1998年国華航空サーブ340墜落事故

1998年 国華航空サーブ340墜落事故

1998年3月18日、台湾で発生した国華航空7623便の墜落事故は、航空史に深い爪痕を残しました。新竹空港から高雄国際空港へ向かっていた同便（サーブ340B、機体番号B-12255）は、離陸直後に南シナ海へ墜落。乗員乗客13名全員が帰らぬ人となりました。

事故当時、サーブ340型機としては最悪の事故であり、2020年3月現在でも2番目に多い死者数を記録しています。また、この事故は台湾における飛航安全調査委員会発足の契機となりました。

事故の概要

事故機

事故を起こしたサーブ340B（B-12255）は、1993年製造。総飛行時間は8,076時間で、ゼネラル・エレクトリック CT7-9Bターボプロップエンジンを2基搭載していました。

乗員

7623便には、2名のコックピットクルーと3名の客室乗務員が搭乗していました。機長の総飛行時間は10,900時間、うちサーブ340での飛行時間は6,400時間でした。副操縦士の総飛行時間は300時間と短く、事故の約3週間前に訓練を終えたばかりでした。事故当日、機長は11時間以上勤務しており、9便を運航していました。

事故の経緯

7623便は、新竹発高雄行きの国内定期旅客便で、事故の2日前から運航を開始したばかりでした。当日の天候は視界が悪く、計器気象状態でした。離陸前チェックリストの実行中、パイロットはRHメイン・バスの故障に気づきます。この故障により、自動操縦、左側の電子飛行計器システム（EFIS）、左右のフライト・ディレクター、左側のラジオ磁気指示計、EFISのコンパレータが使用不能となり、第2エンジンの除氷装置のブリードバルブが開いたままとなりました。その結果、第2エンジンの温度が通常よりも15度上昇しました。

19時29分、7623便は滑走路05から離陸。自動操縦が使用できなかったため、機長は手動で操縦を行いました。ヨー・ダンパーも作動せず、通常よりも方向舵の細かな操作が必要となりましたが、デジタルフライトデータレコーダー（DFDR）の記録によれば、機長はそのような操作を行っていませんでした。離陸後、パイロットは左右エンジンの温度を調整するため、スロットルを手動で操作。これにより推力が左右非対称となり、機体が右に傾き始めましたが、複数の計器が故障していたため、機長は機体の右旋回に気づきませんでした。

19時31分、機長は方位の異常に気づき、副操縦士に磁気コンパスの確認を求めますが、応答はありませんでした。空港レーダーが最後に7623便を捉えた高度は2,700フィート (820 m)。その後、機影はレーダーから消失しました。DFDRの記録によると、機体は右に71.7度傾き、機首を15.8度下げた状態で墜落しました。

事故発生から数時間後、機体の残骸が新竹市沖合約2kmの地点で発見されました。

事故調査

警察と海軍により、残骸の回収活動が行われました。回収された遺体は損傷が激しく、機内での爆発の可能性を指摘する専門家もいましたが、航空局はその可能性は低いと判断しました。また、中華民国空軍のミサイルによる撃墜という憶測も流れましたが、国防部はこれを否定しました。残骸は警察に送られ、火薬などの残留物が付着していないか検査されましたが、検出されませんでした。

当局の発表によると、7623便は離陸後、左旋回を行う予定でしたが、レーダー記録から右旋回しながら上昇し、その後降下していたことが判明しました。2,700フィート (820 m)でレーダーから消失したことから、この高度で機体が分解した可能性も指摘されました。

航空局は、機械的故障が原因である可能性を示唆しました。フライトレコーダーの分析から、7623便は340ノット (630 km/h)の速度で海面に激突したと推定されました。

2001年6月5日、調査委員会は最終報告書を公表。事故原因はパイロットエラーであると結論付けられました。RHメイン・バスの故障により複数の計器が使用不能となり、運航許容基準（MEL）を満たしていなかったにもかかわらず、パイロットは飛行を強行。標準的な手順にも従いませんでした。夜間の離陸で有視界飛行ができない状況下で、パイロットは状況認識を失ったことが、事故の根本的な原因であるとされました。

事故後

当時の連戦副総統は、この事故に対し哀悼の意を表明しました。

事故後、国華航空はメディアの取材を一切拒否。中国民用航空局は、原因が究明されるまでサーブ340の運航を停止するよう国華航空に要請しました。これにより、台中市と高雄市から馬公市へ向かう国華航空便は全て欠航となりました。

1998年3月20日、2年間で3件の死亡事故を起こした国華航空は、無期限の運航停止処分を受け、全路線が欠航となりました。運航停止が解除されたのは同年4月4日でした。国華航空は1989年から1998年の間に、本事故を含めて9件の機体全損事故を起こしていました。1999年、国華航空はチャイナエアライン傘下のマンダリン航空に吸収合併されました。

1998年は、台湾において航空事故が多発した年でした。7623便の事故以前にも、チャイナエアライン676便墜落事故や徳安航空のヘリコプター墜落事故が発生していました。これを受け、行政院は同年5月に飛航安全調査委員会を発足させ、航空安全の強化を図りました。

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