AIMS-74は、
ルーマニアが独自に改良を施したAKMの派生型であり、ソビエト連邦の
AK-74に相当する
小銃です。輸出用にはAIMS-74という商品名が用いられていますが、
ルーマニア軍ではPistolul Mitralieră model 1986(PM md. 86もしくはmd. 86とも表記)という制式名称が与えられています。さらに1990年代に入り、Puşcă Automată model 1986(PA md. 86とも表記)へと制式名が変更されました。
開発の経緯
1980年頃、
ワルシャワ条約機構に属する東欧諸国で
AK-74が普及しつつありました。
ルーマニアも
AK-74のライセンス生産を検討しましたが、ソ連が要求するライセンス生産料が高額であったため、5.45x39mm弾に準じた弾薬と、これを使用する
小銃を独自に開発することを決定しました。そして、自国のPM md. 63をベースに改良を重ねて開発されたのがPA md. 86です(
ポーランドのKbk wz. 1988 タンタルも同様の背景を持っています)。
特徴
PA md. 86は、
ルーマニア製AK派生型に特有の垂直フォアグリップを装備している点を除けば、外観はソ連の
AK-74によく似ています。マズル部分には大型のマズルコンペンセイターが装着されています。
ソ連や東欧諸国製の
AK-74と比較すると、いくつかの相違点が見られます。まず、銃身からガスピストンシリンダーに発射ガスを送り込むガスポートの角度が、
AK-74系で一般的な90度ではなく、
AK-47やAKMで一般的な45度であるという点です。また、
AK-47/AKM用マガジンと同様のリブ付
金属製マガジンのみが製造され、
AK-74系で一般的なプラスチック製マガジンは生産されていません。このように、
AK-47/AKM系の特徴を比較的色濃く残しています。
内部機構においては、AK系としては珍しく3点バースト連射機構が追加されています。この3点バースト連射機構は、
ポーランド製のkbk wz. 1988 タンタルとよく似たラチェット式であり、ソ連のライセンス生産を選ばず独自開発を選択した両国間で、何らかの技術的交流があったと考えられます。
レシーバー右側面のセレクターはPM md. 63のものがそのまま流用されており、上から順にセミオート(数字1の表示)、3点バースト(数字3の表示)、フルオートのポジションとなります。フルオートのポジションは、レバー先端がレシーバー下端からややはみ出す位置まで押し下げる必要があり、フルオートのポジションを示す打刻は本来の位置に打刻できず、セミオートの打刻より上側に打刻されており、注意が必要です。
前述のマズルコンペンセイターは他国の
AK-74のものとは細部が異なり、やや細身です。ボルトキャリアに設けられたコッキングハンドルについては、他国では右側面へ水平に突き出ているのが一般的なのに対し、斜め上に角度が付けられています。
銃床は、初期生産型ではPM md. 63と同様の木製固定式
銃床のみでしたが、後に東ドイツ製のMPi-KMS-72と同型の右側面折畳式
銃床を装備するモデルも同一の制式名称で追加され、右側面折畳式
銃床の方が多数生産されたとされています。
派生型
Pistolul Mitralieră model 1986 Reduit(PM md. 86 Reduit、md. 86 Reduit):銃身とガスピストンを短縮化したカービンモデル(Reduitは「短縮型」の意)。PA md. 86と同様に、3点バースト連射機構を備えています。PM md. 90 カービンと異なり、銃口部分に独自形状の小型のフラッシュサプレッサーを装着し、垂直フォアグリップの無いストレートな下部ハンドガードが装着されています。
Pistolul Mitralieră model 1987(PM md. 87、md. 87):
5.56x45mm NATO弾を使用する輸出向け
軍用モデルです。
Puscă Mitralieră model 1993(PM md. 93、md. 93):PA md. 86を強化して分隊支援火器としたモデルです。PA md. 86と同様に、大型のマズルコンペンセイター、3点バースト連射機構が装備されています。レシーバーを強化し、より長い重銃身と大型銃床、伸縮可能な二脚、レシーバー前部に折畳式キャリングハンドル、銃床後端上部に折畳式ショルダーレストを装備しています。通常の30発箱型弾倉も装着可能ですが、専用の45発箱型弾倉が用意されました。輸出モデルも生産され、5.45x39mm弾を使用するモデルだけでなく、5.56x45mm NATO弾を使用するモデルも生産されました。
配備国
ルーマニア
アフガニスタン
ジョージア
*
パラグアイ