AMPS

AMPS（Advanced Mobile Phone System）は、1980年代に北米で広く利用されたアナログ方式の第一世代携帯電話システムです。FDD-FDMA-FM方式を採用しており、AT&Tとモトローラによって提案され、北米標準規格となりました。

技術的特徴

AMPSの主な特徴は以下の通りです。

広い周波数間隔: 搬送波の周波数間隔を30kHz（15kHzインタリーブ）と広く取ることで、干渉に対する耐性を高めています。
セル分割: 60°指向性アンテナを使用し、セルを6セクタに分割することで、周波数帯域の繰り返し利用効率を向上させ、空中線電力を有効に利用しています。
アナログ方式の特性: デジタル方式と比較して、電波が遠くまで届きやすいという利点があります。そのため、デジタル方式が利用できない地域でもAMPSの電波が届くことがありました。一方で、電池の持ちはデジタル方式に劣り、SAR（頭部への電磁波放出強度）の値も大きいという欠点がありました。
周波数帯: 主に800MHz帯が使用されました。米国では、連邦通信委員会(FCC)がセルラーバンド(800MHz)事業者に対し、AMPSのサービス維持をバンドライセンスの条件としていましたが、2008年2月までにこの条項は撤廃され、多くの地域でAMPSは利用できなくなりました。2006年以降に製造された端末では、ほとんどAMPSがサポートされておらず、事業者もAMPSのサポートを端末認定の条件から外しています。

TACS

TACS（Total Access Communication System）は、AMPSをベースに英国向けに開発されたシステムです。搬送波の周波数間隔を25kHz（12.5kHzインタリーブ）に変更しており、1984年から1985年にかけて開発されました。TACSは、英国のほか、フランス、スイス、スペイン、シンガポール、中国、香港、アフリカの一部でも採用されましたが、2005年現在、デジタル方式への置き換えが進んでいます。

日本におけるAMPS

日本においては、TACSを基にしたJ-TACS（JTACS）とN-TACSという二つのシステムが採用されました。

J-TACS: DDIセルラーグループ（現KDDI/沖縄セルラー電話連合）が1989年から導入したシステムで、周波数を日本の割り当てに合わせて変更しています。
N-TACS: 搬送波の周波数間隔を12.5kHz（6.25kHzインタリーブ）にして大容量化したシステムです。1991年10月から日本移動通信が首都圏・東海地方でサービスを開始しました。

これらのシステムは、一部地域で高いシェアを獲得していましたが、デジタル方式（PDC/cdmaOne）への移行に伴い、2000年9月30日にサービスを終了しました。これにより、日本における第一世代（アナログ）携帯電話は全て姿を消しました。

AMPSは、初期の携帯電話技術において重要な役割を果たしましたが、技術の進歩に伴い、より効率的で高品質なデジタル方式に取って代わられました。しかし、その技術は、現代の携帯電話システムにも影響を与えています。

日本では、AMPSはモトローラ方式とも呼ばれることがあり、それまでNTTドコモ・日本移動通信で採用されていたNTT大容量方式(Hicap)と対比されることがあります。IDOはサービス開始当初はTokyo Phone、のちにTacs minimo、セルラー各社はセルラーホンと呼ばれていました。最後に発売された端末は、1997年9月に発売された「HP-50T（東芝）」でした。その後、1998年にはcdmaOneとのデュアルモード端末が関西・九州・沖縄地方で発売されました。

関連項目

移動体通信 : 方式間の比較
CDPD

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