ARDF

ARDF（アマチュア無線方向探知）とは

ARDF（Amateur Radio Direction Finding、アマチュア無線方向探知）は、屋外に設置された無線送信機（TX）を、受信機を使って探し出す競技です。無線機材を使用するオリエンテーリングと考えるとイメージしやすいでしょう。

概要

ARDFは、オリエンテーリングに似ていますが、無線機を使う点が大きく異なります。また、フォックスハンティングと似ていますが、フォックスハンティングではTXが移動することが多いのに対し、ARDFではTXは固定されていることが一般的です。

電波を扱う競技ではありますが、競技参加者は受信機のみを使用し、電波の発信は行わないため、アマチュア無線技士などの無線従事者資格は必要ありません。受信機には、指向性のあるアンテナ（HB9CV型アンテナ、八木・宇田アンテナなど）が用いられます。

歴史

ARDFの起源は、1926年に「Wireless World」誌に掲載された「隠された送信機を探索する」という記事であると言われています。オリエンテーリングが盛んな北欧、特にスウェーデンでは、1948年に最初の競技会が開催されました。ただし、当時の無線機は現在ほど軽くなく、持ち運びも不便だったため、自転車や自動車などの乗り物が利用されていました。

冷戦時代には、中国がソ連からARDFを導入し、「無線電測向」という名称で競技が開催されていました。これは、中国でアマチュア無線が解禁される前のことです。

日本では、日本アマチュア無線連盟(JARL)が1981年から中国に訪中団を派遣し、JARL NEWS1985年3月号にARDF国際ルールの記事が掲載されました。国際ルールに則って日本で競技が行われたのは、1985年4月28日に群馬県で開催された競技大会であり、1989年にはJARLの主催となりました。また、1990年には従来の「FOXテーリング」という呼称から、国際的に通用する「ARDF」という名称に変更されました。2005年9月19日から23日まで、日本ではじめてとなる国際競技大会、「第6回IARU第3地域ARDF選手権大会」が新潟県阿賀野市で開催されました。

競技ルール

JARLによる競技ルールは、日本の地形に合わせて国際ルールから若干変更されています。国際大会の場合は競技ルールが異なるため注意が必要です。また、JARL制定のルールであり、大会の主催者や審判長の判断により変更されることがあります。

部門・クラス

ARDFの競技部門は、3.5MHz帯部門と144MHz帯部門があり、それぞれがさらに細かくクラス分けされています。クラスによって探索するTXが異なり、審判長が指定した探索対象TXが会場に掲示されます。年齢は大会開催年の12月31日現在で計算されます。

M21及びW21クラスは年齢制限がありません。

フィールド

競技が行われるフィールドは、競技者の健康を害する恐れがなく、探知に著しい影響を及ぼすものがない場所で、かつ高低差が200m以下でなければなりません。競技の制限時間は100～140分で、フィールドの地形に応じて審判長が決定します。

TX（無線送信機）

TXは直線で互いに400m以上離し、スタート地点から750m以上離して設置する必要があります。TXの周辺半径2m以内には、そのTXに到達したことを記録するためのパンチャーとTXの番号が記された三角柱（オリエンテーリングのポストが用いられることが多い）が置かれます。付近には審判員がつき、TXに到達した競技者のゼッケンや順番などを記録しています（小規模な競技会では、審判員がいない場合もあります）。

電波の型式は、3.5MHz帯はA1A、144MHz帯はA2AまたはF2A（最近の競技大会ではA2Aが多い）です。空中線電力は、3.5MHz帯は3～5W、144MHz帯は0.25～1.5Wの範囲内とされています。アンテナは水平方向に指向性がなく、偏波面は、3.5MHz帯で垂直偏波、144MHz帯で水平偏波でなければなりません。各TXにはモールス信号による識別符号があり、TX1がMOE、TX2がMOI、TX3がMOS、TX4がMOH、TX5がMO5です。これらの電波はスタート地点において標準的な受信機で受信できる必要があります。TXの送信は同一周波数で行われます。各TXの送信時間は1分間とし、各TXの送信切替時間の誤差は5秒以内にしなければなりません。

