AMD Phenom II

AMD Phenom II (フェノム ツー) の概要

AMD Phenom II は、AMD社が開発したx64アーキテクチャのマイクロプロセッサです。デスクトップPC向けプロセッサとして、先代のPhenomを45nmプロセスで微細化し、性能向上と機能追加を実現したK10マイクロアーキテクチャ製品群です。

2009年1月にDDR2 SDRAM対応のSocket AM2+版が発売され、同年2月にはDDR3 SDRAM対応のSocket AM3版が登場しました。Socket AM3版では、クアッドコアのPhenom II X4 (Deneb)、トリプルコアのPhenom II X3 (Heka)、デュアルコアのPhenom II X2 (Callisto)が順次リリースされました。2010年4月には、AMD初の6コアプロセッサとなるPhenom II X6 (Thuban)が発売され、ラインナップが拡充されました。モバイル向け製品はTurion IIシリーズに展開されています。

登場までの経緯

Phenom IIは、当初から45nmプロセスでの製造が計画されていました。しかし、初期のPhenomは65nm SOIプロセスで製造され、プロセスルールの最適化が課題となっていました。Phenom IIは、45nmプロセスへの移行によって、高クロック化、L3キャッシュの増量、消費電力（TDP）の改善を実現しました。これにより、先代の65nmプロセス製品と比較して大幅な性能向上が図られました。

市場での展開

Phenom IIは、AMDにとって初の45nmプロセスを採用したデスクトップ向けCPUでしたが、競合のインテルCore 2シリーズから約1年遅れての登場となりました。初期モデルのTDPは125WとPhenomと同等でしたが、プロセス微細化により消費電力は低減されました。メモリコントローラの改良と最適化により、処理速度も向上し、製品としての競争力が高まりました。

2009年1月8日には、倍率変更が可能なPhenom II X4 940 Black EditionとPhenom II X4 920がリリースされました。これらはSocket AM2+に対応し、DDR2 SDRAMのメモリコントローラを搭載していました。その後、2月9日にはPhenom II X4 810と倍率変更可能なPhenom II X3 720 Black Editionが発表され、以降の製品はDDR2/DDR3両対応のメモリコントローラを搭載し、Socket AM2+/AM3の両方に対応しました。

4月2日には、3.2GHzの動作周波数を持つPhenom II X4 955 Black Editionが発売され、AMDデスクトップ向けCPUとして最高周波数を更新しました。その後も、Phenom II X4 945のTDP95W版の追加、3.4GHzのPhenom II X4 965 Black Editionの発売など、ラインナップが拡充されました。

6月2日には、低消費電力版のPhenom II X4 905e、Phenom II X3 705eと、デュアルコアのPhenom II X2 550 Black Editionが発売されました。AMDのデスクトップ向けデュアルコアCPUは、これまでAthlonブランドのみでしたが、Phenom IIシリーズにもデュアルコアモデルが追加されました。

2010年4月27日には、AMD初の6コアCPUとなるPhenom II X6が発表され、Turbo CORE Technologyが搭載されました。同年6月26日には、TDP95W版のPhenom II X6 1055Tが追加されました。

互換性

Socket AM3版のPhenom IIおよびAthlon IIは、DDR3 SDRAMとDDR2 SDRAMの両方に対応するメモリコントローラを内蔵しています。CPUのピン配置はSocket AM2/AM2+と互換性がありますが、ピン数は減少しています。BIOSの対応、供給電圧、消費電力の問題をクリアすれば、Socket AM2/AM2+のマザーボードでも使用可能でした。

一方、Socket AM3のマザーボードには、Socket AM2/AM2+のCPUを搭載することはできません。これは、Socket AM3マザーボードがDDR3 SDRAMのみをサポートしているのに対し、Socket AM2/AM2+のCPUはDDR2 SDRAMのメモリコントローラしか内蔵していないためです。そのため、物理的な形状が異なり、装着できないようになっています。

無効コアの有効化

Phenom II X4の「Deneb」、X3の「Heka」、X2の「Callisto」は、共通の部品を使用しており、X4のコアの一部を無効化することでX3やX2が作られています。これは、製造時の歩留まりを向上させるための戦略です。製造過程で、コアの一部に欠陥があった場合、そのコアを無効化することで、正常な製品として出荷できるようになります。

この共通性を利用し、一部の自作PCユーザーの間では、BIOS設定を変更することで、無効化されたコアを有効化できるケースがあることが報告されています。しかし、無効化されたコアが正常に動作する保証はなく、動作温度が上限値を超える危険性もあるため、メーカーは推奨していません。

製品ラインナップ

以下は主なPhenom IIシリーズのラインナップです。

Phenom II X6 (Thuban)

製造プロセス: 45nm SOI
L1キャッシュ: 64KB (各コア独立)
L2キャッシュ: 512KB (各コア独立)
L3キャッシュ: 6MB (全コア共有)
対応ソケット: Socket AM2+/AM3

Phenom II X4 (Deneb/Zosma)

製造プロセス: 45nm SOI
L1キャッシュ: 64KB (各コア独立)
L2キャッシュ: 512KB (各コア独立)
L3キャッシュ: 4MBまたは6MB (全コア共有)
対応ソケット: Socket AM2+/AM3
ZosmaはThubanのコアを2つ無効化

Phenom II X3 (Heka)

製造プロセス: 45nm SOI
L1キャッシュ: 64KB (各コア独立)
L2キャッシュ: 512KB (各コア独立)
L3キャッシュ: 6MB (全コア共有)
対応ソケット: Socket AM2+/AM3
HekaはDenebのコアを1つ無効化

Phenom II X2 (Callisto)

製造プロセス: 45nm SOI
L1キャッシュ: 64KB (各コア独立)
L2キャッシュ: 512KB (各コア独立)
L3キャッシュ: 6MB (全コア共有)
対応ソケット: Socket AM2+/AM3
* CallistoはDenebのコアを2つ無効化

まとめ

Phenom IIは、AMDのデスクトップ向けプロセッサとして、幅広いラインナップを提供し、ユーザーの多様なニーズに応えました。45nmプロセスへの移行による性能向上に加え、コア数のバリエーションや低消費電力モデルの追加など、製品としての魅力が高められました。

外部リンク

AMD Phenom II
Phenom II 価格設定

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