2000年の日本競馬

2000年（平成12年）の日本競馬界は、特定の競走馬が圧倒的な強さを示し、競馬の歴史に新たな章を刻んだ一年でした。また、制度面でも重要な変化が見られた年です。この年の出来事は、主に旧馬齢表記に基づいて記述します。

テイエムオペラオーの偉業

前年のクラシックホースであり、有馬記念で僅差の3着に入ったテイエムオペラオーが、この年大きく飛躍しました。引退した有力馬に代わり、古馬中長距離路線の中心的存在となります。緒戦の京都記念で同期の菊花賞馬ナリタトップロードを下すと、阪神大賞典でラスカルスズカに先着。天皇賞・春では圧倒的支持に応え優勝を果たし、阪神大賞典と同様の着順でラスカルスズカ、ナリタトップロードが続きました。宝塚記念では、後に最大のライバルとなるメイショウドトウとの初対戦を制しています。

秋シーズンは京都大賞典から始動。ナリタトップロードにはアタマ差での勝利ながら、鞍上が鞭を使うことなく完勝という内容でした。そして、天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念と、いずれもメイショウドトウを抑えて勝利。特に有馬記念では、直線で内に包まれる絶体絶命の位置から馬群を割って抜け出し、ハナ差で劇的な勝利を収めました。この結果、年間8戦全勝、GI5勝という前例のない快挙を達成し、古馬中長距離の主要GIレースを全て制覇しました。さらに、天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念の全てを制した馬に贈られる特別報奨金制度の最初の適用馬となり、2億円のボーナスを獲得しました。

エアシャカールの「準三冠」

4歳（現3歳）牡馬のクラシック戦線では、エアシャカールが主役の一頭となりました。皐月賞ではダイタクリーヴァをクビ差で破りクラシック第一冠を獲得。しかし、日本ダービーではアグネスフライトの猛追にハナ差屈し、惜しくも二冠を逃しました。秋の菊花賞ではアグネスフライトへの雪辱を果たして勝利し、クラシック二冠を達成。日本ダービーでのわずかな差がなければ三冠馬となっていたため、「準三冠馬」とも称されました。このダービーでのハナ差敗退は、武豊騎手の3年連続ダービー制覇も阻止する結果となりました。

外国産馬の天皇賞出走解禁と時代の変化

この年から、天皇賞（春・秋）に外国産馬が出走できるようになりました。天皇賞・秋では、外国産馬であるメイショウドトウが2着、イーグルカフェが4着に入線しています。また、中央競馬では翌2001年から馬齢表記を満年齢に改めることが決定されました。さらに、地方競馬や中央競馬の様々な制度変更、新種の馬券（ワイドの全国発売完了、翌年からの連勝単式・三連勝複式発売決定）の導入など、時代の流れに合わせた変化が多数見られました。

その他主な出来事

年明けにはスペシャルウィーク、年末にはグラスワンダーといった名馬の引退式が盛大に行われました。2月には宮城県の山元トレーニングセンターで火災が発生し、多数の現役競走馬が犠牲となる痛ましい事故がありました。その直後、犠牲となったエガオヲミセテを管理していた音無秀孝厩舎のユーセイトップランがダイヤモンドステークスを制し、また火災で失われた馬の弟であるシルヴァコクピットがきさらぎ賞を勝利するなど、関係者の心情を打つ出来事もありました。

海外での日本馬の活躍も光りました。アグネスワールドがイギリスのジュライカップ（GI）を制覇し、日本調教馬として初のイギリスGI勝利という歴史的快挙を達成しました。また、アメリカのケンタッキーダービーでは、日本人馬主の所有馬であるフサイチペガサスが優勝し、こちらも日本人馬主として初の栄誉となりました。武豊騎手は年間100勝を9年連続12回目（岡部幸雄騎手の記録を更新）で達成したほか、この年にはアメリカへの騎乗拠点移籍を発表しています。

地方競馬でも、石崎隆之騎手が史上2人目の通算4000勝を達成。ホッカイドウ競馬のオースミダイナーがサラブレッド最高齢の重賞勝利記録を更新し、公営宇都宮のドージマファイターが地方競馬の連勝記録を樹立するなど、様々な記録が生まれました。

この年生まれた競走馬は、後にクラシック戦線などで活躍するネオユニヴァース、ゼンノロブロイ、アドマイヤグルーヴ、スティルインラブといった顔ぶれです。

表彰馬

2000年のJRA賞年度代表馬には、圧倒的な成績を残したテイエムオペラオーが選ばれ、最優秀5歳以上牡馬も受賞しました。その他、最優秀4歳牡馬にエアシャカール、最優秀4歳牝馬にチアズグレイス、最優秀ダートホースにウイングアローなどが選出されています。NARグランプリ年度代表馬にはベラミロードが輝きました。

2000年は、テイエムオペラオーの不朽の記録樹立、クラシックでの新たなドラマ、そして競馬制度の国際化や近代化に向けた動きが同時に進行した、記憶に残る一年となりました。

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