ゴールにはビーコンが設置され、ゴール地区を示します。周波数はTXと異なるものが使用され、MOを送信します。ビーコンも第6番目のTXと考えて、他のTXと直線で400m以上離し、スタート地点から750m以上離して設置することが望ましいとされています。（国際ルールではビーコンはTXと見なされる場合があるため、注意が必要です。）

従来は防水性のパンチカードが用いられていましたが、現在では各TX及びゴール地点にSIと呼ばれる小型カードを用いることが多くなりました。このSIカードはオリエンテーリングで用いられているものと同じです。

競技者

受信機は競技者が持参します。その他に方位磁針、筆記用具、飲料水などもあると良いでしょう。受信機と空中線には制限はありませんが、受信機から副次的に発する電波は、受信機から10m離れた場所において、3.5MHz帯及び144MHz帯に混信を与えるものであってはならないとされています。

競技前には競技者に対し、地図（スタート地点、ビーコン設置点等も記載されている）、ゼッケン、チェックカード（電子パンチャーの場合は代わりに電子チェッカー）が配布されます。地図は競技開始10分前に配布されます。

受信機は一度指定の受信機置き場に置くことになります。この際、一旦受信機置き場に置いた受信機には触れてはなりません。また、スタート後「受信開始地点」と明記された場所まで、TXの電波を受信してはなりません。受信開始地点までは受信機の電源を切り、ヘッドフォンなどはプラグを外すか、耳にかけないようにすることが望ましいです。

競技者はいくつかのスタートグループに分けられ、審判長が決定した順番で5分毎にスタートします。

審判員

審判員は、申請時に満18歳以上であること、ARDF審判員講習会を履修し証明書を有すること、またはこれと同等以上の知識及び経験を有する者とARDF委員会が認めた者でなければなりません。

A級審判員についてはJARL会員である必要があります。資格の有効期間は5年であり、資格者証の有効期限までに競技大会の審判員業務に従事し主催者から証明を受ける、講習会を受講する、JARLの課す更新試験に合格する（前2項のいずれの機会にも恵まれなかった場合に限る。）のいずれかの条件を満たす必要があります。

審判員の区別は以下の通りです。

A級審判員: 満18歳以上でB級審判員として2回以上全日本競技大会又はIARU主催の競技大会の審判員として従事した者。競技大会における審判員、審判長及び裁定長に従事できます。
B級審判員: 上述の審判員たり得る者。競技大会の審判員、公認・支部・地方競技大会の審判長・裁定長に従事できます。
C級審判員: 年齢制限は無く、A級審判員資格者証を有するものが行うC級審判員養成教育を受講し、その受講証明書を有する者。A級又はB級審判員の監督の下に行う業務に従事できます。

このほか、実行委員会を設けることもあります。なお、TXを管理する審判員は、モールス信号による電波の発射を行うため第三級アマチュア無線技士以上またはそれに相当する資格を有していなければいけません。

順位

順位は探索したTXの個数が多い方が上位となり、同数の場合は所要時間が短い方が上位となります。

失格事項

競技中に以下のいずれかに該当した競技者は失格となります。

競技制限時間を超えた場合
ゴール走行ラインを途中から進入した場合、また反対側からゴールした場合
TXを全く探索できなかった場合
援助を受ける、若しくは他の競技者を妨害する場合
乗り物を利用した場合（あらかじめ審判長から許可を受けた場合は除く）
他人の所有物に損害を与えた場合
電波を発射した場合
競技者の間で会話を行った場合
他の競技者を追従して探索を行った場合
主催者が配布する地図以外の地図を使用した場合
立入禁止区域に立入った場合（私有地を含む）
主催者の定めた競技実施方法に従って競技を行わなかった場合

主な注意事項

フェアに行動し、いかなる場合も競技主催者の指示に従うこと。
自己の安全及び健康には、自らの責任で行動すること。競技中に健康に不安を持ったり、事故があった場合は、直ちに競技主催者、又は審判員にその旨を申し出ること。
自然を傷つけたり、耕作地や囲いの中に入らないこと。
送信機及びそのアンテナなどの設備には触れないこと。
ゴールした選手は競技主催者の指示に従って行動すること。

主な地図記号

△印 - スタート地点
◎印 - ゴール地点
Ｗ印 - 給水ポイント

日本における主な競技大会

全日本ARDF競技大会
* 国際競技大会

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