LHS 475

LHS 475 とその惑星系

恒星 LHS 475

LHS 475は、太陽系から見てはちぶんぎ座の方向に位置する恒星であり、その距離は約40.7光年（およそ12.5パーセク）です。この恒星は赤色矮星に分類され、太陽に比べて質量や半径が小さく、表面温度も低いという特徴を持っています。赤色矮星は宇宙に存在する恒星の中で最も数が多いタイプであり、その長い寿命から惑星が生命を育む可能性について研究対象となることもあります。LHS 475自身は、少なくとも一つの太陽系外惑星を持つことが確認されています。

太陽系外惑星 LHS 475 b の発見

LHS 475が持つ太陽系外惑星は、LHS 475 bと名付けられています。この惑星の存在は、最初にトランジット法を用いた観測データから示唆されました。トランジット法とは、惑星が恒星の手前を通過する際に、恒星の光がわずかに弱まる現象を捉えることで惑星を検出する方法です。この初期データは、TESS（トランジット系外惑星探索衛星）による観測によって得られました。

その後、LHS 475 bの存在を確定させ、さらに詳しい性質を調べるために、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）が用いられました。特に、JWSTに搭載されているNIRSpec（近赤外線分光器）という機器を使用した観測が行われました。この観測には、惑星が恒星の手前を通過する際の透過スペクトルを分析する手法が含まれています。透過スペクトルを調べることで、惑星の大気の組成に関する情報が得られる可能性があります。これらのJWSTによる詳細な観測結果は、2023年1月に公表され、LHS 475 bが実在する惑星であることが確認されました。

LHS 475 b の物理的特徴

LHS 475 bは、そのサイズにおいて地球に非常に近い惑星です。観測データによれば、その直径は地球の約99%、つまりほぼ地球サイズであることが分かっています。これは、地球型惑星の探索という観点から非常に興味深い特徴です。

しかし、その温度は地球とは大きく異なります。LHS 475 bの平衡温度は586ケルビン（摂氏約313度、華氏約595度）と推定されており、これは非常に高温です。もしこの惑星に大気がほとんど、あるいは全く存在しないと仮定した場合、主星からの強い放射を直接受ける昼側の面の温度はさらに高くなり、摂氏475度（748ケルビン、華氏約887度）に達すると予測されています。

LHS 475 bは、主星である赤色矮星LHS 475の非常に近くを公転しています。その公転周期はわずか約2日と極めて短いです。これほど主星に近い軌道を持つ惑星は、多くの場合、自転と公転が同期している、いわゆる「潮汐固定」の状態にある可能性が高いと考えられています。潮汐固定された惑星は、常に同じ面を主星に向けているため、昼側は常に高温に晒され、夜側は比較的低温になるといった極端な環境になる可能性があります。

大気の探査とその示唆

JWSTによる透過スペクトル観測は、LHS 475 bの大気を探査する目的で行われました。観測によって得られたスペクトルは、全体として特徴がほとんど見られないものでした。このような特徴のないスペクトルは、大気がほとんど、あるいは全く存在しない惑星から得られるスペクトルと整合性があります。つまり、LHS 475 bは薄い大気しか持たないか、完全に大気を持たない可能性が考えられます。

一方で、観測されたスペクトルは、完全に大気がないというシナリオだけでなく、二酸化炭素を主成分とするような特定タイプの厚い大気が存在する場合のスペクトルとも一致する可能性が示唆されています。しかし、メタンを主成分とするような別のタイプの大気組成については、今回のスペクトル観測によって可能性が除外されました。

現時点では、LHS 475 bに大気が存在するのか、存在するとしてどのような組成なのかを断定するには至っていません。しかし、地球サイズの太陽系外惑星の大気をJWSTのような高性能な望遠鏡で探査できること自体が、系外惑星研究における大きな進歩を示しています。

今後の展望

LHS 475 bは、地球に近いサイズでありながら極めて高温という特異な環境を持つ惑星です。その大気の有無や組成に関する情報は、地球型惑星の進化や多様性を理解する上で非常に重要です。今後のさらなる観測や理論研究によって、この興味深い惑星の謎がさらに解き明かされることが期待されています。

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