Industry Standard Architecture

ISAバス：PC/AT互換機|PC_AT互換機時代のレガシー規格

Industry Standard Architecture（ISAバス）は、1984年発売のIBM PC/ATに搭載されたバスを起源とする、16ビットのバスアーキテクチャです。正式名称は後付けで、当初は『ATバス』と呼ばれていました。PC/ATと互換機が広く普及したことで、ATバスは事実上の標準規格となりました。

ISAバスの誕生と普及

ISAバスは、8ビットバスであるXTバスの後継として開発されました。80286プロセッサに対応するため、アドレス線、データ線、割り込み線を拡張した構造となっています。しかし、当初は明確な規格が存在せず、IBM PC/ATとその互換機での実装によって規格が暗黙的に定まりました。そのため、設計に一貫性がなく、後述する多くの問題を抱えていました。

1988年、EISA（Extended ISA）規格が制定された際に、初めて『ISAバス』という名称が公式に用いられるようになりました。それ以前は、IBM社内では『ATバス』と呼称されていました。現在でも、EISA陣営とIBMの間では、それぞれの呼称を使い分ける傾向が見られます。

ISAバスの技術的課題

ISAバスは、設計段階での標準化が不足していたため、多くの技術的課題を抱えていました。主な問題点は以下のとおりです。

低速なバススピード: CPUクロックとバスクロックが同期していたため、CPUの性能向上にバススピードが追いつかず、ボトルネックとなっていました。
割り込み数の不足: 利用できる割り込みチャネル数が少なく、周辺機器の接続に制限がありました。
バス調停機能の欠如: 複数のデバイスが同時にバスアクセスを要求した場合、競合が発生し、システムが不安定になる可能性がありました。
非効率的な信号線配列: 配線の設計が非効率的で、ノイズの影響を受けやすく、信頼性が低いという問題がありました。
不十分な信号保護: グランドの設計が貧弱だったため、ノイズの影響を受けやすく、データの破損が発生する可能性がありました。
電力供給の不足: 周辺機器への電力供給が不足し、動作不良を引き起こす可能性がありました。

これらの問題により、ISAバスは汎用バスとしては使い勝手の悪い規格でした。

PC/AT互換機|PC_AT互換機のアーキテクチャとISAバス

初期のPC/XTやPC/ATでは、CPUのローカルバスをバスバッファを経由して直接外部に出力するシンプルな構造でした。そのため、バスクロックはCPUクロックと同じになり、PC/XTでは4.77MHz、PC/ATでは6MHzまたは8MHzでした。

コンパックはDeskpro 386で、IBMに先駆け32ビットCPUである80386を採用しました。この際、バスブリッジを導入することで、CPUクロックと外部バスクロックを分離しました。これにより、高速な32ビットCPUと既存の16ビットATバス周辺機器との互換性を確保しました。コンパックはこのアーキテクチャをFlex Architectureと呼びました。

その後、バスクロックは10MHzが主流となり、様々なPC/AT互換機|PC_AT互換機が登場しました。しかし、外部バスが16ビット・10MHz程度に留まったため、高速なCPUの性能を十分に発揮できないという問題が残りました。このことが、後にMCA（Micro Channel Architecture）とEISA規格の競争へとつながります。

ISAバスの後継規格と衰退

1990年代後半からは、PCI（Peripheral Component Interconnect）バスが普及し始め、ISAバスは徐々に使われなくなりました。しかし、一部の特殊な機器ではISA接続が必要だったため、2004年頃まではISAスロットを搭載したマザーボードが販売されていました。インテルチップセット900番台の普及を機に、ISAスロット非搭載が標準になり、ISAバスは事実上姿を消しました。

現在では、ISAバスはレガシー規格として歴史に名を残すのみとなっていますが、PS/2コネクタ|PS_2コネクタやDMAコントローラなど、ソフトウェアレベルでの互換性は一部維持されています。

関連規格

Extended Industry Standard Architecture (EISA)
Micro Channel Architecture (MCA)
Peripheral Component Interconnect (PCI)
XTバス
VESA ローカルバス
PC/104
コンパクトPCI
Low Pin Count (LPC)

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