M-11 シュトルム

M-11 シュトルム

M-11 シュトルム（ロシア語: М-11 «Шторм»、英: M-11 Shtorm）は、ソビエト連邦が開発した艦隊防空ミサイル・システムです。GRAUインデックスでは、原型は4K60、射程延伸した改良型は4K65とされました。また西側諸国においては、NATOコードネームは「ゴブレット」（Goblet）と呼ばれていました。アメリカ国防総省（DoD）識別番号としては4K60はSA-N-3A、4K65はSA-N-3Bと区別されました。「シュトルム」とはロシア語で「突風」を意味します。

開発の経緯

1950年代、ソ連海軍は、西側諸国の海洋戦力による沿岸部への侵入を阻止することを主要な任務としていました。しかし、アメリカ海軍の潜水艦発射弾道ミサイルの性能向上に伴い、これらの潜水艦をより遠方で迎撃する必要性が高まりました。

このため、ソ連海軍は原子力推進の対潜艦と防空艦をセットで運用するというコンセプトを打ち出しました。この構想に基づき、複数の原子力防空艦の計画が検討され、その一つが1959年から第17設計局によって開発が進められていた1126型原子力巡洋艦でした。

1126型原子力巡洋艦は、満載排水量10,000トンであり、長射程と中射程の艦対空ミサイルを搭載する予定でした。長射程ミサイルとしては、陸軍向けの2K11 クルーグを艦載化したM-31が計画されていましたが、中射程ミサイルとして開発されたのが、本システムM-11 シュトルムです。

1959年7月、新しい中距離艦対空ミサイル・システムはM-11と命名され、第10研究所によって開発が開始されました。しかし、1961年6月に1126型の計画が中止されたため、M-11の開発も一時中断されました。しかし翌月、1123型対潜巡洋艦向けとして開発が再開されることになりました。1962年4月には設計がほぼ完了し、大幅な性能向上が達成されたことから、従来のM-1 ヴォルナとは全く異なる新しいシステムとして完成することになりました。

M-11は「ヴォロシーロフ」での試験を経て、1123型対潜巡洋艦（モスクワ級）に搭載され、1967年から運用が開始されました。

長射程艦対空ミサイル・システムとして構想されたM-31は、1126型の計画中止とともに開発が中止されたため、M-11はこの世代のソ連海軍において唯一の艦隊防空ミサイルとなりました。前世代の長射程艦対空ミサイルとして計画されていたS-75M-2 ヴォールホフM（SA-N-2）も開発中止されており、ソ連海軍が長射程艦対空ミサイル・システムを入手するには、S-300F フォールトの就役を待つ必要がありました。

システムの構成

シュトルム・システムは、連装のB-187A型発射機とV-611型ミサイル、そして目標捕捉・追尾レーダーとミサイル誘導レーダーを組み合わせた4R60型グロム射撃指揮装置によって構成されています。

B-187A型発射機は、ミサイル6発を収容したドラム型弾倉を4つ備えており、50秒で次弾の装填が可能です。シー・ステート5の海象状況下でもミサイルの運用が可能とされています。また、1143型重航空巡洋艦（キエフ級）には、ミサイル収容数を36発に増加させた発射機が搭載されました。

ミサイルは、原型である4K60 シュトルムではV-611型、改良型の4K65 シュトルム-MではV-611M型が使用されています。これらは固体ロケット・モーター1段式であり、最大射程はV-611型で30 km、V-611M型で55 kmとなっています。

搭載艦

1134A型大型対潜艦（クレスタII型巡洋艦）
1134B型大型対潜艦（カーラ型巡洋艦）
1123型対潜巡洋艦（モスクワ級ヘリコプター巡洋艦）
1143型重航空巡洋艦（キエフ級航空母艦）

もう一度検索