EFT

EFT（感情解放テクニック）とは

EFT（Emotional Freedom Techniques、感情解放テクニック）は、代替医療、民間セラピー、自己啓発法の一種です。中国医学の鍼治療、神経言語プログラミング、エネルギー療法、思考場療法（TFT）など、様々な理論を取り入れています。

鍼治療で鍼を刺す経穴を、指でタッピングして刺激するのが特徴です。1990年代後半にゲイリー・クレイグが出版した『EFT Handbook』や、支持者による書籍、ワークショップを通じて広まりました。EFTは、同様のテクニックとともに「エネルギー心理学」の一つとして議論されることがあります。

日本では、「エモーショナル・フリーダム・テクニック」「感情解放テクニック」などと訳されています。

方法

EFTは、感情的な問題の治療に用いられるとされています。具体的な手順は以下の通りです。

1. リッカート尺度を用いて、感情的な反応の強さを評価します。
2. 「セットアップフレーズ」「リマインダーフレーズ」と呼ばれる文章を読み上げながら、特定の経穴をタッピングします。
3. 感情の強さを再度測定し、変化を確認します。

EFTの支持者は、このテクニックによって身体的・心理的な不調を広く治療できると主張しています。また、自分自身で手軽に行えるセラピーであるともされています。

議論と批判

21世紀初頭には、EFTは一般的に疑似科学とみなされ、臨床心理学では支持されていませんでした。2013年のレビューでは、EFTにプラセボを超える効果は認められないと結論付けられました。

しかし、近年ではEFTの有効性を示す研究も発表されています。2016年から2017年のシステマティック・レビューでは、複数のランダム化比較試験（RCT）で不安、うつ病、PTSDに対する有効性が確認されました。また、メタアナリシスでは、偽のタッピングよりも真のタッピングの方が高い効果を示すという結果も出ています。

一方で、懐疑的な意見も根強く存在します。

2000年に雑誌『Skeptical Inquirer』は、反証可能性の欠如、症例への依存、インターネットでの宣伝などを理由に、EFTを疑似科学に分類しました。
EFTの創始者であるクレイグは、経穴のタッピングが経路のエネルギーの流れを操作し、混乱を解放すると主張していますが、懐疑主義者は、そのような議論はEFTを科学的に検証できないものにしていると批判しています。
『Skeptic's Dictionary』やQuackwatchは、EFTの前身である思考場療法（TFT）とともに、EFTを避けるよう警告しています。
2006年にデルファイ法を用いてEFTを評価した結果、5段階中3.8というスコアが出ました。これは「おそらく信用に値しない」と評価できるスコアです。
* 2013年の精神医学ハンドブックでは、EFTには「疑似科学のすべての特徴」があるとされました。

EFTの効果は、経穴をタッピングすることによる「エネルギー経路」の操作ではなく、より伝統的な治療法と共通する特徴によるという考え方もあります。また、体をタッピングする動作が、気を紛らわせてストレスを緩和する効果があるという指摘もあります。

研究品質

2013年の批判的吟味では、EFTの有効性は質の高い研究では確認されていないと結論付けられました。

しかし、2016年のシステマティック・レビューでは、EFTに不安を減少させる効果が確認され、2017年のレビューではPTSDに対する有効性が確認されました。また、偽のタッピングよりも真のタッピングの方が高い効果を示すというメタアナリシス結果も出ています。

EFTとEMDRを比較した研究では、どちらの治療法でも同様の改善が見られましたが、臨床的な変化はEMDRの方がわずかに高いという結果でした。

EFTに関する肯定的な研究は、一部の学術誌に掲載されています。

結論

EFTは、その有効性について賛否両論があるセラピーです。近年では、不安、うつ病、PTSDに対する効果を示す研究も発表されていますが、懐疑的な意見も根強く存在します。EFTを試す際は、これらの情報を踏まえた上で、慎重に判断することが重要です。

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