2008年の中国雪害

2008年中国雪害：記録的な寒波による大災害

2008年1月25日から2月6日にかけて、中国南部から中部にかけて、記録的な大雪と寒波が襲いました。この雪害は、中国の広範囲にわたり、交通機関の麻痺、電力供給の途絶、食料不足などを引き起こし、数千万人に影響を与えた未曽有の災害となりました。

寒波と吹雪の襲来

1月10日頃から、中国上空に巨大な寒気が流れ込み、沿岸部西側を中心に大雪が降り始めました。特に被害が大きかったのは、湖南省、湖北省、河南省、山東省、江蘇省、安徽省、上海市などです。一部地域では17年ぶり、また別の地域では半世紀ぶりの大雪となりました。降雪の第一波が過ぎた後も、寒波は数日間続き、国土最大のタクラマカン砂漠でも降雪が記録されました。砂漠では、-25℃近い最低気温が11日間も続き、家畜が死ぬなどの被害が出ました。ある地点では、気温は-32℃まで下がり、観測史上最低を記録しました。

雪害の原因

中国気候センターや国連の気候変動に関する政府間パネル（IPCC）は、この雪害は主に異常な大気循環やエルニーニョ現象が原因であり、気候変動と直接的な関連はないとしています。中国気象局は、2007年から2008年の冬の平均気温が2.5℃を下回り、1986-87年の冬以来の最低気温を記録したと発表しています。

雪害の影響

雪害は、家屋の倒壊、電力供給の停止、交通機関の麻痺など、人々の生活に大きな影響を与えました。

損害

吹雪により、低い建物の屋根が崩壊し、多くの人が死亡しました。約22万3000戸の家屋が倒壊し、86万2000戸の家屋が破損しました。また、自動車工場で全長500メートルの屋根が崩壊する事故も発生しました。エネルギーシステムも大きな被害を受け、広範囲で電力供給が途絶えました。郴州市では、約2週間にわたり、政府機関や病院を含む都市全体で電力や水の供給が停止し、電話ケーブルやインターネット網も破損しました。また、撫州市では、約3週間にわたり都市全体が停電しました。31省のうち17省で電力不足に悩まされ、上海市の夜景灯は援助のため全て停止されました。貴州省では、送電網の完全な復旧に最大5ヶ月かかると言われました。

水道管も破損し、武漢市では数本の水道管が破裂し、最大10万人分の水の供給が困難になりました。広西チワン族自治区では、約23万9000人が飲み水の確保に苦労しました。雪害の最初の週には、約82万7000人が避難し、全体で約7800万人に影響が出ました。また、87万匹の豚、45万頭の羊、8万5000頭の牛が雪害で死亡し、7万5000平方キロメートルの森林が破壊されました。

輸送への影響

春節（旧正月）を前にした帰省ラッシュと重なり、交通機関への影響は深刻でした。

# 鉄道

大雪により京広線が破壊され、長沙駅や広州駅をはじめとする各駅で、数十万人もの人々が足止めされました。約8000本の列車が遅延し、600万人以上の鉄道利用者が影響を受けました。駅では、帰省を諦めた人々が非常シェルターで数日間を過ごしました。鉄道の一部は1月31日に再開しましたが、2月3日の濃霧で更なる遅れが発生しました。

# 高速道路

京珠高速道路をはじめ、各地の高速道路が閉鎖されました。道路閉鎖により、食料品の輸送が中断し、一部地域で食料難が発生しました。

# 海運

上海港では、商品を積んだ10隻のボートが氷結により動けなくなり、積荷を降ろすことができませんでした。

# 空港

19の主要空港が閉鎖され、3250便が欠航、5550便が遅延しました。各地でバスの運行が停止し、約6万人のバス乗客が足止めされました。

犠牲者

雪害による死者は少なくとも129人に達しました。寒波や屋根の倒壊による死亡が多かった他、バス事故による死者も含まれています。湖南省では、電力復旧作業中に3人の電気技術者が死亡し、「革命に殉じた者」として称えられました。また、医療班が約20万人の病人や負傷者の治療に当たりました。

経済への影響

中国経済も大きな影響を受けました。当初、経済損失は約540億元と見積もられていましたが、最終的には1110億元にまで膨らみました。保険会社には多数の保険金請求が寄せられました。野菜や果物の価格が大幅に上昇し、消費者物価指数も上昇しました。また、工場の生産活動も停滞し、電子通信会社も多大な損害を受けました。上海証券取引所では、株価が大幅に下落しました。

政府の対応

政府は、2002年のSARS危機以来最大規模となる救援活動を展開しました。温家宝首相は、状況について国民に謝罪し、電力システムの復旧を優先すると述べました。軍や予備役兵を動員し、救援物資の輸送や除雪作業にあたりました。被災した農民には7億ドルの支援金が支給され、各地に救援活動費が支出されました。気象部門は、今後の悪天候に備えて、予報精度や連携協力の強化に取り組むと発表しました。

まとめ

2008年の中国雪害は、記録的な寒波による大規模な自然災害であり、多くの人命が失われ、経済にも大きな打撃を与えました。この災害を教訓に、中国政府は防災対策や気象予報の精度向上を重視し、今後の災害に備える体制を強化していくことでしょう。

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