LHS 475 b

LHS 475 b

LHS 475 bは、私たちの太陽系からおよそ41光年離れた場所にある太陽系外惑星です。この惑星は、はちぶんぎ座の方向に位置する赤色矮星「LHS 475」の周りを公転しています。

どのように発見されたのか

LHS 475 bは、惑星が主星の手前を通り過ぎる際に起こる、主星の明るさの一時的な減少（トランジット）を観測することで見つけ出す「トランジット法」によって発見されました。

この惑星の発見のきっかけは、2018年に打ち上げられた太陽系外惑星探査衛星TESSによる観測です。TESSは、惑星の通過を示唆する可能性のある周期的な減光信号を捉えました。これにより、主星LHS 475は、TESSが周囲に惑星候補が存在する可能性のある恒星をリストアップした「TESS object of interest (TOI)」というカタログに登録され、TOI-910という名称が与えられました。そして、この減光信号の源である惑星候補にはTOI-910.01という名称が付けられ、さらに詳細な追加観測の対象となりました。

次に、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者を中心とするチームが、2021年末に打ち上げられた革新的な宇宙望遠鏡、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡（JWST）で観測すべきTOIの中から、このTOI-910.01を選定しました。彼らはJWSTに搭載されている近赤外線分光器（NIRSpec）を用いて観測を実施。2022年8月31日と9月4日に行われた合計2回の観測で得られたわずかな減光データから、これが間違いなく惑星の通過によるものであると明確に確認されました。こうして、この天体はLHS 475 bと正式に命名されたのです。

この発見は、JWST単独の観測によって新たな太陽系外惑星の存在が確認された初めての事例であり、その成果は2023年1月11日にシアトルで開催されたアメリカ天文学会の記者会見で世界に公開されました。この出来事は、今後JWSTがどのようにして居住可能な可能性を持つ惑星を探し出し、その大気の成分を調べるために活用されていくのかを示すものとして広く報じられています。

LHS 475 bの特徴

LHS 475 bは、私たちの地球と同じように主に岩石からできている「地球型惑星」であると考えられています。その大きさは、半径が約6,319キロメートルと測定されており、これは地球の半径（約6,378キロメートル）とほとんど変わりません。

質量については、直接的な測定はまだ行われていません。しかし、他の赤色矮星の周りを回る地球型惑星が持つ組成を仮定すると、その質量は地球の約9割強と推定されています。さらに、2017年に公開された質量と半径の確率的な関係性を示す数値モデル「Forcaster」に基づいた予測ツールでは、LHS 475 bの質量は地球の0.980倍に、それぞれ上方に0.632倍、下方に0.359倍の誤差範囲を伴う値であると示されています。

主星LHS 475から非常に近い軌道を回っており、公転周期はわずか2日余りと極めて短いです。しかし、主星が太陽に比べてずっと暗い赤色矮星であるため、惑星表面の反射能をゼロとし、表面全体に熱が均等に分布していると仮定した場合の推定される平衡温度は、摂氏313度（586ケルビン）に留まっています。一方、主星との距離が近いため、LHS 475 bは強い潮汐力の影響を受けていると考えられています。この影響により、おそらく月の地球に対するように、常に同じ面を主星に向けて回る「潮汐固定」の状態にあると推測されます。もしそうだとすれば、永遠に主星に照らされ続ける昼側の面では、表面温度が摂氏475度（748ケルビン）に達している可能性があり、これは金星の表面温度に近い高温です。

主星に近い軌道にもかかわらず、LHS 475 bには恒星風による影響を乗り越えて、いまだに大気が残っている可能性も指摘されています。JWSTによる透過スペクトル観測では、大気の組成やそもそも大気が存在するのかどうかを結論づけるには至りませんでした。しかし、少なくとも土星の衛星タイタンのような、メタンを豊富に含む非常に厚い大気ではないだろうと考えられています。研究チームは、2023年の夏にもスペクトルの追加観測を行い、大気の有無やその性質についてさらに詳しく調べる予定だと述べています。

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