2009年の航空

2009年の航空業界は、安全面における深刻な課題と、技術革新や市場の変化といった様々な側面が混在する一年として記憶されています。

年の初め、1月15日にはニューヨークのハドソン川で、USエアウェイズ1549便、エアバスA320-214型機が鳥との衝突により両エンジンを停止させる事態に陥りました。機長の見事な判断によりハドソン川への不時着水が行われましたが、この極めて危険な状況下にもかかわらず、搭乗していた全員が無事に救助されるという「ハドソン川の奇跡」として知られる出来事が発生しました。

しかし、その後は世界各地で複数の重大事故が相次ぎました。2月12日には、クラレンス・センター近郊でコンチネンタル航空3407便、ボンバルディアQ400型機が墜落。続いて2月25日には、オランダのスキポール国際空港手前の草地でトルコ航空1951便、ボーイング737-8F2型機が墜落しました。3月23日には日本の成田国際空港で、着陸中のフェデックス80便、マクドネル・ダグラスMD-11F貨物機が体勢を崩して炎上。この事故では機長と副操縦士の尊い命が失われています。

さらに、大西洋上では6月1日にエールフランス447便、エアバスA330-200型機が消息を絶ち、後に墜落していたことが判明しました。この事故は、大西洋上で発生したことや、フライトデータレコーダーの回収が困難を極めたことなどから、大きな注目を集めました。6月30日にはコモロ諸島沖のインド洋でイエメニア626便、エアバスA310-324型機が着陸直前に墜落。7月15日にはイランでカスピアン航空7908便、ツポレフTu-154M型機が離陸直後に墜落。同月の7月24日にはイランのマシュハド国際空港でアーリヤー航空1525便、イリューシンIl-62M型機が着陸に失敗するなど、短期間に複数の悲惨な事故が発生し、航空安全への懸念が高まりました。

一方で、新たな航空技術の開発も進展しました。3月5日には空陸両用の特徴を持つ軽飛行機、Terrafugia Transitionの試作機が初めて空を飛び、パーソナルモビリティの未来を示唆しました。4月4日にはアメリカで開発された無人戦闘攻撃機、通称プレデターCと呼ばれるアヴェンジャーの初飛行が行われ、無人航空機のさらなる進化がうかがえました。また、中国では地域路線向けジェット旅客機ARJ21が、7月15日に初めて上海から西安への都市間飛行を成功させています。

航空会社の再編や新規参入もありました。2007年に設立されたボリビアのボリビアーナ航空が3月29日に運航を開始。日本では前年に設立されたフジドリームエアラインズが7月23日に静岡空港を拠点として就航しました。7月28日にはこの年に設立されたカンボジア・アンコール航空とメコン航空が同時に運航を開始しています。その一方で、セネガル国際航空が4月29日に、エア・フィリピンが8月31日にそれぞれ運航を休止しました。タイでは12月にチャーター便専門のジェットアジア・エアウェイズが設立されています。

さらに、航空宇宙分野では、弾道飛行を目指すスペースプレーンであるスペースシップツーの1号機が12月7日にロールアウトされ、将来の宇宙旅行に向けた準備が進められました。

このように、2009年は航空安全への警鐘が鳴らされた一方で、技術の進歩や業界構造の変化も同時に進行した、多角的な動きが見られた年であったと言えます。

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