2016年の世界ラリー選手権

2016年世界ラリー選手権：フォルクスワーゲンの栄光と撤退の影

2016年の世界ラリー選手権（WRC）は、FIA世界ラリー選手権の第44回大会として、1月のラリー・モンテカルロから11月のラリー・オーストラリアまで、全13戦が繰り広げられました。WRC-2、WRC-3、ジュニアWRCもサポートシリーズとして開催され、世界中から熱い視線が注がれました。

このシーズンは、2011年から導入された第二期ワールドラリーカーレギュレーションの最終年ということもあり、大きな注目を集めました。結果、フォルクスワーゲンはマニュファクチャラー選手権で4連覇を達成するという偉業を成し遂げました。そして、彼らのエースドライバーであるセバスチャン・オジェも、ドライバーズタイトル4連覇という金字塔を打ち立てました。

しかし、シーズン終盤の11月2日、フォルクスワーゲンはWRCからの撤退を発表。かねてより噂されていたものの、その電撃的な発表は、ラリー界に衝撃を与えました。フォルクスワーゲンは2019年まで参戦継続を表明していただけに、この決定は多くの関係者を驚かせました。

フォルクスワーゲンのドライバー陣の活躍が目覚ましかった一方で、今シーズンはその他のチームも善戦しました。シトロエンのクリス・ミークが2勝、ヒュンダイのヘイデン・パッドンとティエリー・ヌービルがそれぞれ1勝を挙げました。また、Mスポーツもオット・タナクがポーランドで優勝目前まで迫るなど、健闘を見せました。

これらの波乱の多くは、出走順が結果に大きく影響するグラベルイベントで発生しました。現行のレギュレーションでは、デイ2まではポイントランキング順に出走することになっており、トップを走るドライバーはコースの清掃役を強いられるという状況がありました。このため、常に先頭で走行し、路面の清掃を余儀なくされたオジェは、この出走順ルールを批判する発言をするなど、シーズンを通して様々な議論を巻き起こしました。

2016年のWRCカレンダーは、2015年とほぼ同様でしたが、新たにチャイナ・ラリーが追加されました。ヨーロッパ、北米、南米、アジア、そしてオーストラリアと、5大陸に渡るラリーとなりました。しかし、このチャイナ・ラリーは、大雨の影響により中止という結果に終わりました。これは1999年以来17年ぶりのWRC開催だっただけに、非常に残念な出来事でした。また、ラリー・オーストラリアは前年度の9月から11月に移動し、シーズンの最終戦となりました。

チームやドライバーの動向も大きな変化がありました。シトロエンは、2017年のレギュレーション変更に対応するための車両開発に集中するため、ファクトリーチームとしての参戦を見送りました。しかし、いくつかのラリーにはプライベーターとして参戦しました。これは、2006年にクサラ WRCの開発終了後にC4 WRCの開発に集中するためにワークス参戦から撤退した時と似た状況でした。

中国のタイヤメーカーDMACKは、2016年シーズンにマニュファクチャラーチームのスポンサーとしてフル参戦しました。Mスポーツがメンテナンスを担当するフォード・フィエスタ RS WRCを使用し、WRCを盛り上げました。

ドライバーの移籍も目立ちました。エルフィン・エバンスはMスポーツを離脱、マッズ・オストベルグはシトロエンからMスポーツに復帰しました。オストベルグのチームメイトには、トヨタのテストドライバーだったエリック・カミリが起用され、WRC初参戦を果たしました。ヒュンダイのパッドンはフル参戦となり、一方、アブリングはパート参戦となりました。オィット・タナックはMスポーツを離れ、DMACKチームに復帰しました。

2016年シーズンは、フォルクスワーゲンの圧倒的な強さと、その後の撤退というサプライズ、そして他のチームの躍進など、様々なドラマが詰まったシーズンでした。このシーズンは、WRCの歴史に大きな足跡を残すこととなりました。

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