AQUA (今井美樹のアルバム)

今井美樹 『AQUA』

今井美樹の13作目となるオリジナル・アルバム『AQUA』は、2001年8月22日にワーナーミュージック・ジャパンよりリリースされました。この作品は、彼女にとって同レーベルからの最後のアルバムとなりました。

概要とサウンドコンセプト

前作『太陽とヘミングウェイ』で打ち出した夏のコンセプトを継承しつつも、本作はサウンド面で大きな転換を見せています。前作が打ち込みを主体としていたのに対し、『AQUA』では固定メンバーによるバンド形式での演奏が採用され、生楽器の持つ豊かな響きやアンサンブルの妙がより際立っています。

プロデュースは、前作に引き続き布袋寅泰が全面的に担当。彼は作曲やギター演奏でも深く関与し、アルバム全体の音楽的方向性を決定づける重要な役割を果たしています。この布袋との密接なコラボレーションが、バンドサウンドへの回帰という変化に強く影響を与えています。

高品質なサウンドへのこだわり

本作の制作において特筆すべきは、その録音・マスタリング技術への強いこだわりです。レコーディング・エンジニアを務めた今井邦彦は、当時約20年ぶりに発表されたスティーリー・ダンのアルバム『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』の非常に高品質なサウンドに深く感銘を受けました。その影響のもと、『AQUA』では当時のCD規格で最高水準とされるデジタル・ハイビット方式での録音を実施。これにより、音楽に含まれる微細なニュアンスや空気感までをも捉えようとする意欲がうかがえます。

さらに、マスタリングは、数多くの著名アーティストを手がけてきた世界的名エンジニア、グレッグ・カルビがニューヨークにあるスターリング・サウンドにて担当しました。国際的なトップクラスの技術者が参加することで、アルバム全体のサウンドクオリティが極限まで高められています。

参加ミュージシャンと楽曲

本作には、日本を代表するベテランミュージシャンが多数参加し、盤石なバンドサウンドを構築しています。ドラムには山木秀夫、ベースには高水健司といったリズム隊の巨匠が名を連ね、ギターには今剛も加わっています。

また、特筆すべきゲストプレイヤーとして、ジャズ界の巨匠サクソフォニスト、渡辺貞夫が名を連ねています。彼は楽曲「FLASHBACK」にアルト・サクソフォーンで参加し、その円熟した演奏で楽曲に鮮やかな彩りを加えています。編曲には、1991年のアルバム『Lluvia』以来、実に10年ぶりに佐藤準が参加しており、これも本作のサウンドに深みを与える要素となっています。その他にも、パーカッションの浜口茂外也、ハーモニカの八木のぶおなど、多彩な顔ぶれが参加しています。

収録曲には、先行シングルとして発表された「潮騒」とそのカップリング曲「猫の唄」が収録されています。アルバムタイトル曲である「AQUA」は、フジテレビ系で当時放送されていた人気番組「金曜エンタテイメント」のエンディングテーマとして使用され、広く親しまれました。

まとめ

『AQUA』は、今井美樹が布袋寅泰とのコラボレーションのもと、夏の情景をテーマにしつつ、サウンドスタイルを刷新した意欲作です。高品質な録音技術と、国内外のトップミュージシャンが集結したバンド演奏により、聴き応えのあるアルバムとなっています。ワーナーミュージック・ジャパンからの最終リリース作品として、キャリアの一つの区切りを示す重要な一枚と言えるでしょう。

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