JLTV

JLTV（統合軽戦術車両）とは

JLTV（Joint Light Tactical Vehicle, 統合軽戦術車両）は、アメリカ軍（陸軍、海兵隊、特殊作戦軍）で運用されている汎用軍用車両ハンヴィー（HMMWV）の後継を選定するプログラム、および選定された車両そのものを指します。

開発の背景

ハンヴィーは、冷戦時代に開発されたため、近年の戦場で見られるIED（即席爆発装置）や地雷に対する脆弱性が課題でした。イラク戦争やアフガニスタン紛争での教訓から、より高い防御力と生存性を持つ車両が求められるようになり、JLTV計画が開始されました。

また、MRAP（耐地雷装甲車）は防御力が高いものの、重量が重く空輸が困難でした。JLTVには、爆発物への防御力と空輸能力という相反する性能が要求されました。

当初、JLTV計画はハンヴィーの完全な代替を目的としていましたが、現在では、全てのハンヴィーをJLTVに更新する予定はないとされています。

開発計画の経緯

2005年に始まったJLTV計画は、2006年11月に正式に承認されました。2008年2月には基礎技術開発フェイズ（TDフェイズ）が開始され、多くの企業が共同で提案を行いました。

主な提案企業は以下の通りです。

ボーイングとテキストロン
ジェネラル・ダイナミクスとAMゼネラル
BAEシステムズとナビスター・インターナショナル
ノースロップ・グラマン、オシュコシュ、プラサン
ロッキード・マーティンとBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメンツ
ブラックウォーターとレイセオン

2008年10月、ロッキード・マーティン、ジェネラル・ダイナミクス、BAEシステムズの3提案が承認され、次のステップに進みました。

2010年6月、3社は試作車を納品し評価試験が行われました。アメリカ陸軍はJLTV計画への協力の比重を減らしましたが、ハンヴィーの後継および補完機種とする方針は維持されました。

2011年3月にTDフェイズが終了。その後、生産技術開発フェイズ（EMDフェイズ）の開始が遅れました。これは、アメリカ陸軍がM-ATVと同等レベルの車体底部の防御力を要求したためです。

また、積載重量カテゴリーが3段階から2段階に変更されました。

CTV (Combat Tactical Vehicle): 乗員4名、積載重量 1,600kg
CSV (Combat Support Vehicle): 乗員2名、積載重量 2,300kg

2012年1月、EMDフェイズの提案募集要求が開示されました。同年3月には提案が締め切られ、ロッキード・マーティン、ジェネラル・タクティカル・ヴィークルズ、AMゼネラル、BAEシステムズ、ナビスター・インターナショナル、オシュコシュ・コーポレーション、ハードワイヤ・アーマード・システムズ LCCの7社が参加しました。

2012年8月、ロッキード・マーティン、AMゼネラル、オシュコシュの3車種がEMDフェイズに合格し、それぞれ22両の試作車を製造・納品しました。

2013年には、各車両に対し、爆発物耐久力試験や走行試験などの運用評価試験が行われました。

選定車種の決定

2015年8月25日、オシュコシュ・コーポレーションのL-ATVがJLTVとして選定されました。初期量産分として約67.5億ドルの予算で17,000両が導入される予定です。

要求仕様

JLTVには、以下のような要求仕様が含まれています。

車内暖房・冷房システムの性能
エンジン等の異常をモニタリングするシステム
JLTV本体と同等の積載容量のトレーラー牽引能力
ハンヴィーと同等以上の多用途性
M-ATVと同等の対地雷・対爆発物防御能力
未舗装道路での走行性能
パンク時走行能力
作戦行動可能な標高・外気温
空輸能力
追加装甲キットの装着容易性
自動消火システム
破片防護機能付き座席
自己修復機能付き塗装

採用国

アメリカ合衆国
リトアニア
モンテネグロ

この他、オーストラリア、インド、イスラエル、イギリスがJLTV計画に関心を示しています。

JLTVは、アメリカ軍の戦力強化に大きく貢献することが期待されています。

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