AEK-971 アサルトライフル:バランスド・オートマティクスが生む安定性
AEK-971は、ソ連/
ロシアのコブロフ社で開発された
アサルトライフルです。
1980年代にSergey I. Koksharovによって設計され、標準モデルでは
5.45x39mm弾を使用します。その後継型であるA-545(GRAU:6P67)とA-762(GRAU:6P68)は、
2014年12月に発表されました。これらはKORD(コヴロフ・デグチャリョフ銃器設計局)によって開発されました。
開発の経緯
AEK-971は、ソ連国防省が主催した次期
アサルトライフルのための「アバカン」と呼ばれる研究開発競争に参加するために開発されました。しかし、最終的には
AN-94が優先的に採用されることとなりました。開発初期段階において、国防省は過度な革新を求めなかったため、設計は比較的シンプルなものとなりました。その結果、AEK-971は
AN-94よりも軽量で、設計が容易であり、製造コストも比較的安価に抑えられました。
チェチェン紛争での実戦投入や、海
軍歩兵および内務省部隊によるテストを経て、AEK-971は生産準備が整いました。初期生産品は
ロシア連邦司法省の部隊に採用されています。
1980年から1994年にかけて行われた「アバカン」の自動
小銃トライアルの結果、
AN-94が採用され、最初の生産契約を逃しましたが、
ロシア軍はAEK-971の野外試験を開始しました。
AN-94は2点バースト
射撃においてAEK-971よりもわずかに精度が高いものの、フルオート
射撃や長めのバースト
射撃ではAEK-971の方が高い命中率を示しました。
2014年12月23日、
ロシア軍はAEK-971の発展型であるA-545(GRAU:6P67)を、競合する
AK-12とともに「ラトニク」装備計画に選定し、評価のために実戦部隊で運用することを発表しました。初期生産と実地試験を経て、両
小銃は
ロシア軍やその他の機関に採用される可能性を残しました。その後、AEKシリーズは
特殊部隊へ、
AK-12は
歩兵部隊へと配備されることとなりました。
2017年3月、A-545は
AK-12と共にテストを完了し、
ロシア軍に採用されることが決定しました。しかし、その複雑で高価な設計から、国境警備隊、
特殊部隊、および国家警備隊への供給に限定され、
AK-12は通常の
歩兵部隊に配備されています。
2018年1月、
5.45x39mm弾を使用するA-545(GRAU:6P67)と
7.62x39mm弾を使用するA-762(GRAU:6P68)が、主に
特殊部隊と一部の空挺部隊向けに採用されたことが発表され、2020年4月から量産が開始されました。
構造と作動機構
AKシリーズは、低い発射レートによってフルオート
射撃時の制御性を確保していましたが、内務省
特殊部隊の隊員からは「レートが低すぎるため近距離戦で不利になる」という意見が寄せられていました。また、
AK-74から採用された
5.45x39mm弾は、
7.62x39mm弾と比較してストッピングパワーが劣り、敵を倒すには最低2発の命中が必要でした。そのため、次期主力
小銃選定の「アバカン」に提出された候補には、以下の特徴が求められました。
2点バースト
射撃機能の搭載
従来より高い発射レート
高い耐久性の維持
コブロフ社は、これらの条件を満たすため、可能な限りシンプルな機構で高レートでありながら制御しやすく、安価で高い耐久性を実現することに重点を置きました。
AEK-971は、外観上はAKシリーズの流れを汲んでいますが、BARS(Balanced Automatics Recoil System:平衡自動反動システム)と呼ばれるカウンターウェイトを使用して反動を軽減する機構を採用しています。この機構は、ガス圧でピストン・ボルトキャリアーを後退させると同時に、カウンターウェイトを前進させることで、ボルト作動による反動や振動を打ち消します。従来のAKシリーズではガスポートがハンドガードより前方にありましたが、AEK-971ではハンドガード先端部分、シリンダーの中間にガスポートが存在します。シリンダー内部には、ボルトキャリアーを押し戻すピストンと、カウンターウェイトを押し出すピストンが配置されています。AEK-971は、
AK-74Mと比較して連射時の精度が15-20%向上しています。
AEK-971は「アバカン」で採用されませんでしたが、
アルファ部隊など警察系
特殊部隊に採用され、隊員からの評価は概ね良好でした。
派生型
AEK-972: 5.56x45mm弾を使用するモデル
AEK-973: 7.62x39mm弾を使用するモデル
AEK-971S: 銃床を折りたたみ式に変更し、グリップの角度を改良したモデル
AEK-973S: AEK-973と同様の改良を施したモデル
A-545: GRAUコード6P67。
特殊部隊向けに
ロシア軍が採用。分解方式をAR-15のように変更し、光学照準器の装着に対応。リアサイトも改良。
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A-762: GRAUコード6P68。A-545の
7.62x39mm弾使用モデル
AEK-971とその派生型は、独自の反動軽減機構により、フルオート
射撃時の安定性を高めた
アサルトライフルとして、
特殊部隊を中心に活躍を続けています。