M-1 ヴォルナ

M-1 ヴォルナ（SA-N-1 ゴア）

M-1 ヴォルナは、ソビエト連邦が開発した艦隊防空ミサイルシステムであり、NATOコードネームはSA-N-1 ゴアです。ヴォルナとはロシア語で「波」を意味します。

開発の背景

1950年代、ソ連海軍は、西側諸国の洋上兵力、特に航空兵力による脅威に対抗する必要に迫られていました。そこで、経空脅威に対処するための艦対空ミサイルシステムの開発が急務となりました。

当初、ソ連海軍は陸軍向けのミサイルを艦載化していましたが、より小型で多くの艦艇に搭載可能なシステムが求められるようになりました。そのような要求に応える形で、中距離射程の艦対空ミサイルシステムとして開発されたのが、このM-1 ヴォルナです。

構成

M-1 ヴォルナは、ソ連海軍が初めて独自に開発した艦対空ミサイルシステムです。初期のシステムは、以下の要素で構成されていました。

ZIF-101型ミサイル発射装置: 連装型の発射機で、動揺修正装置を備えています。ドラム型弾倉には16発のミサイルを収容可能で、後に32発を収容できる改良型のZIF-102も開発されました。
ESP-101型射撃指揮装置: 目標の捕捉、追跡、ミサイル誘導を行います。
V-600型ミサイル (4K90): S-125（SA-3 ゴア）で使用されていたミサイルと基本的に同一のモデルです。二段式ロケットを使用し、最大射程は15km、最大射高は10,000mでした。

1970年代には、ECCM（電子対抗手段）能力を強化したヴォルナ-Pシステムが登場しました。また、射程延伸型のV-601型ミサイル（4K91）も開発され、最大射程は22km、最大射高は14,000mに向上しました。さらに、シースキマー対策として、最低射高を低くしたV-601Mも開発されました。

運用

M-1 ヴォルナは、当初カシン型駆逐艦（61型）や63型原子力巡洋艦向けに開発されました。しかし、計画変更により、最終的にはカシン型に搭載されることになりました。

開発が順調に進んだ結果、搭載艦の完成に先駆けてシステムが完成したため、コトリン型駆逐艦（56型）「ブラヴィ」を改修して運用試験が行われました。試験の結果、システムの有効性が実証され、1962年に正式に就役、量産が開始されました。

事故

1974年8月30日、カシン型駆逐艦「オトヴァズニイ」において、ミサイル発射準備中に誤って推進ロケットが点火し、誘爆が発生、同艦が沈没する事故が発生しました。原因は、レーダーの誘導電流によるミサイルの誤動作である可能性が指摘されています。

搭載艦

ソビエト連邦海軍 / ロシア海軍
61型大型対潜艦（カシン型駆逐艦）
58型ミサイル巡洋艦（キンダ型巡洋艦）
1134型ミサイル巡洋艦（クレスタI型巡洋艦）
56A/K型駆逐艦（ブラーヴイ級駆逐艦）
57A型大型対潜艦（カニン型駆逐艦）
ポーランド海軍
「ワルシャワ」（56-AE型）
「ワルシャワ」（61-MP型）
インド海軍
ラージプート級駆逐艦（61-ME型）

参考文献

アンドレイ・V・ポルトフ「ソ連/ロシア巡洋艦建造史 第9回」『世界の艦船』第699集、海人社、2008年12月、156-161頁。
アンドレイ・V・ポルトフ、『ソ連/ロシア巡洋艦建造史』、世界の艦船 増刊第94集、2010年、海人社

関連項目

ターター・システム - アメリカの同世代の中距離艦対空ミサイル・システム。
3K90 ウラガーン - 本システムの後継となる中距離艦対空ミサイル・システム。

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