1987年のラジオ (日本)

1987年の日本のラジオシーンは、技術革新と新たな放送局の誕生によって活気にあふれた一年となりました。特に注目されるのは、ラジオ放送におけるデジタル技術の導入です。年明け早々の1月1日には、NHK-FMが毎年恒例の『ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート』を、PCMデジタルステレオ音声回線を利用した衛星による生放送で届けました。この年の指揮をクラシック界の巨匠、ヘルベルト・フォン・カラヤンが初めて担当したこともあり、高音質での放送はリスナーにとって大きな話題となりました。これは、ラジオが音質面で新たな可能性を追求し始めた象徴的な出来事と言えるでしょう。

また、放送ネットワークの拡大も1987年の重要な動きです。新たに二つのFM放送局が開局しました。4月1日には青森県をエリアとするエフエム青森が、そして10月1日には新潟県をエリアとするエフエムラジオ新潟がそれぞれ放送を開始しました。これにより、これらの地域におけるFMラジオのサービスが拡充され、より多くの人々が多様な音声コンテンツに触れる機会が増えました。地方におけるラジオ放送の充実は、その後の地域情報発信や文化振興においても重要な意味を持つことになります。

番組編成においても、1987年は多数の新番組が誕生し、リスナーに新鮮な聴取体験を提供しました。年の初めから年末にかけて、全国の主要ラジオ局で様々なジャンルの番組がスタートしました。例えば、横浜エフエム放送では早くも1月に音楽番組『ロック・オブ・ザ・ワールド』が始まり、ニッポン放送の深夜帯には2月にタレントの久本雅美が登場する『オールナイトニッポン』がスタートするなど、早い時期から動きが見られました。

特に、春の改編期である4月には、各局で大型の番組が数多く開始されました。NHKでは、ラジオ第1放送で『おはようラジオセンター きょうも元気で』や『歌の日曜散歩』といった生活情報や音楽番組が加わり、ラジオ第2放送では語学番組『やさしいビジネス英会話』がスタートするなど、リスナーの幅広いニーズに応えるラインナップが展開されました。NHK-FMでも、『あさの音楽散歩』や『ジョイフルポップ』など、様々な音楽番組が登場しました。

民放AM局でも、個性豊かなパーソナリティを起用した番組が目白押しでした。TBSラジオの深夜枠「スーパーギャング」には杏子、笑福亭鶴瓶、石坂啓といった面々が登場し、文化放送では朝のワイド番組『小倉智昭の時計の針はいま何時』や、その後長寿番組となる『吉田照美のやる気MANMAN!』が始まりました。ニッポン放送では、昼の顔として『圓蔵のお昼だヨイショ!』や『鶴光の噂のゴールデンアワー』が、深夜帯には『デーモン小暮のオールナイトニッポン』などがスタートしました。アイドルや俳優がパーソナリティを務める番組も多く、富田靖子、真璃子、仲村トオル、荻野目洋子、渡辺美里、渡辺美奈代といった当時の人気タレントが続々とマイクの前に立ちました。

秋の改編期である10月にも、新たな動きが多数見られました。ニッポン放送では、政治や社会問題を扱う『ニュースワイド 欽ちゃんのもっぱらの評判』、新たなスタイルの深夜番組『辻仁成のオールナイトニッポン』や『鴻上尚史のオールナイトニッポン』、そして昼のワイド番組『巨匠・高田文夫のラジオで行こう!』などが始まり、番組ラインナップが一層充実しました。関西のKBS京都では『早川一光のばんざい人間』、朝日放送では『毎度おおきに!べかこらんど』、毎日放送では『今夜もよろしく』、ラジオ大阪では『ラジオ2丁目劇場』など、地域色豊かな番組も多数開始されました。エフエム東京では『MISATO LAND - 風になれたら』、エフエムラジオ新潟では開局に合わせて『SOUND SPLASH』がスタートするなど、FM局でも様々な試みが行われました。

一方で、長年親しまれた番組がその歴史に幕を下ろす場面もありました。ニッポン放送の『不二家歌謡ベストテン』が9月に、また同じくニッポン放送の『リクエスト合戦』やラジオ大阪の『みんなでみんなでリクエスト バンザイ!歌謡曲』などが10月に終了しました。これは、時代の流れやリスナーの嗜好の変化に合わせて、番組編成が見直された結果と言えるでしょう。

1987年は、技術的な進化、新しい放送局の設立、そして多様なパーソナリティとコンテンツによる多数の新番組の開始という点で、日本のラジオ界にとって非常にダイナミックな一年でした。これらの変化は、その後のラジオ放送のあり方に大きな影響を与えていくことになります。

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