リアジェット

リアジェット：ビジネスジェットの先駆者

リアジェット（Learjet）は、アメリカのビジネスジェット機メーカーであり、同社が製造するビジネスジェットのブランド名でもあります。かつては民間航空機メーカーとして世界第3位の規模を誇り、ビジネスジェットというカテゴリーの先駆けとして知られています。そのブランド名は、ビジネスジェット機の代名詞として用いられることもあります。

歴史

リアジェットの歴史は、発明家であり起業家でもあったウィリアム・パウエル・リア・ジュニア（ビル・リア）が、1960年にスイス・アメリカン・アビエーション社を設立したことに始まります。リアは、カーラジオの普及や8トラックカートリッジの開発などを手がけ、莫大な財産を築いていました。

次にリアが目をつけたのは、自家用ジェット市場でした。当時のビジネスマンが、より迅速に移動できれば、その日のうちに仕事を終えて家族と夕食を共にできる。そう考えたリアは、夢の飛行機のモデルとして、スイスのFFA P-16という戦闘機に着目しました。その主翼の性能に感銘を受けたリアは、その設計を利用する権利を取得し、ビジネスジェット機「SAAC-23」の開発に着手しました。

1962年には、アメリカのカンザス州ウィチタに工場を設立。1963年には社名をリア・ジェット・コーポレーションに変更し、SAAC-23の初飛行を成功させました。そして1964年、リアジェット23として販売を開始し、リアの夢は現実のものとなりました。

その後も、モデル24、モデル25と高速ビジネスジェットの開発が進められました。これらの初期モデルは、ジェネラル・エレクトリックCJ610ターボジェットエンジンを搭載し、ジェット旅客機に匹敵する巡航性能と強力な上昇力を誇りました。また、大型のウイングチップ燃料タンクや、特徴的な強く傾斜したウィンドシールドも、この時期のリアジェットの特徴です。リアは、法人需要に加え、映画俳優などのセレブリティ層をターゲットとし、そのシャープな機体形状は、富裕層の個人所有のニーズと合致し、プライベートジェットを所有することが富の象徴ともなりました。

1967年、ウィリアム・リアは経営から離れ、1969年にはゲイツ・アビエーションと合併し、ゲイツ・リアジェット・コーポレーションとなりました。その後も、リアジェット26、リアジェット35と後継機が開発され、好調なセールスを記録しました。

1990年には、カナダのボンバルディア・エアロスペース社に買収され、現在はボンバルディア・リアジェットとして、モデル40XRやモデル60などを生産しています。

製品の特徴

リアジェットの製品は、6〜10人乗りで、アメリカ本土やヨーロッパ諸国での地域間移動に適したビジネスジェットに焦点を当てています。社用機やプライベート機としての需要が多い一方で、小型輸送機や連絡機として軍にも納入されています。

リアジェット社では、航空機の製造のほぼすべての工程を自社工場内で行っています。アルミ合金板の加工から、コンポーネントの製造、ハーネスの組み立て、機体の組み立て、テスト飛行、そして外部塗装や内装に至るまで、一貫したプロセスで製造を行うことは、航空機製造の世界では珍しく、品質の安定に大きく貢献しています。

50年以上にわたる製造の歴史から、リアジェットの機体は中古市場でも多く流通しています。特に、初期のCJ610エンジン搭載機は、降着装置や主翼が頑丈で、就役から40年前後経過しても機体寿命を残しているものが多いです。旧型の機体は、現代の航空法に適合させるため、エンジンやアビオニクスのアップグレードが行われることが一般的です。

近年の動向

2007年からのリーマンショックでは、航空機業界全体が大きな影響を受けましたが、リアジェット社はこれを機に、工程管理のコンピュータ化や工場環境の改善を実施しました。これにより、作業効率と生産性を大幅に向上させています。

現在では、シリーズの整理が進み、リアジェットブランドではリアジェット70/75のみが生産されています。製造中の機体の見学ツアーや引き渡し時のセレモニーを実施するなど、顧客との関係を大切にする姿勢を貫いています。

主な製品一覧

以下に、リアジェットの主なモデルをまとめます。

標準断面の胴体モデル
リアジェット23：1964年～。8人乗り。ビジネスジェットの草分け。
リアジェット24：1967年～。リアジェット23の派生モデル。
リアジェット25：1966年～。リアジェット24の胴体伸延モデル。
リアジェット35：1974年～。アメリカ軍にも採用されたモデル。
リアジェット36：1974年～。長距離航行モデル。
リアジェット28/29：1979年～。ウィングレットを実用化したモデル。
リアジェット31：1988年～。リアジェット35の胴体に28の主翼を組み合わせたモデル。
リアジェット45：1997年～。ほぼ完全な新設計。
リアジェット40：2003年～。リアジェット45の胴体を短縮したモデル。
リアジェット70/75：現行モデル。40/45の改良モデル。
広胴モデル
リアジェット55：1981年～。商用ジェット機による上昇率記録を樹立。
リアジェット60：1993年～。リアジェット55をベースにしたモデル。
* リアジェット85：開発中。ETOPS取得可能な初のビジネスジェットとなる予定でしたが、現状は開発状況不明。

まとめ

リアジェットは、ビジネスジェットのパイオニアとして、その歴史と革新的な技術で航空業界に大きな影響を与えてきました。今後も、そのブランド力と技術力を活かし、ビジネスジェット市場をリードしていくことが期待されます。

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