはオーストラリア・キャンベラでのTBA総支配人会議にも代表が送られました。秋にはパリ国際競馬会議にも出席するなど、海外の競馬組織との連携を深める動きが活発でした。

国内では、人材育成と施設の拡充が進められました。3月にはJRAの馬事公苑白井分苑が「競馬学校」として再編成され、厩舎関係者の一元的教育機関としての役割を担うことになりました。3月23日には開校式が行われ、4月から第1期生の養成が開始されました。地方競馬においても、6月1日に地方競馬全国協会が騎手教養所を「地方競馬教養センター」と改称し、新たに地方競馬研修館を設置するなど、教育・研修体制の強化が進められました。

施設の面では、場外発売所の拡充も進みました。5月には梅田場外発売所に分館が開設され、さらに秋には電話投票所の新設が相次ぎました。10月9日に浅草、11月6日に京都、12月4日に千葉でそれぞれ電話投票所が開設され、自宅などから投票できる環境が整備されました。

また、ファンサービスにも新たな試みが見られました。5月23日の優駿牝馬（オークス）開催当日に「レディースデー」が初めて実施され、女性ファン向けのイベントが行われました。この取り組みは好評を博し、以後、年間を通して開催されるようになり、特に11月21日のエリザベス女王杯当日もレディースデーとして設定されました。

競馬開催に関連する出来事としては、4月17日に厩務員組合のストライキが発生し、中山競馬の一部の競走において担当馬が除外される影響が出ました。また、皐月賞の前日発売が中止される事態も発生しました。

その他の特筆すべき出来事として、JRA競走馬総合研究所栃木支所がゲタウイルス感染症の研究で日本獣医学会賞を受賞したこと（4月）、地方所属馬として初めてアズマキングが総賞金2億円を獲得したこと（6月）、地方競馬全国協会が創立20周年を迎えたこと（8月）、厩舎関係者や職員の欧米研修派遣（9月）などがありました。また、11月には中央競馬の小川佐助調教師が黄綬褒章を受章するなど、競馬界への貢献が社会的に評価される一幕もありました。

主な競走結果

1982年の中央競馬では、数々のドラマが生まれました。クラシック戦線では、桜花賞をリーゼングロスが、皐月賞をアズマハンターが制しました。牝馬三冠の第2戦、優駿牝馬（オークス）はシャダイアイバーが優勝。そして日本ダービーは、バンブーアトラスが栄光を掴みました。

古馬の主要レースでは、長距離戦の天皇賞（春）をモンテプリンスが、秋の天皇賞（秋）をメジロティターンが勝利しました。春のグランプリ、宝塚記念もモンテプリンスが制し、同馬の充実ぶりを示す結果となりました。

秋の三冠最終戦、菊花賞はホリスキーが勝利。牝馬限定のエリザベス女王杯はビクトリアクラウンが優勝しました。

国際競走であるジャパンカップは第2回を迎え、アメリカからの参戦馬ハーフアイストが優勝し、世界の強豪を相手に日本のレベルアップが試される舞台となりました。

年末の総決算である有馬記念は、ヒカリデュールが制し、この年の年度代表馬に選ばれました。

障害レースでは、キングスポイントが中山大障害の春秋を連覇するという偉業を達成しました。

1982年中央競馬主要GI/JpnI競走優勝馬

桜花賞: リーゼングロス
皐月賞: アズマハンター
天皇賞（春）: モンテプリンス
優駿牝馬（オークス）: シャダイアイバー
日本ダービー: バンブーアトラス
宝塚記念: モンテプリンス
天皇賞（秋）: メジロティターン
菊花賞: ホリスキー
エリザベス女王杯: ビクトリアクラウン
ジャパンカップ: ハーフアイスト
有馬記念: ヒカリデュール
中山大障害（春/秋）: キングスポイント

年度代表馬・表彰馬

その年の競馬界で最も輝いた功績に対し、優駿賞が贈られました。1982年の年度代表馬には、有馬記念を制したヒカリデュールが選出されました。その他、各部門の受賞馬は以下の通りです。

年度代表馬・最優秀5歳以上牡馬: ヒカリデュール
最優秀3歳牡馬: ダイゼンキング
最優秀3歳牝馬: ダイナカール
最優秀4歳牡馬: バンブーアトラス
最優秀4歳牝馬: ビクトリアクラウン
最優秀5歳以上牝馬: スイートネイティブ
最優秀父内国産馬: メジロティターン
最優秀障害馬: キングスポイント
最優秀アラブ: ハイロータリー
ドリーム賞: モンテプリンス

最優秀スプリンターについては、この年は該当馬なしとされました。

誕生した競走馬・人物

1982年には、後の競馬史に名を刻むことになる多くの競走馬が誕生しました。この世代は、1985年のクラシック戦線を賑わせることになります。サクラユタカオー、ミホシンザン、シリウスシンボリ、エルプス、ダイナカールなど、数々の名馬がこの年に生を受けています。

また、未来の競馬界を支える騎手や調教師となる多くの人々も誕生しました。

死去した競走馬

年末には、かつて活躍したチャイナロックがこの世を去りました。

1982年は、国内外での活動強化、教育・施設面の拡充、電話投票の普及など、日本の競馬がさらなる発展を目指すための基盤が整備された一年であり、同時に多くの名勝負や新しいスターホース、そして未来を担う人材が生まれた記憶に残る年となりました。

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