A級駆逐艦 (2代)

イギリス海軍 A級駆逐艦

A級駆逐艦は、イギリス海軍が第一次世界大戦後に初めて量産した駆逐艦の艦級です。先行して建造された「アマゾン」と「アンバスケイド」の設計を踏襲し、1927-28年度計画で9隻が建造されました。

来歴

第一次世界大戦後、イギリス海軍は戦時中に増大した駆逐艦戦力の整理を進めていました。老朽艦の退役を進める一方で、戦時計画で建造が開始されていた未完成艦艇の建造を継続したため、しばらくの間、新規の駆逐艦建造は行われませんでした。

1924-25年度には、改W級駆逐艦をベースに、戦訓と新技術を盛り込んだ新型駆逐艦のプロトタイプとして、ソーニクロフト社が「アマゾン」、ヤーロウ社が「アンバスケイド」を建造しました。これらの成果を踏まえ、1927-28年度に量産されたのが本級です。また、本級を大型化した嚮導艦「コドリントン」や、翌年度計画で建造されたB級は、本級の小改正型にあたります。

設計

設計面では、おおむね「アマゾン」の設計が踏襲されました。船首楼型、2本煙突という基本構成や艦内の諸区画配置も同様です。

機関

ボイラーには、海軍本部設計のアドミラルティ式3胴型水管ボイラーが搭載されました。蒸気性状は圧力21kgf/cm2、温度315.5℃でした。タービンはパーソンズ式オール・ギヤード・タービンであり、独立した巡航タービンは持たず、高圧タービンの中に設ける方式が採用されました。これらの機関構成は、以後の艦級でも踏襲されています。本級では、プロトタイプ艦と比較して航続距離が40%以上延伸され、北大西洋海域での作戦行動が可能となりました。

3番艦「アケロン」では、試験的にソーニクロフト式の高温高圧水管ボイラーが搭載されました。蒸気性状は圧力35kgf/cm2、温度398.9℃となり、燃費は標準的な368g/hp/hrから276g/hp/hrに改善されました。しかし、タービンの不具合などから本格的な試験には至らず、英駆逐艦の高温高圧化は1942年度計画のバトル級駆逐艦まで持ち越されました。

電源としては、ディーゼルエンジン駆動の停泊発電機の搭載も検討されましたが、人員配置の問題から実現せず、プロトタイプ艦と同様に40kWの蒸気タービン発電機2基が搭載されました。

兵装

兵装面では、プロトタイプ艦の構成をベースに改良・強化が図られました。

艦砲は、改W級以来の12cm砲4門装備が踏襲されましたが、砲が野砲転用の螺栓式（BL 4.7インチ砲Mk.I）から、鎖栓式のQF 4.7インチ砲Mk.IXに変更され、発射速度が向上しました。砲盾の形状も改善され、砲員の足元まで防御できるようになりました。2番砲には、60度の仰角が取れるCP Mk.XIII砲架を採用し、高角砲を兼用する構想もありましたが、これは実現せず、全砲が仰角30度～俯角10度のMk.XIV砲架との組み合わせとなりました。

水雷兵器も強化され、従来の駆逐艦が21インチ魚雷発射管を3連装2基搭載していたのに対し、本級では4連装2基となりました。また、対機雷戦兵器として、戦時中に使用されていたパラベーンを改良した2速駆逐艦掃海具（TSDS）が開発され、本級より装備化されました。

第二次世界大戦勃発後には、護衛駆逐艦への改装が行われ、残存艦を対象に、271型レーダーの搭載、後部魚雷発射管の代わりに7.6cm高角砲（QF 3インチ砲Mk.I）の搭載、対潜爆雷搭載数の増加などが行われました。

同型艦

イギリス海軍向けに通常型8隻と嚮導艦1隻の合計9隻が建造され、カナダ海軍向けにも2隻が建造されました。

第二次世界大戦では、ノルウェー沖海戦で「アカスタ」と「アーデント」が撃沈されたのを始め、大戦終結までにカナダ艦1隻を含む8隻が失われました。大戦を生き残った3隻も、戦後間もなく退役・解体されました。

「サグネイ」と「スキーナ」は、カナディアン・リバー級駆逐艦（または単にリバー級）に分類されることもあります。カナディアン・リバー級は14隻存在しますが、「サグネイ」と「スキーナ」以外は全てイギリス海軍から引き渡された中古のC級、D級、E級、F級、G級、H級駆逐艦です。

脚注

参考文献

関連項目

イギリス海軍艦艇一覧
カナダ海軍艦艇一覧

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