He 118 (航空機)

He 118: ハインケル社の急降下爆撃機の歴史

He 118は、第二次世界大戦前にドイツの航空機メーカーであるハインケル社によって試作された、急降下爆撃機です。この機体は、他の航空機と競作を行った結果、最終的には不採用となる運命を辿りましたが、その開発過程には多くの技術的挑戦と歴史的背景が存在します。

機体の概要

ドイツ空軍省は、効果的な急降下爆撃機の開発を目指し、アラド社、ハインケル社、ブローム・ウント・フォス社、ユンカース社に試作を依頼しました。その中でハインケル社は、既存のHe 112戦闘機を基にHe 118の開発に着手しました。1935年冬には初飛行を成功させ、その後1936年春からの試験飛行に向けた準備が整いました。

He 118は、全金属製の機体構造を持ち、楕円形の逆ガル式主翼が特徴です。また、主脚は外側に引き込む形式で、ダイブブレーキ機能を持つフラップを装備していました。爆弾は後部座席下の爆弾倉に搭載し、特殊な投下アームを使って安全に投下することができました。これらの設計は、急降下爆撃機としての役割を果たすために工夫されていました。

パフォーマンスの評価

試作機は異なるエンジンを搭載した3機が製作され、1936年6月にユンカースJu 87との性能比較が行われました。この評価では、Ju 87が安定した降下性能を示し、降下角度も優れていました。それに対し、He 118は最大降下角が50度に制限されており、運動性能も劣っているとの結果が出ました。その後、エルンスト・ウーデットによるテスト飛行中に事故が発生し、操縦困難な状況になり墜落しました。この経験がHe 118の運用可能性にさらなる疑問を投げかけました。

He 118は速度性能では優れていたものの、全体的な性能が他の競合機に劣ったため、最終的に不採用の決定が下されました。試作機は5台までが製造されたものの、1937年には7機の量産型が発注され、一部は飛行学校での訓練用に使用されました。

日本への輸出

1938年、日本ではHe 118の第4号機（V-3）が陸軍に、第5号機（V-4）が海軍に売却されました。日本陸軍では軽爆撃機の開発において参考資料として利用され、そのエンジン配置などの技術が九八式軽爆撃機に活かされました。また、日本海軍では艦上爆撃機としての適性を試験しましたが、機体の大きさと運動性能の不足により、結局採用は見送られました。しかし、後に開発された新型艦上爆撃機彗星の設計において重要なデータとなりました。

なお、日本海軍のV-3は1938年7月上旬に急降下試験中に空中で分解し、パイロットは殉職する事故がありました。

スペック

全長: 11.8 m
全幅: 15.09 m
全高: 4.18 m
全備重量: 4,120 kg
エンジン: ダイムラー・ベンツ DB600C 850 hp × 1
最大速度: 394 km/h
航続距離: 1,050 km
武装: 7.92 mm MG 17機関銃（機首固定機銃）×2、7.92 mm MG 15機関銃（後方旋回機銃）×1、爆弾500 kg
乗員: 2名

関連項目

爆撃機一覧
Ju 87
彗星

He 118は、その性能や試作機の経歴を通じて、航空機開発の歴史における重要なエピソードとなっています。

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