LGV東ヨーロッパ線

LGV東ヨーロッパ線（LGV Est européenne）

LGV東ヨーロッパ線は、フランスのイル＝ド＝フランス地域圏からグラン・テスト地域圏を結ぶ高速鉄道路線であり、LGV東線とも呼ばれます。パリをはじめとするフランス各地から、フランス東部、ドイツ南部、ルクセンブルク、スイスといった地域へのアクセスを向上させています。

概要

この路線は、パリ東駅から約20km地点で在来線から分岐し、モゼル県で再び在来線に合流する全長300kmの区間です。路線の途中では、LGV東連絡線や複数の在来線と接続しており、各方面への直通運転を可能にしています。2007年6月10日に開業し、フランスで7番目の高速路線となりました。

特徴として、開業当時、磁気浮上式鉄道を除き世界最高の320km/hで運行される点が挙げられます。路線の設計最高速度は350km/hですが、当面は320km/hで運行されています。また、従来のLGVよりも高規格な線形となっており、軌道中心間隔や最急勾配などが改良されています。

フランスの鉄道は上下分離方式を採用しており、列車の運行はSNCF（フランス国鉄）が、路線の保有・整備はRFF（フランス鉄道線路事業公社）が担当しています。LGV東ヨーロッパ線には、フランスのLGVとして初めてドイツ鉄道 (DB) のICEが乗り入れており、保安装置としてTVMとETCSが併用されています。

路線の特徴として、フランスの高速新線は全て複線で左側通行ですが、ボードルクールで接続する在来線は右側通行である点があげられます。

運行形態

LGV東ヨーロッパ線を経由する列車の始発駅はパリ東駅です。LGV東連絡線や在来線を経由して、リール、レンヌ、ナント、ボルドーといった都市からの直通列車も運行されています。

東方面へは、ストラスブールを終点とする列車のほか、ドイツのカールスルーエ、シュトゥットガルト、ミュンヘン方面、ザールブリュッケン、マンハイム、フランクフルト方面への系統があります。その他、メス経由でルクセンブルク、ナンシー周辺の都市、ランス経由でセダンへ向かう系統など、多様な運行形態があります。

運行される列車は原則としてTGVですが、ドイツへ乗り入れる列車はAlleoとして運行され、フランクフルト方面へはICEも使用されます。

開業時点でのパリから主要都市への所要時間と運行本数は以下の通りでした。

ストラスブール：2時間20分（16往復）
メス：1時間25分（10往復）
ナンシー：1時間30分（10往復）
ランス：45分（8往復）
ミュルーズ：3時間（6往復）
フランクフルト：3時間50分（5往復）
シュトゥットガルト：3時間40分（4往復）
チューリッヒ：4時間35分（3往復）
ルクセンブルク：2時間05分（5往復）

車両

東ヨーロッパ線の開業に合わせて、新形式のTGV POS編成が投入されました。POSとは、Paris（パリ） - Ostfrankreich（東フランス） - Süddeutschland（南ドイツ）の頭文字を取ったもので、最高速度は320km/hです。従来のTGV編成と同様に動力集中方式の固定編成で、内装はクリスチャン・ラクロワのデザインにより一新されています。

その他、従来のTGV Réseau編成も使用され、内装はPOS編成と同様にラクロワデザインに改修されています。フランクフルト方面の列車には、ドイツ鉄道のICE 3が使用されています。

駅

LGV上には以下の3駅があります。

シャンパーニュ-アルデンヌ - TGV駅
ムーズ - TGV駅
ロレーヌ - TGV駅

乗り入れ先の在来線では、TGVは在来線の駅を使用します。主要駅ではTGVの運行開始に合わせて大規模な改装工事が実施されました。

歴史

LGV東ヨーロッパ線の計画は1985年に始まり、1992年には高速鉄道整備計画に組み込まれました。建設は2期に分けて行われ、1期区間はヴェール＝シュル＝マルヌからボードルクールまで、2期区間はボードルクールからストラスブールの西のVendenheimまでとなりました。

速度試験

正式開業に先立ち、LGV東ヨーロッパ線を利用してTGVの速度試験が行われました。2007年4月3日には、鉄車輪・鉄軌道方式の鉄道として当時の世界最高速度となる574.8km/hを記録しました。

開業

東ヨーロッパ線は2007年6月10日に営業運転を開始しました。開業後、TGVの利用者はフランス国鉄の予想を上回り、エールフランスのパリ - ストラスブール便は大幅に減便されました。

年表

2007年6月10日：開業
2016年7月3日：ストラスブールまで延伸し、全線開通

2期区間の開業により、パリ - ストラスブール間の所要時間は従来の2時間20分から1時間50分に短縮されました。

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