1989年の世界ラリー選手権

1989年世界ラリー選手権：ランチアの時代

1989年の世界ラリー選手権（WRC）は、FIA世界ラリー選手権の第17回大会として、全13戦で激戦が繰り広げられました。前年と比較して、オリンパス・ラリーが開催されず、北米大陸でのイベントは行われなくなりましたが、代わりにラリー・オーストラリアが加わりました。また、スウェーディッシュ・ラリーとラリー・モンテカルロの開催順が入れ替わり、スウェーディッシュ・ラリーが開幕戦となりました。

このシーズン最大のトピックは、マルティーニ・ランチアの圧倒的な強さでした。ランチアは開幕から6連勝を飾り、他チームを圧倒する速さでマニファクチャラー・タイトルを獲得しました。ミキ・ビアシオン、マルク・アレン、ブルーノ・サビーといったベテランドライバーに加え、ディディエ・オリオール、ミカエル・エリクソン、ホルヘ・リカルデといった若手も活躍。チームはシーズンを通して、デルタ インテグラーレを使用し、その高い戦闘力を証明しました。

ランチア勢の活躍はドライバーズランキングにも如実に表れました。ビアシオンはシーズンを通して安定した走りを見せ、見事ドライバーズチャンピオンを獲得。WRC史上2人目となる2年連続チャンピオンの快挙を達成しました。2位にはランチア・デルタを駆るアレックス・フィオリオが入り、3位にはトヨタのユハ・カンクネンがランクイン。トップ5のうち4人がランチアのドライバーという結果となり、ランチアの支配的な強さが際立ちました。

ランチアに対抗できる勢力として、トヨタ・チーム・ヨーロッパが挙げられます。元チャンピオンのユハ・カンクネンとグループA勝利経験を持つケネス・エリクソン、そしてスペインの新星カルロス・サインツという強力なドライバー陣と、トヨタ・セリカ GT-Fourという強力なマシンを擁していました。しかし、ランチアの勢いを止めることはできず、カンクネンはランキング3位、エリクソンは6位、サインツは8位という結果に終わりました。

ランチア以外のチームでは、マツダ・ラリーチーム・ヨーロッパがスウェーデン人ドライバーのイングバー・カールソンを擁し、開幕戦スウェーデンで勝利を収めました。しかし、その勢いは続かず、マニファクチャラーズランキング3位、カールソン自身もドライバーズランキング7位に留まりました。

三菱ラリーアート・ヨーロッパは、ミカエル・エリクソンとペンティ・アイリッカラにギャランVR-4を託し、エリクソンは1000湖ラリーで優勝。異なるメーカーで連続優勝を達成するという偉業を成し遂げました。三菱はマニファクチャラーズランキング4位という結果に終わりましたが、その存在感を示しました。

アウディ・クアトロはシーズン序盤、プライベーターの手によって競争力を維持していましたが、マニファクチャラーズランキング5位という結果となりました。また、シモン・レーシングのルノー5 GT Turboは、アラン・オレイユがコートジボワールで優勝し、ドライバーズランキング10位に入りました。

1989年シーズンは、13戦中10戦でコンストラクターズポイントが与えられ、スウェーデン、コートジボワール、ニュージーランドではドライバーズポイントのみが与えられるという、独特のポイントシステムが採用されました。

このシーズンは、ランチアの圧倒的な強さ、そしてそれに挑む各チームの奮闘が印象的なシーズンとなりました。 ランチア・デルタ インテグラーレの性能の高さと、ビアシオンを中心としたドライバー陣の実力の高さが、このシーズンの結果に大きく影響を与えたことは間違いありません。しかし、トヨタやマツダ、三菱といった他のメーカーも、それぞれの個性と戦略で、ランチアに挑む姿は、このシーズンの大きな魅力でした。 彼らの活躍も、1989年WRCを彩る重要な要素であったと言えるでしょう。

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