D-Bus

D-Bus（Desktop Bus）は、アプリケーション間の連携を円滑にするための重要なプロセス間通信（IPC）メカニズムです。メッセージバスの仕組みを利用し、アプリケーションが互いに情報を交換し、協調して動作することを可能にします。この技術は、特にLinux環境において、デスクトップアプリケーションの統合や、システムとアプリケーション間の連携に不可欠な役割を果たしています。

D-Busの起源と進化

D-Busのルーツは、KDEの初期バージョンで採用されていたDCOPというIPC実装にあります。KDE4以降ではD-Busが採用され、さらにGNOMEもBonoboからD-Busへ移行するなど、主要なデスクトップ環境でその採用が進みました。Linuxシステムにおいては、udevによるデバイスのマウント通知にもD-Busが利用され、X.Org Serverでは設定の動的な変更をD-Busを通じて行うことが可能です。

D-Busの特長

D-Busの大きな特徴は、その軽量性と低依存度にあります。さまざまなプログラミング言語とライブラリ（C, Java, C++, C#, Python, Ruby, Perl, GTK, Qt, Maemo）に対応しており、広範な開発環境で利用できます。また、Unix系OSだけでなく、Windows版（winDBus）も開発されており、クロスプラットフォームな利用が可能です。

D-Busの機構

D-Busのメッセージ管理は、D-Busデーモン（dbus-daemon）によって行われます。システム全体を管理するデーモンと、ログインセッションごとに存在するデーモンの2種類が存在します。システムデーモンは、プリンタの追加やデバイスの変更といったシステムレベルのイベントを通知し、セッションデーモンは、デスクトップアプリケーション間の通信を担います。デーモンとアプリケーション間の通信にはソケットが利用されます。

D-Busのアーキテクチャ

D-Busは、以下の3つのレイヤーで構成されています。

1. libdbus: アプリケーション間のメッセージ交換を可能にするライブラリです。
2. dbus-daemon: libdbus上に構築されたメッセージバスデーモンで、複数のアプリケーションが接続し、メッセージの配信を行います。出版-購読型モデルの実装も可能です。
3. アプリケーションフレームワークに基づくラッパーライブラリ: 特定のアプリケーションフレームワーク向けに、D-Busの利用を容易にするライブラリです。

D-Busは、同一デスクトップセッション内のアプリケーション間通信と、デスクトップセッションとOS間の通信という2つの主要な利用ケースを想定して設計されています。これにより、デスクトップ環境の統合と、システムとアプリケーションの連携を強化しています。

D-Busを利用するソフトウェアの例

• - HAL（Hardware Abstraction Layer）: ハードウェアの変更をアプリケーションに通知します。
• - notification-daemon: X Window Systemのイベントをアプリケーションに通知します。
• - BlueZ: LinuxおよびAndroidで動作するBluetoothスタック。

これらのソフトウェアは、D-Busを活用することで、システムとアプリケーション間のスムーズな連携を実現しています。

関連情報

• - freedesktop.org

外部リンク

• - 公式ウェブサイト
• - ソースコード
• - D-Bus 仕様
• - D-Bus Tutorial (英語)
• - IBM D-BUSを使用してデスクトップ・アプリケーションを接続
• - D-BUSのWindowsポーティング (英語)
• - NokiaのLinux開発環境(Maemo)のチュートリアル (英語)
• - MeeGo wiki D-Busオーバービュー (英語)

D-Busは、現代のLinuxシステムにおいて、アプリケーション間の連携を支える重要なインフラストラクチャです。その柔軟性と効率性により、デスクトップ環境から組み込みシステムまで、幅広い分野で利用されています。

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