3K90

M-22 «Ураган»(ウラガーン)艦隊防空ミサイル・システム

M-22 «Ураган»（ウラガーン）は、ソビエト連邦で開発された艦隊防空ミサイル・システムです。GRAUインデックスは3K90、輸出向けは「シュチーリ」と称されます。

開発の経緯

本システムは、1972年1月13日の党中央委員会および閣僚会議の決定に基づき開発が開始されました。アルテア研究所のG・N・ヴォルギン主任設計官が責任者となり、ミサイルはファケル設計局、製造はドルゴプルドニ科学製造工場、システムの製造はウリヤノフスク機械工場が担当しました。

1970年代後半から、試験艦として運用されていたカシン型駆逐艦「プロヴォールヌイ」で試験が行われ、1980年から実艦への搭載が始まりました。956型駆逐艦（ソヴレメンヌイ級）の主要な対空兵器として採用され、1983年から運用が開始されました。

システムの特徴

ウラガーンは、1972年の決定で同時に開発が決定された陸軍向けの9K37「ブーク」の艦載型として開発されました。中距離防空ミサイル・システムとして、限定的な艦隊防空および装備艦の個艦防空を目的としています。

ミサイルは地上型の9K37と共通の9M38が採用され、後に9M38M1に更新されました。西側諸国ではSA-N-7「ガドフライ」と呼ばれています。推進方式は二重推力型の固体燃料ロケット、誘導方式はオートパイロットおよびセミアクティブ・レーダー・ホーミングを採用しています。最大射程は、目標高度1,000メートル以上であれば25キロ、対艦ミサイル防御の場合には12キロです。

ミサイル24発を収容可能な旋回・俯仰式のMS-196単装発射機（GRAUインデックス: 3S90）によって運用されます。ミサイルの外形や誘導方式は、西側諸国のターター・システム（ターター・ミサイルおよびMk.13 GMLS）と類似している点が指摘されています。

射撃指揮システムには3R90のGRAUインデックスが付与されており、ミサイルの誘導を担当するMR-90「アリェーフ」（NATO名「フロント・ドーム」）火器管制レーダー6基が含まれます。システム固有の捕捉レーダーは持たないため、艦の3次元レーダー（通常はMR-700「フレガート-M」）から目標情報の移管を受けます。12個の目標を同時追尾し、うち6個を攻撃することができます。

ヨーシュへの発展

地上型が9K37M1-2 「ブークM2」へと発展するのに合わせて、艦載型も「ヨーシュ」へと発展しました。ミサイルは9M317に更新され、西側諸国ではSA-N-12「グリズリー」と呼ばれています。

ロシア海軍での装備化当初は「ウラガーン」と同型の3S90単装発射機を使用していましたが、後にVLSである3S90M（輸出型は3S90E）に変更したモデルが登場し、「シュチーリ-1」として輸出されました。VLS化に合わせて、捕捉レーダーと火器管制レーダーを兼ねた多機能レーダーとしてのフェーズドアレイレーダーの導入も図られました。

ロシアでは、艦載用SAMの垂直発射化という点では既にS-300F フォールトを実用化していましたが、同システムのVLSはリボルバー式でした。一方、本システムの3S90M・3S90Eでは、西側諸国のMk.41と同様にミサイル発射筒の数だけ発射口を設け、それぞれの発射口からミサイルが発射されるシンプルな方式が採用されています。ミサイルの保管容器と発射装置を兼ねるMS-487キャニスターを束ねた構造となっています。

これによりミサイルの発射速度は大きく向上し、3S90単装発射機では初弾発射後に2発目の発射までに約12秒を要したのに対し、3S90M・3S90Eでは1-2秒間隔での連続発射が可能となっています。MS-487キャニスター12基でVLSモジュールが構成されており、システムの規模に応じてモジュールを増減できます。VLS化に合わせてミサイルも9M317M（輸出型は9M317ME）に変更されており、VLSのセルに収容するため安定翼や制御翼を小型化したり折り畳み式にするとともに、これに伴う安定性・操縦性の低下を補うため、サイドスラスターが追加されています。

運用国と搭載艦

ソビエト連邦海軍 / ロシア海軍
956型駆逐艦（ソヴレメンヌイ級）
11356M型フリゲート（アドミラル・グリゴロヴィチ級）
中国人民解放軍海軍
956E/EM型駆逐艦（杭州級）
052B型駆逐艦（旅洋I型） ※シュチーリ
インド海軍 - いずれもシュチーリ
15型駆逐艦（デリー級）
11356型フリゲート（タルワー級）
17型フリゲート（シヴァリク級）

もう一度検索