2010年のラジオ (日本)

2010年の日本のラジオ

2010年、日本のラジオ業界は大きな転換点を迎えました。翌年に迫った地上波テレビの完全デジタル化が、特にAM局と兼営する民放各局に経営的な影響を及ぼし、構造改革を迫られる一年となりました。

概況：変革の波と新たな試み

経営合理化の流れの中で、AMステレオ放送の終了が全国的に加速し、遂には大阪（MBSラジオ、ABCラジオ）や北海道（HBCラジオ、STVラジオ）、福岡（RKBラジオ）といった大都市圏の主要局もモノラル放送への回帰を決定しました。経費削減のため、長年親しまれた人気パーソナリティの番組が終了する動きも見られました。一方で、インターネットとの融合が積極的に進められ、Twitterを活用した番組プロモーションや、ストリーミング放送が本格的に開始されるなど、新しい技術への対応も進みました。

この年、ラジオ業界にとって特に画期的な出来事となったのが、IPサイマルラジオサービス「radiko」の開始です。在京・在阪の主要AM・FM局12社とラジオNIKKEIの計13社が共同で立ち上げたこのサービスは、パソコンからインターネット経由でクリアな音声のラジオ放送が聴取できるというものでした。3月15日に実用化試験配信が始まり、12月1日には運営が株式会社radikoに承継され、配信エリアも関東・関西の広範囲に拡大されました。これにより、ラジオ聴取のスタイルに新たな選択肢が加わりました。

外国語FM局の苦境と再編

1995年の阪神・淡路大震災を契機に設立された外国語FM局も、厳しい局面に立たされました。九州国際エフエム（Love FM）では、経営不振から日本語放送の増加やラジオショッピング導入など、従来の特色が薄れる傾向が見られ、西日本鉄道への経営譲渡交渉まで行われる事態となりました。外国語FM局の先駆けである関西インターメディア（FM COCOLO）は、ライバル局であるFM802の番組制作会社を迎え入れて大胆な番組改編を断行しました。さらに、愛知国際放送（RADIO-i）は経営難を理由に9月末での放送停止を発表し、10年半の歴史に幕を下ろしました。

主な番組やイベントの動き

多くの番組でパーソナリティ交代や改編が行われました。FM COCOLOはFM802との連携による大規模な番組改編を実施し、関西のラジオシーンに大きな影響を与えました。文化放送の長寿番組「走れ!歌謡曲」ではオーディションで新パーソナリティが決定するなど、話題を呼びました。NHKでは、大相撲野球賭博問題を受けて大相撲中継が中止されるという異例の事態が発生しました。

夏の参議院議員通常選挙の際には、各局が様々な開票速報特別番組を編成しました。また、MBSラジオは開局60周年を記念し、31.5時間におよぶ大型特番を放送するなど、放送局独自の記念企画も行われました。

この年には、文化放送とニッポン放送が共同プロジェクト「セイ!ヤング・オールナイトニッポンAre you ready? Oh!」を立ち上げ、両局同時リレー形式の特別番組を放送するなど、局の垣根を越えた試みも見られました。

年末の風物詩であるニッポン放送「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」のメインパーソナリティには、お笑いコンビのオードリーが起用されました。

受賞と評価

2010年度の日本民間放送連盟賞では、報道部門で山形放送、教養部門で静岡放送、エンターテイメント部門で高知放送の番組がそれぞれ受賞しました。また、第6回日本放送文化大賞のラジオ部門グランプリには横浜エフエム放送の特別番組が選ばれました。

技術・経営の変遷

放送技術面では、TOKYO FMの八王子中継局開局などがありました。経営面では、経営破綻したKiss-FM KOBEの事業が新法人「兵庫エフエム放送」に譲渡され、JFNに新規加盟するという再建が進められました。

ラジオ番組や局の節目

2010年は、多くのラジオ番組や放送局が節目を迎えました。

番組放送回数
4000回：TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」
3000回：ラジオ日本「夏木ゆたかのホッと歌謡曲」
1000回：文化放送「FRIDAY SUPER COUNTDOWN 50」、TBSラジオ「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」

開局周年
60周年：東海ラジオ放送、和歌山放送、NHK鳥取ラジオ第2放送
50周年：FM OSAKA、京都放送滋賀ラジオ放送局
40周年：TOKYO FM、FM FUKUOKA
25周年：FM秋田、FMとやま、FM三重、エフエム岩手、エフエム群馬、エフエムクマモト、エフエム山口、FMヨコハマ
20周年：HELLO FIVE、Kiss-FM KOBE、エフエム大分
15周年：ふくしまFM、FM COCOLO
10周年：RADIO-i（閉局）

その他、多数の特別番組やイベントが企画・放送され、日本のラジオ界が変化に対応し、多様な試みを行った一年となりました。radikoの登場は、その後のラジオ聴取環境に大きな影響を与える出来事と言えます。

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