K級駆逐艦 (初代)

K級駆逐艦：イギリス海軍の航洋性向上を目指した駆逐艦

K級駆逐艦は、イギリス海軍が1911-12年度計画に基づいて建造した駆逐艦の艦級です。当初はネームシップである「アカスタ」の名を冠してアカスタ級と呼ばれていましたが、後にK級として再分類されました。この艦級は、当時のイギリス海軍が直面していた様々な課題に対応するために、設計段階から大きな変革が試みられた駆逐艦でした。

背景：海軍増強と駆逐艦の大型化の必要性

1908年、アスキス内閣は社会保障の財源確保のために海軍増強計画の見直しを行いました。その影響で、1908-9年度計画のビーグル級（G級）、1909-10年度計画のエイコーン級（H級）、1910-11年度計画のアケロン級（I級）では、艦型の小型化とコスト削減が重視されました。しかし、アスキス首相自身は海軍増強の必要性を認識しており、また1910年の庶民院総選挙では、海軍増強を主張する統一党が支持を集めました。さらに、仮想敵であるドイツ帝国海軍の大型水雷艇の性能向上も考慮する必要がありました。これらの要因から、1911-12年度計画の駆逐艦では、再度大型化による航洋性向上が目指されることになりました。それがこのK級駆逐艦です。

設計：船体の大型化と高速化

船型は、E級以来の船首楼型が採用されましたが、北海全域での行動を可能にするために艦型は拡大され、1905-6年度計画のトライバル級（F級）と同程度の大きさに戻りました。高速化の要請に応えるため、船体は細長く、L/B比が10に近いものとなりました。I級の約2倍の出力を誇る強力な主機が搭載され、ボイラーも1缶増えて4缶となりました。蒸気性状は圧力250 lbf/in2、飽和温度でした。主機関はパーソンズ式直結蒸気タービンが基本ですが、ジョン・ブラウン社の艦ではブラウン・カーチス式直結タービンが採用されました。パーソンズ特型ではセミ・ギヤード・タービンが搭載されましたが、減速機による恩恵は限定的でした。

当初の要求速力は32ノットでしたが、造船所側の要請で29.5ノットに緩和されました。しかし、海上公試では各艦とも30～32ノットを達成しました。艦型の拡大と合わせて、重油搭載量も増大し、航続距離は2,400海里を確保しました。ソーニクロフト特型の「ハーディ」では、航続距離延伸のためにディーゼルエンジンを追加する計画もありましたが、実現しませんでした。

特徴：造船所ごとの多様な設計

アケロン級（I級）と同様に、K級でも各造船所に大幅な設計自由度が与えられ、4タイプ8隻が建造されました。これは、イギリスの民間造船所の技術力を活用し、より多様な艦を建造するための方針でした。この結果、K級は各艦で細部に異なる特徴を持つことになりました。

装備：大口径砲の搭載

初期の水雷艇駆逐艦は、7.6cm砲と5.7cm砲を搭載していましたが、日露戦争の戦訓から5.7cm砲は廃止され、10.2cm砲が導入されました。K級では、10.2cm砲3門が搭載され、従来の12ポンド砲は廃止されました。これは、駆逐艦の大型化と大口径砲の必要性が認識された結果でした。水雷兵装としては、従来の駆逐艦と同様に53.3cm単装魚雷発射管が2基搭載されました。

まとめ：K級駆逐艦の意義

K級駆逐艦は、イギリス海軍の駆逐艦の設計思想が転換期を迎えたことを示す艦級です。小型化とコスト削減から、再び大型化と航洋性向上に舵を切ったことで、より高度な任務を遂行できる駆逐艦が誕生しました。また、各造船所に設計の自由度を与えたことで、多様な艦が建造され、イギリスの造船技術の発展に寄与しました。K級駆逐艦は、その後のイギリス駆逐艦の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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