JR貨物EF210形電気機関車

EF210形電気機関車

EF210形電気機関車は、日本貨物鉄道（JR貨物）が1996年から製造している直流電気機関車です。老朽化したEF65形電気機関車の後継機として開発され、東海道・山陽本線系統のコンテナ貨物列車輸送を担っています。愛称は公募により「ECO-POWER 桃太郎」と名付けられました。

開発の背景

1990年代、JR貨物ではEF65形電気機関車の老朽化が進んでいました。輸送力増強のため、1時間定格出力6,000kWを誇るEF200形電気機関車が登場しましたが、変電所の電力供給能力の問題から計画通りの1,600t牽引は実現しませんでした。そこで、JR貨物は方針を転換し、EF65形やEF66形の後継機として、1,300tコンテナ貨物列車の牽引を可能とするEF210形を開発しました。

構造

車体

箱型両運転台構造で、外板には耐候性鋼板が使用されています。側面には機器取り出し口があり、屋根は機器の脱着を考慮した分割構造となっています。運転台は高運転台式非貫通型で、前面窓上には短い庇が設けられています。また、予讃線の鳥越トンネルのような狭小トンネルを通過できるよう対策が施されており、四国島内への乗り入れも可能です。

機器類

機械室は1室で、中央部にVVVFインバータと補助電源装置が設置されています。通路はZ字型になっており、側面窓の配置は左右非対称です。初期の試作機では主[[電動機]]冷却風の取り入れ方に特徴がありましたが、量産機では簡略化されました。

制御装置は、GTO素子を用いたVVVFインバータで、1基のインバータで2基のモーターを制御する1C2M方式を採用しました。これにより、コスト削減と効率化を図っています。2000年以降に製造された100番台では、IGBT素子を用いた1C1M方式に変更され、性能が向上しています。

主[[電動機]]は1時間定格出力565kWで、6基搭載されており、機関車全体の出力は3,390kWです。しかし、本形式は30分定格出力を採用し、3,540kWの出力設定となっています。これにより、絶対的な性能はEF200形に劣るものの、東海道本線の勾配区間での運用が可能となり、EF66形との共通運用も実現しました。

補助電源装置には、静止形インバータ（SIV）が採用され、三相交流440Vと直流100Vを出力します。台車は軸梁式ボルスタレス台車で、ヨーダンパが取り付けられています。ブレーキ装置は、保守の省力化のためユニットブレーキが採用されています。

形態区分

試作機（901号機）

1996年3月に製造された試作機です。量産機とは、側面ルーバーの形状や屋根のステップ位置、運転席窓の大きさなどが異なっています。2005年には量産機と同仕様に改造されました。2022年には新塗装とキャラクターラッピングが施され、「ECO-POWER 桃太郎」のロゴも初めて追加されました。

0番台（1-18号機）

1998年7月から11月にかけて製造された量産機です。主[[電動機]]が小型化され、台車軸距も短縮されました。側面には「ECO-POWER 桃太郎」のロゴが描かれています。2019年以降、青地に白帯の新塗装に変更され、一部の車両にはキャラクターラッピングも施されています。

100番台（101-173号機）

2000年3月以降に製造された改良型です。インバータの制御方式が1C1M方式に変更され、性能が向上しました。外観も基本番台とは異なり、大きな「ECO-POWER 桃太郎」のロゴが特徴です。パンタグラフはシングルアーム式が採用されています。新塗装化と同時に、キャラクターラッピングが施された車両も存在します。

300番台（301号機-）

2012年7月より製造が開始された、瀬野八区間での後押し機関車を置き換えるための車両です。高粘度のシリコーン油を内蔵した新型の緩衝器が採用され、車体長も長くなっています。車体色は青地に黄色のライン入りで、他の番台とは異なります。後押し機関車としての役割のほか、本務機としての運用も考慮されています。一部の車両には桃太郎のキャラクターラッピングが施されています。2023年からは吹田貨物ターミナル駅 - 安治川口駅間での後補機連結も開始されました。

運用

EF210形は、東海道・山陽本線を中心に、東北本線、高崎線、中央本線など、広範囲で運用されています。直流電化区間の貨物輸送を担い、日本の物流を支える重要な役割を果たしています。吹田機関区、岡山機関区、新鶴見機関区に所属する車両は、共通運用されています。300番台は、瀬野八区間での後押し運用だけでなく、本務機としても活躍しています。

検査

重要部検査は、0・100番台が岡山機関区または広島車両所で、300番台が吹田機関区で施工されます。全般検査は、全番台とも広島車両所が担当しています。

まとめ

EF210形電気機関車は、JR貨物の主力機関車として、日本の物流を支える重要な存在です。愛称「ECO-POWER 桃太郎」の名で親しまれ、その活躍は今後も続いていくでしょう。

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