HD 40307 d

HD 40307 d

HD 40307 dは、地球からおよそ42光年離れたがか座の方向にある恒星、HD 40307の周囲を回る太陽系外惑星の一つです。2008年に、この惑星系で発見された複数の惑星のうちの一つであり、特にその系の中では最も大きな質量を持つことが判明しています。

発見の経緯

この惑星は、チリにあるヨーロッパ南天天文台のラ・シヤ天文台に設置された高精度視線速度系外惑星探査装置（HARPS）を用いて発見されました。HARPSは、惑星が主星に与える重力的な影響によって生じる恒星の視線速度（地球から見た恒星が近づいたり遠ざかったりする速度）のわずかな変化を精密に測定する、ドップラー分光法（視線速度法）という手法を利用します。

HD 40307 dの発見は、同じ恒星の周りを公転する他の惑星、HD 40307 bとHD 40307 cがHARPSによって先行して検出された後に行われました。これらの内側の惑星と共に、HD 40307 dの存在は2008年6月、フランスのナントで開催された天文学会で初めて公式に発表されました。その後、さらに外側を公転するHD 40307 e、HD 40307 f、そして後にハビタブルゾーン内にある可能性が指摘されたHD 40307 gも発見され、HD 40307系は多惑星系として知られるようになりました。

軌道と物理的特性（推定）

HD 40307 dは、少なくとも地球質量の9.5倍という下限質量を持つことが分かっています。これは、HD 40307惑星系の中で最も重い惑星であることを意味します。現在のところ、この惑星系を構成する全ての惑星は、ほぼ同一平面上の軌道を公転していると考えられています。

主星HD 40307からの平均距離は約0.1321天文単位（au）であり、これは太陽から水星までの距離よりもわずかに遠い程度です。この比較的近い軌道のため、HD 40307 dの公転周期、すなわち「1年」は約20.45地球日と非常に短くなっています。軌道の形状を示す軌道離心率については、現在の観測データからはほぼ0に近い値が示されており、完全な円軌道と区別するに足る精度は得られていません。

主星HD 40307と惑星形成

HD 40307という恒星は、惑星を持つ他の多くの恒星と比較して、金属量（ヘリウムよりも重い元素の割合）が比較的低いという特徴を持っています。この事実は、天文学者たちの間で議論されている惑星形成に関する重要な仮説を支持する証拠として注目されています。その仮説とは、「原始星が誕生する際に含まれる金属の量が、その周囲の降着円盤内で形成される惑星の種類（例えば、木星のような巨大ガス惑星か、地球のような岩石惑星か）を決定する主要な要因の一つである」というものです。HD 40307系のような低い金属量の恒星の周りで惑星が見つかることは、この説を検証する上で貴重な事例となります。

観測と特徴

HD 40307 dは、その軌道が地球から見て主星の手前を通過する「トランジット」を起こさないため、直接観測や撮像による詳細な観測はこれまでのところ行われていません。このため、惑星の正確な半径、内部組成、表面温度といった詳細な物理的性質は未だ決定できていません。

しかし、HD 40307 b、c、dといった内側の惑星たちの軌道運動を詳細に分析した動的な観測から、少なくともbとcには主星からの強い潮汐力が作用していることが示唆されています。これらの惑星の特性や、系内の他の内側惑星（bから少なくともfまで）が形成された場所から現在の位置まで内側へ移動してきた可能性が指摘されていることから、HD 40307 dもまた、海王星に近い質量や組成を持つ「準海王星型惑星」である可能性が高いと考えられています。

また、強い潮汐力は、主星の近くを公転する惑星の周囲にある大きな天然衛星を破壊してしまう傾向があります。このため、HD 40307 dも大きな衛星は持たない可能性が高いと推測されています。

今後の観測技術の進歩により、HD 40307 dを含むこの興味深い惑星系の更なる詳細が明らかになることが期待されています。

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