EM chip

EM chip（エムチップ）とは

EM chipは、かつてイー・モバイル（現ソフトバンク）が提供していたデータ通信サービスで使用されていたUIMカードの一種です。形状は、NTTドコモのFOMAカードなど、他社のUIMカードと同様の形状をしています。

EM chipの概要

2007年12月12日、下り最大7.2Mbpsのサービスに対応した端末「D02HW」の登場に合わせて、EM chipの差し替えによる利用端末の切り替えが可能になりました。これにより、ユーザーはより柔軟に端末を利用できるようになりました。

ただし、ソフトバンク回線を利用するEMOBILE 4G-S契約では、「EMOBILE 4G-S USIMカード」という別のUIMカードが使用されていました。ワイモバイル（ソフトバンク）に移行後、タイプ1契約ではEMOBILE 4G-S USIMカードと同等のカード（m101）が、タイプ2契約ではEM chipと類似したY!mobileロゴ入りのカード（m06）が使用されました。

2015年9月30日をもって、旧イー・アクセスと旧ウィルコム契約のプランの新規受付が停止されたため、EM chipの新規発行はできなくなりました。カードの不具合による再発行のみ対応していましたが、旧イー・アクセスの3Gネットワークが2018年1月末に停波したことに伴い、再発行も不可能になる見通しです。

EM chipの色による違い

EM chipには、データ通信用と音声通話用の2種類があり、それぞれ色で区別されていました。データ通信用はIC端子面が赤色、裏面が白色で、音声通話用はIC端子面が黒色、裏面が白色でした。後継のワイモバイルでは、色が赤に統一され、種類は番号で識別されるようになりました。

製造元は、ジェムアルト（日本法人）、大日本印刷、オベルチュール・テクノロジーズ（日本法人）の3社です。EMOBILE LTE契約の場合、裏面にLTEと表示されており、音声端末用の黒色のカードとは異なる仕様でした。また、「EM chip 」というカードサイズが通常の半分程度のものも存在しました。

データ通信用EM chipの中には、製造ロットによって海外ローミングに対応していないものがありました。この場合、カスタマーセンターへの申し込みやワイモバイルショップでの手続きで無償交換が可能でした。音声端末用については、最初から海外ローミングに対応しており、利用を希望しない場合は、カスタマーセンターへ連絡することで停止できました。

EM chipの制約と特徴

EM chipは、機能的には他社のUIMカードとほぼ同一ですが、イー・モバイルのサービスが発展途上であったことや、UMTSの周波数帯バンド9のみを使用しているという制約がありました。そのため、以下のような特徴や制約がありました。

従来は、端末購入を伴わないEM chipのみの新規契約はできませんでしたが、東日本電信電話が光ポータブル利用者向けにレンタル提供するSIMフリー端末の提供に併せ、データ用EM chipの単体契約が可能になりました。その後、3G契約についてはデータ・音声ともに単体契約が可能になりましたが、LTE向けEM chip（EM chip LTE）については、現在も単体契約はできません。
当初、国際ローミングサービスを提供していなかったため、EM chipをGSM端末に挿して海外で使用することはできませんでした。
S11HT,S21HT,S22HT,H11HW,H12HWなどの端末では、海外利用時にEM chipを取り外して現地のSIMカードを取り付けて利用することが可能でした。これは、音声サービス開始当初に国際ローミングを提供していなかったことと、海外仕様のUIMカードに対してSIMロックを付けていなかったためです。
データ端末ではD41HW以降、音声端末ではS31HTおよびS31HW以降に発売された端末については、SIMフリー状態で発売されていました。
国内で他社のUMTSネットワークを利用できるのは、国内ローミングに対応するH11Tのみでした。H31IA,S22HT,H11LCについては、国際ローミング利用時に限り2GHz帯UMTSを利用できました。また、S51SEおよびGS01利用時には、UMTSバンド8（900MHz帯）が利用できました。
赤いEM chipの番号にかけた場合、一般の未使用番号と同様に「現在使われておりません」というアナウンスが流れるだけで、NTTドコモのDoPaのようなガイダンスはありません。

まとめ

EM chipは、イー・モバイルのデータ通信サービスを支えた重要な要素でした。その色や種類、そして運用上の制約は、当時の通信環境を反映しています。現在では新規発行が終了していますが、その歴史は、モバイル通信の進化を語る上で欠かせないものとなっています。

関連項目

SIMカード
UIMカード

註釈

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