CD4

CD4（クラスター・オブ・ディファレンシエーション4）

分子生物学におけるCD4は、ヘルパーT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞など、免疫系を構成する主要な細胞の表面に存在する糖タンパク質であり、細胞表面抗原の一つです。この分子は1970年代後半に発見され、1984年にCD4と正式に命名される以前は、leu-3やT4といった名称で知られていました。ヒトにおいては、CD4遺伝子によってその情報がコードされています。

免疫応答におけるCD4陽性T細胞の役割

CD4を発現するT細胞、一般に「CD4細胞」や「ヘルパーT細胞」と呼ばれる細胞は、ヒトの免疫系にとって不可欠な白血球です。これらの細胞の主な役割は、キラーT細胞（CD8陽性T細胞）など、他の免疫細胞に対して活性化のためのシグナルを送ることです。CD4細胞からの指示を受けることで、CD8細胞は感染した細胞などを効果的に破壊できるようになります。このヘルパー機能が正常に働かないと、免疫応答は著しく低下します。例えば、HIV-1感染症や免疫抑制状態ではCD4細胞が減少し、健常者では起こりにくい日和見感染症にかかりやすくなります。

CD4の機能メカニズム

CD4分子は、T細胞が抗原提示細胞と協調する際に、T細胞受容体（TCR）を介した情報伝達を強化する働きを担います。CD4の細胞内部分は、T細胞活性化のシグナル経路に関わる重要な分子Lckを引き寄せ、TCRからのシグナルを増強します。同時に、CD4の細胞外部分は、抗原提示細胞上のMHCクラスII（MHC-II）分子と直接結合し、T細胞と抗原提示細胞との間の接着を強固にすることで、安定した細胞間相互作用を促進します。

疾患との関連

HIV感染

ヒト免疫不全ウイルス1型（HIV-1）は、宿主細胞であるT細胞に侵入するためにCD4を利用します。ウイルスのエンベロープタンパク質であるgp120がまずCD4に結合し、その構造を変化させます。この構造変化により、gp120は宿主細胞が持つ共受容体（CCR5やCXCR4などのケモカイン受容体）への結合が可能になります。さらに、別のウイルスタンパク質gp41が構造変化を起こすことで、ウイルスは融合ペプチドを細胞膜に挿入し、ウイルスの外膜と細胞膜を融合させて細胞内に侵入します。

CD4細胞数とHIV感染症

HIV感染が進行すると、CD4陽性T細胞の数は徐々に減少します。このCD4細胞数は、HIV感染症の病期を評価し、抗レトロウイルス療法を開始するタイミングを決定するための重要な指標の一つです。正常な成人のCD4細胞数は、血液1マイクロリットルあたり500から1200個程度とされています。CD4細胞数の測定は、患者の免疫系の機能状態を把握し、治療効果をモニタリングするために用いられますが、これはウイルスそのものを検出する直接的なHIV検査ではありません。

その他の関連疾患

ヘルパーT細胞由来の腫瘍、例えば末梢性T細胞リンパ腫などでは、ほとんどの場合CD4が発現しています。このため、組織サンプルにおけるCD4の免疫組織化学的検査は、これらの悪性疾患の診断や分類に有用です。また、CD4は尋常性白斑や1型糖尿病といった自己免疫疾患を含む、様々な病態との関連が報告されています。

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