1986年の鉄道

1986年（昭和61年）の日本の鉄道は、翌年に控えた日本国有鉄道（国鉄）の分割民営化を目前に控え、激動の様相を呈しました。この年は、多くの地方交通線がその歴史に幕を下ろし、第三セクター鉄道として新たなスタートを切った一方で、都市部や幹線では近代化に向けた取り組みが進められました。

路線の開業・延伸・電化

都市部では、京葉線の西船橋〜千葉貨物ターミナル間が開業し、西船橋〜千葉港間で旅客営業が開始されました。福岡市交通局の地下鉄2号線も延伸を遂げています。地方では、予讃本線に内子方面への新線が開業したほか、長田〜生駒間の東大阪線（現在の近鉄けいはんな線）が新たに誕生。野岩鉄道会津鬼怒川線も新藤原〜会津高原間が開通し、会津鉄道会津線との連絡によって首都圏と会津地方を結ぶルートが形成されました。国鉄では、福知山線が宝塚から福知山まで電化され、動力近代化が進みました。

路線の廃止と第三セクターへの転換

この年の最も顕著な動きの一つが、多くの国鉄地方交通線が廃止され、第三セクター方式による新会社へ経営が引き継がれたことです。4月1日には、漆生線が廃止されたほか、甘木線が甘木鉄道へ、高森線が南阿蘇鉄道へ転換されました。7月には丸森線が阿武隈急行に、11月には阿仁合線・角館線が秋田内陸縦貫鉄道に、12月には越美南線が長良川鉄道にそれぞれ生まれ変わりました。これらの転換は、地域における鉄道網維持の新たな模索を示すものでした。また、胆振線、東海道本線の貨物支線（山下埠頭線、神戸臨港線支線）、信越本線や北陸本線の貨物支線、播但線の飾磨港方面など、多くの貨物線やローカル線が廃止されています。多数の駅もこれに伴い姿を消しました。

新駅の開業と駅名改称

利便性向上や沿線開発に伴い、各地で新駅が開業しました。京葉線や東大阪線など新線開業区間に加え、東海道本線に西大井駅や六合駅、西岐阜駅、上道駅などが新設されました。福知山線には西宮名塩駅や新三田駅が開業しています。札沼線などでは臨時乗降場も複数開設されました。一方、駅名改称も行われ、会津滝ノ原駅が会津高原駅に、浅虫駅が浅虫温泉駅になるなど、地域の観光や実情に合わせた名称変更が見られました。

車両の動向と受賞

国鉄では、分割民営化後を見据えた新型車両が登場しました。近郊形交流直流両用電車である413系・717系、分割民営化後の標準型となるキハ31形・キハ54形・キハ38形気動車などが製造されています。私鉄でも東急9000系、名鉄5700系・5300系、山陽電鉄5000系などの新型車両が登場しました。一方で、国鉄のタキ21000形・タキ42100形貨車、京急400形・500形・600形（2代）電車などが姿を消しています。この年の鉄道友の会ブルーリボン賞は伊豆急行2100系電車が、ローレル賞は国鉄100系新幹線電車と南海電気鉄道10000系電車が受賞しています。

事故と法制度

この年にはいくつかの鉄道事故も発生しました。3月には東急東横線横浜駅と西武新宿線田無駅で列車脱線・衝突事故が発生。年末の12月28日には、山陰本線の余部鉄橋で列車が転落する痛ましい事故が発生しました。法制度においては、12月4日に国鉄分割民営化の根幹となる鉄道事業法やJR会社法が公布・施行され、国鉄再建法は廃止となりました。また、7月には東京都江戸川区に地下鉄博物館が開館し、鉄道文化の普及にも貢献しました。

このように、1986年は来るべきJR体制への移行期として、路線の整理統合や近代化、法整備が進められた、日本の鉄道史において大きな転換点となった一年でした。

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