FOUR BY FOUR

4×4 FOUR BY FOUR

日本のを代表するフュージョンバンド、カシオペアが1982年にリリースした通算8枚目のオリジナル・アルバム、それが『4×4 FOUR BY FOUR』です。本作は、彼らが当時来日を控えていた世界的なギタリスト、リー・リトナー率いるグループとの共演によって生まれた、非常にユニークなセッション・アルバムとして知られています。

このプロジェクトの最大の特徴は、その制作過程にあります。カシオペアのメンバー4人（野呂一生、向谷実、櫻井哲夫、神保彰）と、リー・リトナー・グループの主要メンバー4人（リー・リトナー、ドン・グルーシン、ネイザン・イースト、ハーヴィー・メイソン）が集結。レコーディングは、それぞれのパートを担当するメンバーが対面する形で行われました。驚くべきことは、事前のリハーサルが一切行われず、すべての演奏がわずか9時間という驚異的なスピードで完了したという点です。アルバム・タイトルである『4×4』は、カシオペアとリー・リトナー・グループからそれぞれ4人ずつ、計8人のミュージシャンがこのセッションに参加したことに由来しています。

ただし、実際に8人全員が同時に演奏に参加した楽曲は、カシオペアのアルバム『CROSS POINT』収録曲のリメイクである「ギャラクティック・ファンク」のみです。この「ギャラクティック・ファンク」を除く他の楽曲では、ベーシストとして櫻井哲夫かネイザン・イーストのいずれか一人が担当するという形が取られています。また、リー・リトナーが特別に書き下ろした楽曲「トランスアトランティック」では、櫻井哲夫とハーヴィー・メイソンを除く6人のメンバーによって演奏されるなど、曲によって参加メンバーの組み合わせが柔軟に変化しているのも聴きどころの一つと言えるでしょう。

各楽曲にも個性的なエピソードや聴きどころがあります。「ミッド・マンハッタン」は、ドラマーの神保彰がニューヨーク旅行から帰国した直後に、その時の街のイメージを音楽として表現した楽曲です。この曲では、神保彰とハーヴィー・メイソンのツイン・ドラムによる白熱したバトルが展開され、その後のライブでも定番の人気曲となりました。また、自動車用品店のテレビCMソングとして使用されたことでも広く知られています。「亡き王女のためのパヴァーヌ」と「カウアイ」では、ギタリスト野呂一生がフレットレス・ギターをフィーチャーし、メロディックで表情豊かな演奏を披露しています。

本作に収録された「ギャラクティック・ファンク」は、既発のバージョンに新たなイントロが付加されており、よりスリリングで期待感を煽る幕開けとなっています。この曲のソロオーダーも特筆すべき点で、キーボードソロは向谷実とドン・グルーシンが4小節をそれぞれ4回、その後2小節を2回ずつ交互に担当。ギターソロも同様に野呂一生とリー・リトナーが4小節を4回、2小節を2回ずつ交替します。そしてリズムセクションでは、神保彰とハーヴィー・メイソンによる8小節のツインドラムの後、櫻井哲夫、神保彰、ネイザン・イースト、ハーヴィー・メイソンの4人が2小節ずつめまぐるしくソロをリレーするなど、参加メンバーの個性がぶつかり合うスリリングな展開が楽しめます。

参加ミュージシャンは以下の通りです。

CASIOPEA:
野呂一生 - ギター (YAMAHA SG-2000, SG-1000 Fretless, アコースティック・ギター)、パーカッション
向谷実 - キーボード (YAMAHA GS-1, CS-70M, CP-35, Oberheim OB-Xa, Moog the SOURCE)
櫻井哲夫 - ベース (YAMAHA BB-2000 Milk Bass)、パーカッション
神保彰 - ドラム (YAMAHA YD-9000R)、パーカッション

Lee Ritenour Group:
リー・リトナー - ギター (Ibanez、Fender Stratocaster, Ovation Nylon Strings、アコースティック・ギター、クラシック・ギター)
ドン・グルーシン - キーボード (ピアノ、YAMAHA CP-80, Oberheim OB-Xa, Rhodes)
ネイザン・イースト - ベース (YAMAHA BB-2000, Roland GR-33B)
ハーヴィー・メイソン - ドラム (Premier Sound Wave Custom)、マリンバ

また、本作の制作には以下のスタッフが携わっています。

プロデューサー - 宮住俊介
アソシエート・プロデューサー - Satoshi Nakao
レコーディング・ミキシングエンジニア - 吉沢典夫
アシスタント・エンジニア - 齊藤篤、三好シンジ
マスタリング・エンジニア - Osamu Shimoju
ミキシング - 吉沢典夫、野呂一生
アートディレクション、デザイン - Nao Magami, Shinya "SHAR" Asami
イラストレーション - Shinya "SHAR" Asami
* リマスタリング - 鈴木浩二 (2016年 ハイレゾ版)

『4×4 FOUR BY FOUR』は、日米を代表するフュージョン・ミュージシャンたちが、限られた時間の中で最高のパフォーマンスを発揮した、まさにセッション・アルバムの金字塔と言えるでしょう。その場で生み出される緊張感と創造性が凝縮されたサウンドは、発表から時を経た現在でも多くの音楽ファンを魅了し続けています。

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