Doomの公式版

DOOM公式移植版の歴史：MS-DOSから現代プラットフォームまで

1993年12月10日、id SoftwareによってMS-DOS向けにリリースされた『DOOM』は、ファーストパーソンシューティングゲーム（FPS）の歴史を塗り替える金字塔となりました。その衝撃的なグラフィックとゲーム性、そして何よりPCゲーム市場の隆盛に大きく貢献した本作は、その後数多くのプラットフォームへと移植され、世界中に衝撃を与え続けています。本稿では、MS-DOS版以降の公式移植版について、それぞれのプラットフォームにおける特徴や開発の経緯、そして評価までを詳細に解説します。

PCプラットフォーム

MS-DOS版

初期のMS-DOS版は320x200ピクセルの解像度で、1.0バージョンから1.9バージョンまで、幾度かのアップデートを経て改良が重ねられました。バグ修正はもちろん、ネットワーク対戦機能の追加や難易度調整など、プレイヤー体験の向上に繋がるアップデートが提供されました。1.666バージョンでは、問題となった特定マップの卍パターンも変更されています。

The Ultimate DOOM

1995年4月30日には、オリジナルの3エピソードに加え、新たなエピソード「Thy Flesh Consumed」を追加したアップグレード版『The Ultimate DOOM』がリリースされました。これは、DOOM体験をより深く、より長く楽しめる拡張版として高い評価を得ました。

NeXTSTEP版

id Softwareが開発にNeXTcubeを使用していたことから、NeXTSTEP版も登場しました。PC版と比べてサウンド面で一部の欠落がありましたが、当時としては高性能なNeXTcubeの性能を活かし、スムーズな動作を実現しました。

OS/2版

IBMに雇われた独立請負業者によって移植されたOS/2版は、1994年にOS/2 PMウィンドウでの動作デモが行われ、1997年には最終バージョン2.19 betaがリリースされました。

IRIX版

1994年夏にIRIX向けに、そしてその後Solaris向けにも移植されました。いずれもソフトウェアレンダリングにより、当時のワークステーション環境でDOOMをプレイ可能にしました。

Mac OS版

1994年11月4日にリリースされたMac OS版は、System 7からMac OS 9まで対応し、ネットワーク対戦にも対応していました。ただし、Mac OS X PantherとTigerでは、グラフィックアーティファクトが発生することがありました。

Linux版

1994年にid Softwareのプログラマーによって移植されたLinux版は、1997年12月23日にソースコードが公開されました。これは、DOOMの普及に大きく貢献する要因となりました。

Microsoft Windows版

「DOOM 95」として1996年8月20日にリリースされたWindows版は、Windows 95以降に対応し、MS-DOS版のWADを使用可能でした。マルチプレイヤー設定も容易になり、より多くのユーザーがDOOMをプレイする機会が得られました。その後、『DOOMコレクターズエディション』や『DOOM 3 BFG Edition』などを通して、様々なDOOM作品がWindowsで楽しめるようになりました。Steamでも販売され、DOSBoxによるMS-DOS版のエミュレーションも提供されています。

Acorn RISC OS版

1998年にR-Comp InteractiveによってAcorn Risc PC向けにリリースされ、その後強化版「DOOM+」も提供されました。これは、Acorn Archimedesコンピュータでも動作するように最適化されたバージョンであり、独自の機能強化が加えられていました。

家庭用ゲーム機

セガ32X版

1994年11月21日にリリースされたセガ32X版は、ステージ数が削減され、マルチプレイヤー非対応など、多くの制限がありました。サウンドもオリジナル版から劣化しており、評価は低めでした。

Atari Jaguar版

1994年11月28日にリリースされたAtari Jaguar版は、PC版に比べステージが簡略化されていましたが、フルスクリーン表示に対応しており、比較的高い評価を得ています。

Super NES版

Sculptured Softwareが開発し、1995年9月1日にリリース。スーパーFXチップを活用したグラフィックでしたが、ハードウェアの制約から、グラフィックや操作性で批判が相次ぎました。

PlayStation版

1995年11月16日にリリースされたPlayStation版は、高評価を得た移植版です。DOOM IIのステージや追加ステージなども収録され、改良されたグラフィック、サウンド、操作性が高く評価されました。

3DO版

1996年にリリースされた3DO版は、低フレームレートや劣悪なグラフィックなどから酷評されました。

セガサターン版

PlayStation版をベースにしたセガサターン版は、フレームレートの低下やグラフィック要素の欠如などから、PlayStation版を大きく下回る評価に終わっています。

ゲームボーイアドバンス版

2001年、2002年にそれぞれ『DOOM』と『DOOM II』のGBA版がリリースされました。携帯機への移植としては画期的でしたが、検閲により一部要素が変更されています。

Xbox版

2005年リリースの『DOOM 3』限定版に同梱されたXbox版は、Xbox Live非対応ながら、PC版の全ステージを収録していました。

Xbox 360版

2006年にXbox Liveアーケードで配信され、Xbox Live対応のマルチプレイヤーモードが搭載されました。その後、マーケットプレイスから削除された後、再配信されました。

その他のプラットフォーム

Tapwave Zodiac、iOSなど、様々なプラットフォームへの移植が行われ、DOOMは時代を超えて愛され続けています。

まとめ

『DOOM』の公式移植版の歴史は、技術革新とゲーム開発の進化を如実に示しています。各プラットフォームにおける移植版の差異を比較することで、その時代の技術的制約や、開発者の創意工夫を垣間見ることができます。また、移植版の評価を見ることで、ユーザーが求めるゲーム体験や、技術的な進化がどのように受け止められてきたのかを知ることができ、大変興味深いものです。今後も、DOOMシリーズは新しいプラットフォームで進化を続け、新たなゲーム体験を提供し続けるでしょう。

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