FOMAハイスピード

FOMAハイスピード：日本のモバイル通信を加速させた高速データ通信サービス

NTTドコモが2006年8月に開始したFOMAハイスピードは、日本のモバイル通信の歴史において重要な役割を果たしたサービスです。最大受信速度14Mbpsという当時としては驚異的な速度を実現し、モバイルインターネットの利用を飛躍的に向上させました。本稿では、FOMAハイスピードの概要、競合他社の動向、サービスの沿革、料金体系、エリア展開、対応端末、そしてその背景にある事情について詳しく解説します。

サービス概要

FOMAハイスピードは、第3.5世代移動通信システムに分類される高速データ通信サービスです。通信方式には、FOMAで用いられていたW-CDMA方式と完全上位互換性を持つHSDPA方式、そして高速なデータ送信を可能にするHSUPA方式を採用していました。最大受信速度は、サービス開始当初は3.6Mbpsでしたが、その後7.2Mbps、そして最終的には14Mbpsにまで向上しました。最大送信速度も、初期の384kbpsから5.7Mbpsに高速化されました。この高速化により、大容量データの送受信や高品質なストリーミングサービスの利用が可能となり、モバイルインターネットの利用体験を大きく変えました。

競合他社の動向

FOMAハイスピードの登場は、日本のモバイル通信業界に大きな変革をもたらしました。当時、au（KDDI）はCDMA 1X WIN、SoftBankモバイルは独自の3Gサービスを提供していましたが、FOMAハイスピードはこれらのサービスを速度面で凌駕しました。特に、auのCDMA 1X WINの最高受信速度が当時2.4Mbps（後に3.1Mbpsに高速化）だったのに対し、FOMAハイスピードはこれを大きく上回る速度を提供したことは、競争において大きなアドバンテージとなりました。その後、他社もHSDPA方式や、それ以上の速度を持つHSPA+方式を採用した高速データ通信サービスを導入し、競争は激化していきました。イー・モバイル（現在のY!mobile）もHSDPA方式による高速サービスを提供し、一部地域ではNTTドコモへのローミングを実施していました。

サービスの沿革

FOMAハイスピードは、2006年8月31日に商用サービスが開始されました。最初の対応端末はN902iX HIGH-SPEEDで、最高受信速度は3.6Mbpsでした。その後、7.2Mbps、そして14Mbpsに対応するサービスへと進化を遂げ、多くの機種がFOMAハイスピードに対応しました。サービス開始と同時にiモーションの容量拡張や「ミュージックチャネル」サービスの開始など、高速通信を活かした新サービスも展開されました。2008年には人口カバー率100％を達成し、顧客満足度調査で1位を獲得するなど、大きな成功を収めました。

料金体系

FOMAハイスピードの料金体系は、基本的にはFOMAと同じ料金プランが適用され、「パケ・ホーダイ」などのパケット定額制サービスも利用可能でした。PC向けには「定額データプランHIGH-SPEED」が提供され、定額料金内で一定量のデータ通信が利用できました。また、2年間の利用を約束することで料金を割引く「定額データ割」や、初期料金を低くした「定額データスタンダード割」なども導入されました。ただし、定額データプランでは、ストリーミング動画やファイル交換サービスの利用制限があった点に注意が必要です。

エリア展開

FOMAハイスピードは、「FOMAハイスピードエリア」と呼ばれるエリア内で利用可能でした。サービス開始当初は主要都市が中心でしたが、2008年12月には人口カバー率100％を達成しました。エリア拡大にあたっては、既存のFOMAエリアをベースに順次拡大する戦略がとられました。

対応端末

多くの携帯電話、スマートフォン、データ通信端末、そしてノートパソコンなどがFOMAハイスピードに対応しました。対応端末は、ドコモの各シリーズ（with series、NEXT series、STYLE seriesなど）の機種、そして他社製の端末なども含め多岐に渡ります。また、一部のタブレット端末やモバイルルーターなども対応していました。

FOMAハイスピードの背景

FOMAハイスピードが開始された背景には、当時のFOMAの通信速度が競合他社に比べて遅く、通信単価も高かったという事情がありました。特に、2004年に開始された「パケ・ホーダイ」によるパケット通信の増加や、大容量コンテンツの増加を背景に、高速化のニーズが高まっていたのです。

まとめ

FOMAハイスピードは、日本のモバイル通信を大きく前進させた画期的なサービスでした。その高速な通信速度と広いエリアカバー率は、モバイルインターネットの普及に大きく貢献し、現代のモバイル社会の礎を築きました。多くのユーザーに快適なモバイル通信を提供したFOMAハイスピードは、モバイル通信史における重要な一頁を飾っています。

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