コトリン型駆逐艦

コトリン型駆逐艦は、ソ連海軍の56型駆逐艦に対してNATOが用いたコードネームです。ソ連海軍では「56型駆逐艦」またはネームシップである「スポコーイヌイ」から「スポコーイヌイ級駆逐艦」とも呼ばれていました。コトリンという名称は、ロシアのコトリン島に由来しています。

来歴

56型駆逐艦は、当初「改41型」として1951年夏に計画が始まりました。ソ連政府の政令により、計画は「41型のスペック変更型」と規定されました。これは、ヨシフ・スターリンが戦後初の駆逐艦である41型の過大な排水量に不満を感じ、小型化を求めたためとされています。41型は事実上の失敗作と見なされ、1番艦の「ネウストラシムイ」1隻が建造されたのみに終わりました。56型は41型に反対する勢力が設計を進めましたが、詳細は不明です。おそらく「ネウストラシムイ」の建造開始時期と同時期に、56型の設計も開始されたと考えられています。つまり、41型の是非が問われる以前に、その発展型開発が始まっていたことになります。

56型の計画目的は明確ではありませんが、少なくとも発注側（ソ連海軍）ではなく、産業側の要求で計画が進められたと考えられています。計画が進むにつれて、設計担当者も41型の主要監督官に代わりました。開発要求では、41型と比較して排水量を3770トンから3150トンに、速力を36ノットから39ノットに、航続距離を5500海里から4000海里に、行動期間を20日間から10日間にそれぞれ変更し、主要兵装は4基の45mm連装自動砲SM-16から4基の45mm連装自動砲SM-20-ZiFへと変更されました。計画では、当初予定されていた41型駆逐艦110隻の建造計画に対して、同型艦100隻の建造が予定されました。しかし、41型の排水量を抑え、速力と航続距離を増すという修正の結果、「発展型」の性能は本質的に低下しました。その後、計画は見直され、速力と航続距離はそこまで重視しなくても良いこととなりましたが、1954年の政令では、3230トンの排水量と38.5ノットの速力が要求されました。

設計

前計画から基本的な変更要素は存在しませんでした。最大の変更点は構造上のものでした。船体形状は、要求された排水量における装備品と機関配置に最適化され、優れた航洋性を実現しましたが、航続距離には課題が残りました。荒天対策として、隔室の防水設備の改良が行われました。上部甲板には増築された上部構造が設置され、軽量化と経済性向上のため、すべてアルミニウム製とされました。しかし、この構造は変形しやすく、振動も大きかったため、1番艦の建造中に3度の修理が行われ、最終的には完全な鋼鉄製に改められました。コトリン型駆逐艦は、破片から艦を防御するための装甲を有しており、司令塔、艦橋周辺、魚雷発射管防御壁、機関室覆い、砲弾起重機には10mm、主砲砲には20-40mmの装甲が施されました。

エンジン出力は、41型の66,000馬力から72,000馬力に強化されましたが、エネルギー転換効率は79％から74％に低下しました。1番艦「スポコーイヌイ」の海上公試では、41型とほぼ同じ不十分な速力であることが判明しました。41型より400トン少ない排水量と10,000馬力も大きな出力を持つ機関を搭載したにも関わらず、「スポコーイヌイ」が達成できたのは「ネウストラシムイ」より1ノット早いだけの速力でした。特別審理が行われ、主任技師が責任を問われました。その結果、56型でも41型と同じ艦尾・スクリュー・操舵装置の「正しくない」設計であることが判明し、「スポコーイヌイ」は艦尾を新しい設計に変更する必要に迫られました。この変更は迅速かつ効果的に行われ、56型の速力は39ノット近くに達するようになりました。特に「ナストーイチヴイ」は、1957年の海上公試で41ノット以上の速力を発揮しましたが、その後の改修によりすぐに失われました。また、最大稼働時に機関の冷却水が非常に高温に達するという問題もありました。結局、56型駆逐艦は要求された航続距離を達成することができませんでした。しかし、燃費は当時の標準的な駆逐艦である30-bis型（スコーリイ級）の1.8倍に改善されました。それでも、試験における審査員の総合的な評価は30-bis型に及ばず、特に巡航速度が劣ると指摘されました。

配備

コトリン型駆逐艦の海軍への登録は1952年に始まり、1955年には5隻が就役しました。最初の「スポコーイヌイ」は1956年 6月27日に竣工し、赤旗受賞バルト艦隊に配備され、同年10月から11月に追加試験を受けました。最終的に、コトリン型駆逐艦はソ連国内の3つの造船所で27隻が建造されました。

建造されたコトリン型駆逐艦は、すべてソ連海軍で運用され、一部がロシア海軍に継承されました。「スプラヴェドリーヴイ」はポーランドに引き渡され、「ワルシャワ」としてポーランド海軍で運用されました。

中華人民共和国では、タリン型を元に、コトリン型を参考にした旅大型駆逐艦が開発・建造されました。

サブタイプ

56型 (スポコーイヌイ級)：1953年に開始された基本型。
56-PLO型 (スポコーイヌイ級)：コトリンModに相当する、1960年に開始された近代化改修型。対潜兵器を拡充。11隻が改修。
56-K型 (ブラーヴイ級)：SAMコトリンに相当する、1956年に開始された防空駆逐艦型。艦対空ミサイルM-1「ヴォルナー」を搭載。56型として起工された「ブラーヴイ」が建造中に設計を変更。
56-A型 (ブラーヴイ級)：1964年に開始された近代化改修型。56-K型に準じたもので、8隻が改修。
56-EM型 (ベドーヴイ級)：NATOコードネームはキルディン型。1958年に開始された大型ミサイル艦（BRK）計画。艦対艦ミサイルKSShchを搭載。56型として起工されたベドーヴイが建造中に設計を変更。
56-M型 (ベドーヴイ級)：56-EM型の量産型。完成されなかった56型駆逐艦の船体を利用した大型ミサイル艦。4隻の建造が予定されたが、4隻目は建造中止。
56-U型 (ベドーヴイ級)：1978年に開始された近代化改修型。艦対艦ミサイルP-15M「テルミート」、新しい主砲となるAK-726、新しい電子戦対抗装備を搭載。
051型 (西安級)：中華人民共和国における発展型。ソ連の41型を元に、56型を参考にして開発。

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