Amazon Web Services

Amazon Web Services (AWS) 解説

Amazon Web Services（AWS）は、Amazon Web Services, Inc. が提供するクラウドコンピューティングサービスであり、2006年のサービス開始以来、IaaS（Infrastructure as a Service）市場で世界シェア1位を誇っています。世界中で数百万、日本国内でも数十万を超える顧客が利用しており、企業システムの基盤としてデファクトスタンダードとなっています。ガートナー社のマジック・クアドラントでは、クラウドインフラストラクチャおよびプラットフォームサービス (CIPS) 部門で12年連続でリーダーに選出されています。

AWS の特徴

AWS は、顧客の要望に基づいたイノベーションを重視しており、サービスや機能の90%以上が顧客からのフィードバックを基に開発・リリースされています。コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、セキュリティ、機械学習、IoT、VR/AR、ロボット工学など、多岐にわたる分野で200を超えるサービスを提供しており、ユーザーはこれらのサービスを組み合わせることで、ニーズに合ったITインフラを迅速に構築できます。特に、サービス開始当初から提供されている Amazon Elastic Compute Cloud (EC2) や Amazon Simple Storage Service (S3) は、AWS を代表するサービスとして広く知られています。

全体アーキテクチャ

AWS は、世界31のリージョンで展開されており、400以上のキャッシュポイント (PoP) を通じて、245の国と地域で安全かつ信頼性の高いサービスを提供しています。各リージョンは複数のアベイラビリティーゾーン (AZ) で構成されており、AZ 間は物理的に離れた場所に配置され、災害時のリスク分散を図っています。東京や大阪などのリージョンを選択することで、日本国内のデータセンターにあるサーバーやストレージを利用できます。通常、すべてのリージョンは同一の AWS アカウントで利用できますが、一部の政府専用リージョンや中国のリージョンは専用アカウントが必要です。

代表的なサービス

EC2 (Elastic Compute Cloud)

EC2 は、仮想サーバー（インスタンス）を提供するサービスです。Nitroアーキテクチャを採用し、ネットワーク、ストレージ、セキュリティなどの周辺機能を専用ハードウェアにオフロードすることで、CPUやメモリ資源を仮想サーバーに最大限に割り当て、高い効率と信頼性を実現しています。メンテナンス作業の多くは仮想サーバーを停止せずに実行でき、停止が必要な場合でも短時間で完了するため、稼働中のサーバーが中断されることはほとんどありません。

S3 (Simple Storage Service)

S3 は、オブジェクトストレージを提供するサービスです。標準設定では、オブジェクトは自動的に3つのAZにコピーされ、99.9999999%の耐久性と99.99%の可用性が保証されます。低レイテンシかつ高スループットであるため、アプリケーション、ウェブサイト、ビッグデータ分析など、幅広い用途に適しています。保存可能な容量は無制限で、1オブジェクトあたり最大5TBまでのサイズに対応しています。

その他のアーキテクチャとサービス

AWS では、シンプルな要件から複雑な要件まで、多様なニーズに対応できるサービスが提供されています。例えば、オンプレミス環境との接続には AWS Direct Connect (DX) を、仮想ネットワークの構築には Amazon Virtual Private Cloud (VPC) を利用できます。ファイルサーバー機能が必要な場合は Amazon Elastic File System (EFS) や Amazon FSx、リレーショナルデータベースが必要な場合は Amazon Relational Database Service (RDS) を利用できます。これらのマネージドサービスを利用することで、サーバーの管理を AWS に任せ、ファイルサーバーやデータベースの機能に集中できます。

また、AWS Lambda のようなサーバーレスサービスを利用することで、プログラムの実行時間に応じて料金が発生するため、利用頻度の低いアプリケーションのコストを削減できます。オンプレミスからの移行にあたっては、AWS が提唱する 7R に基づいて最適な移行方式を選択し、AWS Server Migration Service や AWS Database Migration Service などの移行サービスを利用できます。

