1983年の航空
1983年は、世界の航空業界にとって、技術的な進歩と同時に、悲劇的な出来事も経験した記憶に残る一年となりました。新型航空機の開発や就航が進み、飛行記録が更新される一方で、複数の重大事故が発生し、空の安全について改めて考えさせられる出来事がありました。
年の初め、1月には米国のイースタン航空が新型ジェット旅客機、ボーイング757の商業運航を開始し、民間航空の新しい幕開けを告げました。同月にはスウェーデンのサーブ社が開発した地域向け双発ターボプロップ機、サーブ340の原型機が初飛行に成功しています。さらに、新しい格安航空会社としてサン・カントリー航空が米国で運航を始めています。2月に入ると、長年にわたり世界の空を飛び続けたボーイング727型機の生産が終了するという、一つの時代の終わりを告げるニュースがありました。また、ブリティッシュ・エアウェイズもボーイング757の運航を開始し、この新型機が広く普及し始めたことを示しています。
記録への挑戦も活発に行われました。3月には、ボーイング767型機がポルトガルのリスボンから米国のワシントン州まで8,798kmという長距離無着陸飛行を達成し、双発ジェット旅客機の新たな記録を樹立しました。5月にはビジネスジェット分野で、リアジェット55がロサンゼルスとパリの間を飛行し、速度（722km/h）と距離（9,101km）の両方でビジネスジェットの新たな記録を打ち立てました。また、カナダのボンバルディア社が製造するビジネスジェット、チャレンジャー601も8月にはカナダのカルガリーからロンドンまで6,982kmの長距離飛行に成功しています。
航空会社の機材戦略も動きました。6月にはシンガポール航空がアジアの航空会社として初めてボーイング757型機を6機購入することを発表し、フリートの近代化を進める姿勢を示しました。10月には米国の二大航空会社、パンアメリカン航空とアメリカン航空が、旅客機を交換するという珍しい合意を発表しました。パンナムが保有するマクドネル・ダグラスDC-10と、アメリカン航空のボーイング747型機8機が引き換えられることになったのです。また、ボーイング社にとって節目の年でもあり、12月には通算1000機目のボーイング737型機がデルタ航空に引き渡されています。
技術開発の分野では、日本の防衛庁技術研究本部が、運動能力向上機（CCV）研究のために改造したT-2航空機が8月に初飛行を行いました。米国の航空機メーカーであるジェネラル・ダイナミクス社は、ベストセラー戦闘機であるF-16ファイティングファルコンの製造が軌道に乗り、7月には1000機目の機体を完成させています。
個人的な偉業としては、7月22日にオーストラリアのディック・スミス氏がヘリコプターによる単独での世界一周飛行を初めて達成しました。ベル ジェットレンジャーIIIを使用して56,742kmを飛び、航空史に新たな記録を刻みました。また、10月にはパンアメリカン航空のボーイング707型機の就航25周年を記念する特別飛行が行われ、ジェット時代の幕開けを象徴する機体への敬意が示されました。国際協力による機体開発も進み、11月にはスペインのCASAとインドネシアのIPTNが共同開発した中距離ターボプロップ機、CASA CN-235が初飛行しています。
一方で、空の安全を脅かす出来事も複数発生しました。6月には、エア・カナダのDC-9型機で機内火災が発生し、緊急着陸後に炎上。この事故で23名の尊い命が失われています。7月にも、ギニアに向かっていた北朝鮮のIl-62M型機がギニアビサウの山中に墜落し、23名が犠牲となりました。特に衝撃が大きかったのは、9月に発生した大韓航空機撃墜事件です。ボーイング747型機が航法上の誤りからソビエト連邦領空に迷い込み、ソ連防空軍の戦闘機に撃ち落とされました。これにより、乗員・乗客合わせて269名全員が犠牲となるという、国際的にも大きな影響を与えた悲劇となりました。
しかし、困難な状況下でのパイロットの卓越した技量を示す出来事もありました。7月には、エア・カナダのボーイング767型機が飛行中に燃料切れに陥るという絶体絶命の事態に直面しましたが、パイロットは冷静に滑空操縦を行い、カナダのマニトバ州にある旧空軍基地跡地への緊急着陸を成功させました。通称「ギムリー・グライダー」として知られるこの事例は、航空史における奇跡的な生還劇として語り継がれています。
航空界の功績を称える賞も授与されました。著名なハーモン・トロフィーは、この年宇宙飛行士となったサリー・ライド氏に贈られ、デラボー賞はジョン・ヤング氏が受賞しました。また、FAI・ゴールド・エア・メダルはチェコのアエロバチックパイロット、ヤン・ミクラ氏に贈られています。
1983年は、航空技術の発展が着実に進む一方で、人為的ミスや国際情勢が原因となる重大事故が多発し、空の旅の安全とそれに伴うリスクが同時に浮き彫りになった、複雑な様相を呈した一年であったと言えるでしょう。
