He 178 (航空機)

ハインケル He 178の概要

ハインケル He 178（Heinkel He 178）は、ドイツの航空機メーカーであるハインケル社が開発した、世界初のターボジェット推進機です。この機体は、プロペラを用いない航空機としては、1910年に試作されたコアンダ1910が先行していましたが、実際の飛行には失敗しました。そのため、近代的なジェット機の発展の先駆けとして位置付けられるのがこのHe 178です。

開発までの背景

ハインケル He 178の前史として、イギリスのエンジニアであるフランク・ホイットルが1929年に提出したターボジェットエンジンの特許があります。この特許は、機密扱いされることなく広く知られるようになり、各国の航空機技術者たちに影響を与えました。その中でも、ハンス・フォン・オハインが独自にラジアルタービンを用いた別形式のジェットエンジンを開発しました。オハインは、1936年にハインケル社に参加し、正式にHe 178の開発がスタートしました。

オハインの開発は、ホイットルの研究環境よりも恵まれており、1940年に実用型のターボジェットエンジンHeS 3を搭載した試作機の製作が進められました。He 178は、金属モノコック製の胴体に木製の翼を持つ小型機で、機首にはピトー型エアインテークが配置されていました。飛行機の設計には、ジークフリート・ギュンターが関与しています。

初飛行とその後

He 178は、1939年8月27日にドイツのテストパイロットエーリッヒ・ワルシッツによって初飛行を行いました。この飛行は、ホイットルによるグロスター E.28/39の初飛行よりも約1年半も早かったものの、He 178は出力不足であり、最高速度は計画に達しない325ノット（約600 km/h）に留まり、滞空時間もわずか10分に制限されるという課題がありました。加えて、試作機の一つであるHe 178 V2は、推力が不足し離陸すらできない状況でした。

その後、ドイツ航空省が関心を寄せましたが、彼らからの積極的な援助は得られなかったものの、他の技術者たちがジェット機の将来性を見込み、ハインケルにHe 280計画を促す動きがありました。この時、いくつかのターボジェットエンジンが開発され、後にBMW 003やJumo 004として実用化されることになります。

He 178の運命

He 178は、He 176と共にドイツ空軍博物館で展示されていたものの、1943年のベルリン大空襲により焼失してしまいました。試作機という位置付けながらも、その存在は大々的には宣伝されず、多くの国にとっては戦後まで知られることがありませんでした。現存することはありませんが、いくつかのレプリカが初飛行の地であるロストック・ラーゲ空港やスミソニアン航空宇宙博物館に展示されています。

まとめ

ハインケル He 178は、航空機における新たな革命をもたらした重要な機体です。ジェットエンジンの基盤を築いたこの機体は、現代の航空機の発展にも大きく寄与したといえるでしょう。

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