セキュリティ

AWS は、セキュリティを最優先事項としており、最高レベルのセキュリティ基準を満たすように設計されています。データ暗号化機能や責任共有モデルを通じて、顧客データの保護を徹底しています。また、セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスに関する300種類以上のサービスと機能を提供し、多数のコンプライアンス認定を取得しています。

価格

AWS の価格はウェブ上で公開されており、無料利用枠も提供されています。AWS Pricing Calculator を使用して、システム構成に基づいた料金を試算できます。EC2 や RDS などのコンピューティングリソース、S3 などのストレージリソースにかかる料金が主なコストとなります。リザーブドインスタンスや Savings Plans を利用することで、EC2 や RDS の料金を最大75%割引できます。また、AWS はサービス開始以来、129回以上の値下げを実施しており、継続的なコスト削減に貢献しています。

歴史

AWS は、2003年に Amazon のサーバーインフラストラクチャの将来展望に関する論文が発表されたことがきっかけとなり、2004年に Simple Queue Service としてサービスを開始しました。2006年には AWS が正式に公開され、EC2 や S3 などの主要サービスがリリースされました。その後、RDS、DynamoDB、Lambda などのサービスが次々と追加され、クラウドコンピューティングのデファクトスタンダードとしての地位を確立しました。近年では、生成AIサービスである Amazon Bedrock や、日本国内へのデータセンター投資など、さらなる進化を続けています。

障害

AWS では、障害が発生した場合に AWS Health Dashboard で状況を確認できます。大規模な障害は稀ですが、アベイラビリティーゾーン (AZ) 単位で発生することがあります。そのため、マルチ AZ 構成を採用することで、障害の影響を最小限に抑えることができます。ハードウェア障害などによる仮想サーバーの停止が発生した場合でも、自動的に新しいサーバーが起動し、データが引き継がれる仕組みが備わっています。

サポートサービス

AWS では、重要度やサポートプランに応じて日本語によるサポートを受けることができます。ベーシック、デベロッパー、ビジネス、エンタープライズの4つのサポートプランが用意されており、Web フォーム、メール、電話、チャットなど、様々な方法で問い合わせが可能です。最上位のエンタープライズサポートプランでは、テクニカルアカウントマネージャー (TAM) がアサインされ、運用をサポートします。

クラウドコンピューティング認定プログラム

AWS クラウドに関する認定試験は、基礎レベルからプロフェッショナルレベル、専門知識レベルまで幅広く提供されています。AWS 認定資格は3年間有効で、資格更新には上位試験または同一試験に合格する必要があります。日経クロステックの調査では、AWS 関連資格が「取得したい IT 資格」として5年連続で1位に選ばれています。

パートナーコミュニティ

AWS は、世界中に数百万の顧客と数万のパートナーを持つ大規模なコミュニティを形成しています。AWS パートナーネットワーク (APN) には、AWS の技術を専門とするシステムインテグレーター (SIer) や、AWS 上での動作をサポートするソフトウェアベンダー (ISV) が参加しています。また、AWS に関する情報をブログなどで提供する利用者が多いことも特徴です。

システムインテグレータとの相性の問題

AWS の導入は、旧来のオンプレミス環境を専門とする SIer にとっては難しい側面があります。AWS を採用すると、ハードウェアやソフトウェアの販売による利益が得られなくなるため、SIer のビジネスモデルに合わない場合があります。しかし近年では、CCOE (Cloud Center of Excellence) を設置し、全社的なクラウド活用を推進する企業も増えています。

スポンサーシップ

AWS は、フォーミュラ1 (F1) やeスポーツなど、様々な分野でスポンサーシップ活動を行っています。F1 では、AWS の機械学習技術を活用したピットインタイミングの予測やタイヤ消耗量の表示などが活用されており、eスポーツでは、競技の統計データの提供やグローバルなライブコンテンツの制作・配信に AWS のテクノロジーが活用されています。

サービス一覧

AWS は、240を超える多様なサービスを提供しています。主要なサービスには、コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、分析、機械学習、セキュリティなどがあります。これらのサービスを組み合わせることで、様々なニーズに対応したシステムを構築できます。

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