年の初め、1月には米国のイースタン航空が新型ジェット旅客機、ボーイング757の商業運航を開始し、民間航空の新しい幕開けを告げました。同月にはスウェーデンのサーブ社が開発した地域向け双発ターボプロップ機、サーブ340の原型機が初飛行に成功しています。さらに、新しい格安航空会社としてサン・カントリー航空が米国で運航を始めています。2月に入ると、長年にわたり世界の空を飛び続けたボーイング727型機の生産が終了するという、一つの時代の終わりを告げるニュースがありました。また、ブリティッシュ・エアウェイズもボーイング757の運航を開始し、この新型機が広く普及し始めたことを示しています。
記録への挑戦も活発に行われました。3月には、ボーイング767型機がポルトガルのリスボンから米国のワシントン州まで8,798kmという長距離無着陸飛行を達成し、双発ジェット旅客機の新たな記録を樹立しました。5月にはビジネスジェット分野で、リアジェット55がロサンゼルスとパリの間を飛行し、速度（722km/h）と距離（9,101km）の両方でビジネスジェットの新たな記録を打ち立てました。また、カナダのボンバルディア社が製造するビジネスジェット、チャレンジャー601も8月にはカナダのカルガリーからロンドンまで6,982kmの長距離飛行に成功しています。
航空会社の機材戦略も動きました。6月にはシンガポール航空がアジアの航空会社として初めてボーイング757型機を6機購入することを発表し、フリートの近代化を進める姿勢を示しました。10月には米国の二大航空会社、パンアメリカン航空とアメリカン航空が、旅客機を交換するという珍しい合意を発表しました。パンナムが保有するマクドネル・ダグラスDC-10と、アメリカン航空のボーイング747型機8機が引き換えられることになったのです。また、ボーイング社にとって節目の年でもあり、12月には通算1000機目のボーイング737型機がデルタ航空に引き渡されています。
技術開発の分野では、日本の防衛庁技術研究本部が、運動能力向上機（CCV）研究のために改造したT-2航空機が8月に初飛行を行いました。米国の航空機メーカーであるジェネラル・ダイナミクス社は、ベストセラー戦闘機であるF-16ファイティングファルコンの製造が軌道に乗り、7月には1000機目の機体を完成させています。
個人的な偉業としては、7月22日にオーストラリアのディック・スミス氏がヘリコプターによる単独での世界一周飛行を初めて達成しました。ベル ジェットレンジャーIIIを使用して56,742kmを飛び、航空史に新たな記録を刻みました。また、10月にはパンアメリカン航空のボーイング707型機の就航25周年を記念する特別飛行が行われ、ジェット時代の幕開けを象徴する機体への敬意が示されました。国際協力による機体開発も進み、11月にはスペインのCASAとインドネシアのIPTNが共同開発した中距離ターボプロップ機、CASA CN-235が初飛行しています。
一方で、空の安全を脅かす出来事も複数発生しました。6月には、エア・カナダのDC-9型機で機内火災が発生し、緊急着陸後に炎上。この事故で23名の尊い命が失われています。7月にも、ギニアに向かっていた北朝鮮のIl-62M型機がギニアビサウの山中に墜落し、23名が犠牲となりました。特に衝撃が大きかったのは、9月に発生した大韓航空機撃墜事件です。ボーイング747型機が航法上の誤りからソビエト連邦領空に迷い込み、ソ連防空軍の戦闘機に撃ち落とされました。これにより、乗員・乗客合わせて269名全員が犠牲となるという、国際的にも大きな影響を与えた悲劇となりました。
しかし、困難な状況下でのパイロットの卓越した技量を示す出来事もありました。7月には、エア・カナダのボーイング767型機が飛行中に燃料切れに陥るという絶体絶命の事態に直面しましたが、パイロットは冷静に滑空操縦を行い、カナダのマニトバ州にある旧空軍基地跡地への緊急着陸を成功させました。通称「ギムリー・グライダー」として知られるこの事例は、航空史における奇跡的な生還劇として語り継がれています。
航空界の功績を称える賞も授与されました。著名なハーモン・トロフィーは、この年宇宙飛行士となったサリー・ライド氏に贈られ、デラボー賞はジョン・ヤング氏が受賞しました。また、FAI・ゴールド・エア・メダルはチェコのアエロバチックパイロット、ヤン・ミクラ氏に贈られています。
1983年は、航空技術の発展が着実に進む一方で、人為的ミスや国際情勢が原因となる重大事故が多発し、空の旅の安全とそれに伴うリスクが同時に浮き彫りになった、複雑な様相を呈した一年であったと言えるでしょう。
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